7月3日の朝、私は帯広から南下し、太平洋沿いに広がる晩成(ばんせい)原生花園を目指しました。
全てナビ任せなので、何処をどう走ったかは全く分かりません。
何処を走っても同じような景色が続きました。
8時半頃に、海を望む晩成原生花園に到着しました。
私は50年程前、帯広で学生生活を過ごしましたが、サークル活動の仲間が、この辺りの植物相が面白いと語っていました。
一度は訪ねたいと思いましたが、交通の便が極めて悪く、車がないとテントを背負って、歩いて巡るしかありません。
そのころ私は、日高や大雪の山に意識が向いていましたので、十勝平野が海に接するこの辺りを訪ねる機会はとうとう得られませんでした。
と言うことで今日は、半世紀ぶりの願いが叶います。
って、ちょっと大げさですね。
海岸線に沿って、同じ高さのミズナラが茂みを連ねていました。
稚内の海岸線同様、冬はブリザード吹きすさぶ景色が広がる筈です。
道路脇にエゾフウロが咲いていました。
その横に見知らぬ花を見かけたので、帰宅して調べるとフランスギクのようです。
海岸に沿う舗装道路の右手にホロカヤントウ沼の湖水が広がります。
ホロカヤントウ沼は汽水湖で、常に海水が入り込み、ワカサギ釣りの名所として知られます。
晩成温泉がポツンと一軒家の風情で佇んでいました。
しかし、期待していたエゾカンゾウの姿はなく、悠久の時を思わせる湖面が茫々と広がるばかりでした。
晩成を出発し、国道336号を北東に走り、次に長節湖(ちょうぶしこ)を目指しました。
湖に到着し、「天然記念物 長節湖畔野生植物群落」の標識を目にしました。
ハマナスが湖畔に咲き揃い、
ヒオウギアヤメとマルバトウキかと思う花を見かけました。
波打ち際へ歩むと、都会では決して味わえない、人の気配を感じさせない海が単調なリズムで波を寄せていました。
こんな景色に心安らぐのは、70数年に亘って晒され続けた人々の軋轢から、解き放たれるからなのでしょうか。
今回の訪問で、ホロカヤントウや長節湖で期待した、エゾカンゾウ等が草原を染める景色には出会えませんでした。
しかし私は、北海道でしか味わえない風の香に包まれた満足感を胸に、あの日あの時と同じ景色の中に続く、昆布刈石の海岸道路を、水平線の彼方へ向かって走り始めました。
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