森岡 周のブログ

脳の講座や講演スケジュールなど・・・

人間であるということ

2013年04月18日 09時09分30秒 | 日記
広島での講演後、久しぶりに潰れた感があり、やっと普段の疲労度合いに戻ってきました。ちょっとイレギュラーなことや仕事が増えていたことから、パンクしたんだと思います。これにより修復され、逆に強いタイヤになるんだと思います。ワーキングメモリという脳の問題、そして心理的でなく生理的な体力という身体の問題、これらが環境によって更新され、太くなっていくことで、人間は強くなっていくのでしょう。そしてそれは個人だけでなく、相互関係の環境へと波及していき、ひいては職場、コミュニティー、国作りになっていきます。学生たちの「いっぱいいっぱい」っていう言葉は、むしろ成長するための環境にぶつかってしまっている状態なのですが、そのような環境がない限り、成長はないと思うことで、人間は前を向くことができるわけです。

昨日は午前中に看護学科の感情体験の脳科学の授業でした。「感情とは_」「感情的とは?」「感情の種類」をみんなに発言してもらい、そこから、ポジティブ、ネガティブに分けてもらいました。それを通じて、ネガティブな感情が実に多彩で、そして多いことに気づいてもらいました。ネガティブな感情は自己、そして人類を守るために必要なものです。特に恐怖という感情がなぜ大切なのか、ということをそれから説明しました。そしてなぜ恐怖は生じるのか、みんなで意見を出し合い、対象者の心の状態を探りました。そして、その神経メカニズムを説明し、扁桃体という脳の領域が自己の感情をつくるだけでなく、他者の感情の読み取りに関わることを説明し、乳幼児教育のあり方、そして高齢者による介護が余儀なくされた方、その中でも特にトイレ動作が自立できていない方がどういう脳の状態であるか推論をたてていきました。

午後は健康科学研究所の会議に出席し、仲間のプロジェクト研究の成果を説明しながら、今年度の予算を決めていただきました。無事研究費を申請通り取得できております。

その後、理学療法学科の神経理学療法学でした。昨日は脳損傷後の左右半球の動態、そして脳梁を通じた抑制機構、それらから半側空間無視がなぜ注意障害なのかということを説明し、左側を特徴的に無視するその神経メカニズム(現段階での仮説)を解説し、それについて互いに説明しあうことで知識、経験として脳の中に記憶してもらいました。このメカニズムをなぜ考えないといけないかは、どのように評価し、どのように治療すべきか、に直結するからです。ステレオタイプの介入ばかり続けていっても、今よりも良くなることはないし、なったとしてもそれはロジスティック関数のように頭打ちになります。つまり、考え方をしっかり持つことで、どのように介入すべきか、考えることができる療法士が今後必要になります。それがパラダイム転換につながります。位相を企てないと。彼らにはまだ知識もなければ経験もない。だからこそ、逆にバイアスやリミットを意識しないのです。

その後、夕方からは教育学部の発達脳科学でした。ここでは道徳を生み出す脳のについて考え、道徳教育のそのスタートは感情を出す、そしてそれをコントロールさせる環境をつくることであることであると脳の科学から説明しました。つまり、感情を鼓舞する環境、そして、独自のルールをつくり、それを守らせ、感情をコントロールさせるトレーニングが大切であることを説明しました。このルールは法律という究極の三人称でなく、独自、つまり二人称の中から設定するルールのことです。家のルール。クラスのルールといった自分たちのコミュニティ、そして特別感を意識させるとうことです。乳幼児、学童児、そして青年期、それぞれの脳の特徴を説明しつつ、心地よいコミュニケーションはどのようなものであるか、扁桃体、前頭前野の関係から説明し、彼ら自身、そして彼らが教育者になった視点、あるいは親になった視点から考えてもらいました。人間は人間に興味を持たれるからこそ、心地よいのです。現代社会は、他人に興味を持たないものになりつつあります。しかし、教育の原点は、どのような人間であれ、興味を持ち、持たれ、の関係から生まれるのです。