Men's wear      plat du jour

今日の気分と予定に、何を合わせますか。 時間があれば何か聴きましょう。

価値ある一着

2011-10-14 | Others
 十年くらい前、相手の都合もかえりみず、毎月のように仕立屋さんにお邪魔していた時期がありました。
良い生地が徐々にかたちを成して、一着の服になるプロセスは、何度見ても見飽きません。
 
ですから仮縫いなんかも、もしかすると自分のより、ひとのを見ていた方が楽しいような気さえします。というのも自分の場合は鏡の中だけで、少し離れて自分で見ることが出来ないからです。



ある日、また別の仕立屋さんと話していた時のことです。

その仕立屋さんは「折角作ってもらう」なら.....
一過性でなく愛着をもって着てもらえるような服、そして出来れば着る人を多少なりとも引き立てるような男性的な服を作りたいと願っているであろう人です。

ところが同じ言葉で始まっても往々にして、
折角作ってもらう」のに.....なんでそんな普通のを作らなきゃならないの?的な感懐をお持ちの方が中にはいらっしゃるようです。

結果、食べ物におけるトッピングテンコ盛り、あるいは食べ放題の取り皿みたいな状態を呈するのでしょう。
服好きの人なら選ばないような生地、スタイルにそぐわないディテイル、闇雲な自信に裏打ちされているので聞く耳持たず、どう見たところでコンプレックスと顕示欲の投影かというものが具現化されてしまいます。

自分の趣味がまだ十分そだっていないと感じる方で、趣味の良い仕立屋さんに出会ったなら、虚心に耳を傾けるのも悪くないと思います。プライス以上に価値のあることだからです。




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