岬の先へ歩を進めました。
地球の孤を微かに感じさせる水平線が青い空と海を隔て、散策路は北国の花に包まれていました。
岬の先端に立つと、微かに白穂が揺れる海風の中、親潮流れる蒼いキャンパスに幾つかの岩礁が描かれていました。
海の香を存分に胸に満たし、元来た道を戻りました。
恋する灯台の尾根に駆け上る草の斜面が、エゾカンゾウに染まります。
岬を訪ね来た人達が、花に染まる桃源郷で、至福の時に溶け込んでいました。
散策路を戻る途中、西の斜面もエゾカンゾウで覆われていることに気づきました。
斜面の先に、海を隔てて、あやめヶ原へと続く台地が横たわります。
あの台地に沈む夕日に照らされた、エゾカンゾウの鮮やかな光景が脳裏に浮かびました。 やっぱり此処は、恋する灯台に相応しい場所のようです。
霧多布岬を出発して、浜中湾に沿う道道142号を東へ走りました。
頭の中に凡その地図があるので、ナビに目的地を入れずに、走り続けました。
私は学生時代を含め、北海道で20年程の歳月を過ごしました。
北海道で知らない街はないと言い切れるほど、仕事や趣味で北海道のほぼすべてを走り回りました。
しかし今走る場所の景色は初めてです。
根室も3~4回は訪ねましたが、いつも国道44号かJRを利用してきました。
霧多布岬を経由する道道142号を走るのは今回が全く初めてなのです。
国道142号は、根室から別当賀駅辺りまで走ったことがありますので、別当賀駅を目標に車を走らせました。
そして去年の夏、花咲線の普通列車から眺めた、国道142号の景色の中に身を置けたことの達成感に浸りました。
ん~ 我ながら、ほとんど意味はないかな、と思います。
でもいいんです、それが人生の贅沢と言うものです。
そんな贅沢が人生を豊かにしてくれるのです。
さて、別当賀駅の脇の踏切で時刻を確認すると16時半を過ぎていました。
今日はもう、根室まで足を伸ばすのは無理です。
路傍に車を停め、ナビに野付半島ネイチャーセンターを入力しました。
野付半島も数少ない未訪問先で、根室湾の海岸線を北上する、国道244号も走ったことがありません。
そして私は、国道244号から野付半島へ伸びる道道950号分岐点付近のコンビニで、夕飯と晩酌、明日の朝食を購入し、野付半島へ車を進めました。
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