遊歩道の脇で、ヒオウギアヤメが花弁に綾目模様を見せていました。
その横でマルバダケブキが黄色い花を輝かせていました。
馬は毒を含むマルバダケブキを食べません。
ヒオウギアヤメも根茎に毒を持つので馬は食べないそうです。
あやめヶ原は放牧馬が作り出した花園なのです。
ハマナスが、ローズピンクの花を咲き重ねていました。
ハマナスに一度でも触れれば分かりますが、鋭い刺が枝を覆うので、馬は見向きもしません。
ブリザードが吹きすさぶ厳冬を耐え、短い夏を謳歌できるのは、生き残る術を備えたモノ達だけなのです。
あやめヶ原に別れを告げて、琵琶瀬展望台にやってきました。
標高100mの台地の下に霧多布湿原が見えます。
展望台から先へ進むと、道道123号は台地を下り、湿原の横を走り始めました。
暫く走ると、道路脇にパーキングを見つけたので、車を停めて標示された案内図を確認しました。
どうやらここに、湿原観察用の木道が設置されているようです。
遊歩道入口のインフォメーションセンターに、湿原を彩るエゾカンゾウやワタスゲの写真が掲げられていました。
私もこんな風景が見たくて訪ね来たのです。
遊歩道を進んで木道を目指すとすぐに、エゾカンゾウやノハナショウブの花を目にしました。
しかし人生はいつも、願い通りにはいかないものです。
入口付近で数本のエゾカンゾウやノハナショウブを目にしただけで、木道から湿原を見渡すと、草の緑と黄褐色のイネ科が広がるばかりでした。
霧多布湿原も、エゾカンゾウが湿原を染める季節は過ぎ去ったようです。
今回もダメかと、少々落胆しましたが、花を訪ねる旅では良くあることです。
直ぐに気を取り直し、何が咲いているかと、今なればこその観察を始めました。
花の季節を外して観察に来る人は極めてまれです。
何か新しい発見があるかもしれません。
(発想が前向きでしょ、しかし、負け惜しみだよね、とも言われます)
ノリウツギが葉の間に蕾を蓄えていました。
ノリウツギは別名をサビタと言い、ガクアジサイ同様に本来の花の周囲を装飾花が飾ります。
装飾花は冬になるとドライフラワーとなって枝に残ります(右下写真)。
そして、こんなお話があります。
昔アイヌの若者が美しい娘に恋をしました、若者は娘に恋心を伝えますが、娘は「サビタの花が散る日がきたら」と答えました。
この物語の結末は、若かりし頃の私の思い出に重なりますので、最後まで書く気にはなりません。
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