「小さい顔はお洒落な女の第一条件」、今や小顔は若い女性を中心に一大ブ
ームとなっている。顔に対する美意識は、時代や社会のありようによって異な
ってきている。
平安時代には、ふっくらとした顔立ちが好まれた。現代は、
① 戦中戦後から1950年代にかけては、女優原節子のような目鼻立ちのは
っきりしたタイプが好まれたが、
② 70年代になるとかわいらしさを特徴としたTVアイドルタイプに変わっ
た。
③ 最近では、「表情豊かで先端を行く個性は美人」「整った美形のCM美
少女」「顔はどちらかといえば幼く体は成熟したセクシー美人」の
三タイプに分けられるそうだ。
ある民間研究所に勤務する20代~50代の女性職員30人の顔をサンプルに平
均顔をつくったところ、「均整のとれた美形で、好感のもてる、みやすい顔」
になったという。
それでは、50年後の平均顔はどうかというと「顔の形は現在とほとんど変わ
らず丸顔のまま。ただし、顔全体から受ける印象は目が大きく、鼻筋もあまり
通っていない子供っぽい顔になる」。
タレントで言えば、小泉今日子の顔が未来の先取りであり、男性は、SMAPの
木村拓哉が未来の平均顔に近いそうだ。だが、最近の若い人の顔には「あごの
細い」人が多いように私は感じる。逆三角形の顔である。あごが細いというこ
とは歯並びが悪くよく咀嚼できないということになる。
ところで、人類の源流は、アフリカに最初に現れた猿人(約500万年~百数
十万年前)とされ、当初から顔が小さい「きゃしゃ型」と顔が大きく臼歯の発
達した「がんじょう型」が進化したものと言われている。
そして、日本人のルーツは、南方系と北方系との二つの流れが指摘されていて、
その名残は現代人にも垣間見えるそうだ。
その一つが「縄文人」というタイプで、特徴は「顔は四角くて彫が深く歯が
小さいから口元は引き締まっている。まゆは濃く瞼は二重」。
片や「弥生人」は2,300年前の弥生時代にに急に登場してきた顔で「全体的
には長いがきゃしゃではなく歯が大きいため、出っ歯ぎみ。眉毛は薄く、顔は
平面的、寒冷地に適応した北方系の顔の特徴があるそうだ。
以前流行った「ショーュ顔」「ソース顔」という二分法に相通じるものがあ
る。文部省の統計(94年度)によると現代の13歳の男子の身長は、父親よりも
8.1センチ高く、祖父の時代にくらべると、なんと14.6センチも伸びた。
女子も祖母に比べて14.4センチも背が高く手足もすらりと伸び表面的には体躯
の向上が続いているそうだ。
ところで「魏志倭人伝」をもとに再現した食事のメニュー「ハナグリの塩汁、
アユの塩焼き、長芋の煮物、カワハギの干物、ノビル、クルミ、クリ、もち玄
米のおこわ」を二人の女子中学生に食べてもらった。
その結果は、食べ終わるまでに51分、かんだ回数3,990回に及び翌日学生は
「急性顎関節症」になってしまった。一方、現代食「コーンスープ、ハンバー
グ、スパゲッテイ、ポテトサラダ、プリン、パン」を食べた学生の咀嚼回数は
倭人の1/6の620回、食事時間は1/5の僅か11分で終わった。
これは10年前の実験だそうだが、現代人は食物をかまなくなったと言われてい
る。過去半世紀、食生活は飛躍的に豊になり、余裕時間の増加でスポーツに親
しむ機会も増えた。
その反面、日常生活の中では、食事や活動が軟化して「不健康化」もまた進ん
でいると言う。しかし、最近の若い女性に美人が増えてきた気がする。それは、
活気と屈託のない明るさにあるのだろうと思っている。
「日本顔学会」の原島博東京大学工学部教授によれば、いい顔とは、
① 生き生きしているか
② やさしさを持っているか
③ 性的魅力があるか、の三っの条件からできるという。
顔は時代と文化がつくるとも言われるが、「40歳になったら、自分の顔に責
任を持たなければならない」と言われるように「いい顔」は自分自身にあるよ
うだ。
◎現役退職後、徒然に記したものを「ハマ風は踊る」の表題に収めてみた。
本稿は,平成9年6月10日に記したもの。