長万部から帯広までは350㎞程ですから、15時頃には到着する筈です。
交通量の少ない、ストレスのない道を、鼻歌交じりに走り続けました。
千歳で高速道路を降り、空港近くの安価なガソリンスタンドで給油し、千歳東ICから道東自動車道に入りました。
30年程前に北海道で暮らしていた頃、道東道は未完成でしたから、高速道路だけを走って帯広まで行くのは今回が初めてです。
トマム辺りを過ぎると、峰々に牧草地が広がりました。
昔は十勝地方に入るときは日勝峠を越えましたが、渓谷沿いの見通しの悪い国道を、ひっきりなしに大型車が走り、充分な緊張感を強いられたものです。
それに引き換えて今は、ハンドルに手を添えるドライブで、日高山脈北端の稜線を超えて行きます。
運転中なので、道路左手の牧草地は撮影できませんが、トンネルを抜けると、見覚えのある山容と風景が車窓に広がりました。
15時前に帯広に到着したと思います。
私は帯広で最初にNさんのお宅に伺いました。
9年前に自転車で北海道を縦断したとき、台風の雨風を凌いで広尾から帯広へ走り、一晩泊めて頂いたことがあります。
Nさんとは学生時代からのお付き合いで、半世紀以上もご厚誼を頂いており、帯広へ来たら、ご挨拶に伺わない訳にはいきません。
前触れなく突然、玄関のチャイムを押すと、Nさんは私の顔をみるなり、
「あら! あんた、今日は自転車じゃないのね」と言われました。
今日は来客予定とのことで、ご挨拶を40分程で済ませ、次に、昔お世話になった、大病院の院長をなさったK先生のお宅に伺いました。
本来であれば、最初に電話でご都合をお聞きするのが礼儀ですが、先に記した通り、電話番号のメモを忘れてきたので、K先生のマンションのエントランスに立つと、唐突にインターホンを押して、「突然ですみません、芦川ですが」と名乗りました。
先生は満面の笑顔でエントランスへ降りてきて下さり、ご自宅で1時間程会話を弾ませた後、「食事に行きましょう」とのお誘いを頂きました。
帯広に来ると必ずご馳走になるのですが、遠慮すると「恥をかかせないでよ」と仰いますので、その後は素直に甘えさせて頂いております。
楽しい時間を過ごさせて頂きました。
最初に入った割烹料理屋が満席で、次は適当に屋台風の店に入り、私は遠慮なしにジョッキを3~4杯程も空け、先生は気さくな雰囲気を十分に楽しんで頂けただろうと思います。
「花の旅」の全て 「花の旅」 総合目次
筆者のホームページ 「PAPYRUS」