“計画的犯行”、といったら怒られるだろうか。
2010年1月、ファースト・フル・アルバム『勝手にしやがれ』を発表した彼らは、【縄と拡声器とヒロイン】でこう謳った。
“地下室で逢いましょう”
7月29日、東京・新宿歌舞伎町。
狂ったように輝くネオンの街並みをすり抜け、心臓の鼓動とともに、地下へとつづく階段をゆっくりと降りていく。新宿ロフト。数々のバンドを生み出し、伝説をつくっていった“聖地”とも言われるこの場所で、「犯行予告」は実行された。彼らの名は、KYOKUTOU GIRL FRIEND。4人の男は、その計画を『ハードコア+サイレンス』と呼んだ。
酒や談笑を交わし、まったりとした空気が漂っていた場内が暗転すると、SE【禁じられた謝肉祭】とともに亜門(Ds.)、サリー(Ba.)、ケッチ(Gt.)がステージに現れた。歓声のあがる客席。だが、その声はアイドルへ向けられた黄色い歓声ではなく、これから展開されていくステージへの期待と、兄貴分のような彼らに信頼を込めた力強い声だったことを記しておきたい。
【闇を嗤え_密約】で、リズムセッションのようにラフな演奏をつづけるメンバー。しかし、真っ赤なライトに切り替わると、サリーのベースが激しく追い打ちをかけ、曲は一気にヒートアップしていく。ケッチが“オイ!オイ!”と会場を煽り、ワウをかけたテレキャスターを掻きむしると、警告色の拡声器を持った林田倫堕(Vo.)が姿を現わした。荒々しく「毒」マスクをはぎ取った倫堕は、“かかってこいよ”と言わんばかりに指を立て、無言の煽りを散らす。
会場限定シングル第一弾として発売されたファンキーな【食物連鎖】で幕を開けると、“殺せ……殺せ……”という殺気だった倫堕のつぶやきから【禁忌】へ。そして、まるで反抗デモのごとく会場が一丸となった【拝啓 売国奴の皆様、靖國の空が泣いています】を投下し、公演名の“ハードコア”の面を体現しているかのように次つぎと攻め立てていく。
また、不安感を煽るケッチのノイズから流れたのは【未遂】。前を見据え、左胸にマイクをあてていた倫堕が、虚空へ渾身のシャウトを込める。
唄によりそうドラムと、地を這うようにダウナーなベースが全身を生暖かい風のように包んでいく。そこへ絡むのは、哀愁の帯びたギターソロと、息を吐くように静かに語りかけるヴォーカル。
そう頻繁に演奏されているわけではない楽曲だが、あまりの完成度に驚きを隠せなかった。先ほどまでの荒れ狂ったステージングとは裏腹に、情念に満ちた身を削るアプローチを展開していく。だが、そんな“サイレンス”の一面の中にも、“ハードコア”と同じブレない核があるのはたしかであった。
この日のライブで感じたのは、まさしく“楽曲の成長”だった。
作品は作者の手を離れた瞬間、聴き手のものになるというが、彼らはライブのたびに一度曲を取り戻す。そこで新たなスパイスを加え、また世に解き放っていくのだ。そうして育っていく楽曲たちは、いままで以上に説得力を持ち、わたしたちに訴えかけてくるのである。
その一方で、おどろおどろしい序盤からアッパーチューンへと意外な展開を遂げる【最悪最悪最悪最悪(仮)】をはじめ、ケッチのカッティングと80年代風のキャッチーなサビが光る【乱脈(仮)】、変拍子を組み込んだ【ダムドマン(仮)】などの新曲も惜しみなく披露していく。創造と構築のライブ・バンドとでもいおうか。
“声をくれ!声を届けてくれよ!”
そう叫んで、倫堕が客席にマイクを突きつけたのは【噛みついて離れない】。
タイトでシャープなドラミングを見せつけていく亜門、踊るように足でリズムを取り、口の端では余裕の笑みを見せるサリー、多彩な音色と巧妙なテクニックで華麗にギターを操るケッチ。そして、無心に暴れ狂いながらも、決して隙を見せないクレバーな倫堕。
ここまで軽いインターバルを挟む程度でMCは一切なし。それでも全力疾走をつづける彼らの原動力は、いったいどこにあるのだろうか。
ライブの定番曲と化しているアグレッシヴなナンバーの【俺の彼女はリストカッター】、【放送禁止のブルース】、【勝手にしやがれ】とたたみかけ、その勢いはとどまることを知らない。
そんな彼らに応えるように、フロアでも絶えることのない声と拳が空間を埋めていく。
本公演のリードナンバーとも言える【縄と拡声器とヒロイン】での一体感はもう怖いものなしのように思えた。
アンコールで披露された壮大な美メロナンバー【樹海】や、反骨精神あふれる【堕落論】でも、倫堕はなんども“声を届けてくれ!声を!”と叫んでいた。
天井の低いライブハウスで、オーディエンスさえも撥ねつけ、一方的な攻撃態勢をつづけていた彼らが、こうして“求める”という行為を行なっていたのも、ある意味“成長”のひとつであったのではないだろうか。
“KYOKUTOU GIRL FRIENDをもっと求めてくれ。もっと声を聞かせてくれ、名前を呼んでくれ!”
“声”によって呼び戻された3度目のアンコール。4人は地下室で絶叫の音を鳴らす。
気が済むまで、声が枯れるまで、彼らは叫びつづけるのだろう。だが、もう4人だけではない。
これほどまでにたくさんの良き理解者であり、中毒者であり、“共犯者”がいるのだから。
【SET LIST】
SE_禁じられた謝肉祭
01_闇を嗤え_密約(instrumental)
02_食物連鎖
03_禁忌
04_拝啓、売国奴の皆様 靖國の空が哭いています
05_未遂
06_最悪最悪最悪最悪(仮)
07_ゲルニカに噤む
08_セックス
09_夜光虫
10_乱脈(仮)
11_ダムドマン(仮)
12_アルケミー
13_サヨナラセカイ
14_噛みついて離れない
15_この人生はフィクションです
16_俺の彼女はリストカッター
17_放送禁止のブルース
18_勝手にしやがれ
19_縄と拡声器とヒロイン
20_闇を嗤え_警告(instrumental)
-EN-
21_依存
22_樹海
-EN2-
23_堕落論
-EN3-
24_縄と拡声器とヒロイン
25_闇を嗤え_警告(instrumental)
2010年1月、ファースト・フル・アルバム『勝手にしやがれ』を発表した彼らは、【縄と拡声器とヒロイン】でこう謳った。
“地下室で逢いましょう”
7月29日、東京・新宿歌舞伎町。
狂ったように輝くネオンの街並みをすり抜け、心臓の鼓動とともに、地下へとつづく階段をゆっくりと降りていく。新宿ロフト。数々のバンドを生み出し、伝説をつくっていった“聖地”とも言われるこの場所で、「犯行予告」は実行された。彼らの名は、KYOKUTOU GIRL FRIEND。4人の男は、その計画を『ハードコア+サイレンス』と呼んだ。
酒や談笑を交わし、まったりとした空気が漂っていた場内が暗転すると、SE【禁じられた謝肉祭】とともに亜門(Ds.)、サリー(Ba.)、ケッチ(Gt.)がステージに現れた。歓声のあがる客席。だが、その声はアイドルへ向けられた黄色い歓声ではなく、これから展開されていくステージへの期待と、兄貴分のような彼らに信頼を込めた力強い声だったことを記しておきたい。
【闇を嗤え_密約】で、リズムセッションのようにラフな演奏をつづけるメンバー。しかし、真っ赤なライトに切り替わると、サリーのベースが激しく追い打ちをかけ、曲は一気にヒートアップしていく。ケッチが“オイ!オイ!”と会場を煽り、ワウをかけたテレキャスターを掻きむしると、警告色の拡声器を持った林田倫堕(Vo.)が姿を現わした。荒々しく「毒」マスクをはぎ取った倫堕は、“かかってこいよ”と言わんばかりに指を立て、無言の煽りを散らす。
会場限定シングル第一弾として発売されたファンキーな【食物連鎖】で幕を開けると、“殺せ……殺せ……”という殺気だった倫堕のつぶやきから【禁忌】へ。そして、まるで反抗デモのごとく会場が一丸となった【拝啓 売国奴の皆様、靖國の空が泣いています】を投下し、公演名の“ハードコア”の面を体現しているかのように次つぎと攻め立てていく。
また、不安感を煽るケッチのノイズから流れたのは【未遂】。前を見据え、左胸にマイクをあてていた倫堕が、虚空へ渾身のシャウトを込める。
唄によりそうドラムと、地を這うようにダウナーなベースが全身を生暖かい風のように包んでいく。そこへ絡むのは、哀愁の帯びたギターソロと、息を吐くように静かに語りかけるヴォーカル。
そう頻繁に演奏されているわけではない楽曲だが、あまりの完成度に驚きを隠せなかった。先ほどまでの荒れ狂ったステージングとは裏腹に、情念に満ちた身を削るアプローチを展開していく。だが、そんな“サイレンス”の一面の中にも、“ハードコア”と同じブレない核があるのはたしかであった。
この日のライブで感じたのは、まさしく“楽曲の成長”だった。
作品は作者の手を離れた瞬間、聴き手のものになるというが、彼らはライブのたびに一度曲を取り戻す。そこで新たなスパイスを加え、また世に解き放っていくのだ。そうして育っていく楽曲たちは、いままで以上に説得力を持ち、わたしたちに訴えかけてくるのである。
その一方で、おどろおどろしい序盤からアッパーチューンへと意外な展開を遂げる【最悪最悪最悪最悪(仮)】をはじめ、ケッチのカッティングと80年代風のキャッチーなサビが光る【乱脈(仮)】、変拍子を組み込んだ【ダムドマン(仮)】などの新曲も惜しみなく披露していく。創造と構築のライブ・バンドとでもいおうか。
“声をくれ!声を届けてくれよ!”
そう叫んで、倫堕が客席にマイクを突きつけたのは【噛みついて離れない】。
タイトでシャープなドラミングを見せつけていく亜門、踊るように足でリズムを取り、口の端では余裕の笑みを見せるサリー、多彩な音色と巧妙なテクニックで華麗にギターを操るケッチ。そして、無心に暴れ狂いながらも、決して隙を見せないクレバーな倫堕。
ここまで軽いインターバルを挟む程度でMCは一切なし。それでも全力疾走をつづける彼らの原動力は、いったいどこにあるのだろうか。
ライブの定番曲と化しているアグレッシヴなナンバーの【俺の彼女はリストカッター】、【放送禁止のブルース】、【勝手にしやがれ】とたたみかけ、その勢いはとどまることを知らない。
そんな彼らに応えるように、フロアでも絶えることのない声と拳が空間を埋めていく。
本公演のリードナンバーとも言える【縄と拡声器とヒロイン】での一体感はもう怖いものなしのように思えた。
アンコールで披露された壮大な美メロナンバー【樹海】や、反骨精神あふれる【堕落論】でも、倫堕はなんども“声を届けてくれ!声を!”と叫んでいた。
天井の低いライブハウスで、オーディエンスさえも撥ねつけ、一方的な攻撃態勢をつづけていた彼らが、こうして“求める”という行為を行なっていたのも、ある意味“成長”のひとつであったのではないだろうか。
“KYOKUTOU GIRL FRIENDをもっと求めてくれ。もっと声を聞かせてくれ、名前を呼んでくれ!”
“声”によって呼び戻された3度目のアンコール。4人は地下室で絶叫の音を鳴らす。
気が済むまで、声が枯れるまで、彼らは叫びつづけるのだろう。だが、もう4人だけではない。
これほどまでにたくさんの良き理解者であり、中毒者であり、“共犯者”がいるのだから。
【SET LIST】
SE_禁じられた謝肉祭
01_闇を嗤え_密約(instrumental)
02_食物連鎖
03_禁忌
04_拝啓、売国奴の皆様 靖國の空が哭いています
05_未遂
06_最悪最悪最悪最悪(仮)
07_ゲルニカに噤む
08_セックス
09_夜光虫
10_乱脈(仮)
11_ダムドマン(仮)
12_アルケミー
13_サヨナラセカイ
14_噛みついて離れない
15_この人生はフィクションです
16_俺の彼女はリストカッター
17_放送禁止のブルース
18_勝手にしやがれ
19_縄と拡声器とヒロイン
20_闇を嗤え_警告(instrumental)
-EN-
21_依存
22_樹海
-EN2-
23_堕落論
-EN3-
24_縄と拡声器とヒロイン
25_闇を嗤え_警告(instrumental)