「あ゛ーーーーーー!」
千秋(vo)がオーディエンスを煽った第一声がこれである。感情に身を任せ、ある種メチャクチャなステージングは彼らの持ち味だ。
12月12日(土)新宿BLAZEで、 “年末特別公演【ちみとぼくの最終実験(仮)】”と題されたDEZERTのワンマンライブが行なわれた。
DEZERTは、9月27日の赤坂BLITZ公演をもって前任ギタリストが脱退。その後のライブでは「みーちゃん」なる人物がサポートギターを務めていたが、新宿BLAZE公演の2日前である12月10日、「Miyako」が正式メンバーとして加入する旨、そして新アーティスト写真がオフィシャルサイト上で発表された。
お察しの通り、みーちゃん=Miyakoなわけだが、この日の新宿BLAZE公演は、正式加入後の記念すべき初ライブである。とはいえ、別段MCでMiyakoを紹介するわけでもなく、サディスティックな「いつも通り」のライブが展開された。
開演予定時刻を20分ほど過ぎた18時5分。BGMとしてエンドレスリピートされていたTHE BEATLESの「Yesterday」がフェードアウト。不安な気持ちにさせる残響音混じりのギターが爪弾かれ、スモークが勢いよく噴射される音とともに、幕がゆっくりと開いていく。真っ赤な照明で彩られたステージには、Miyako(gt)、SaZ(ba)、SORA(ds)、の姿が浮かび上がった。
サポート期間は白いシャツに身を包んでいたMiyakoは一転、ボタンをきっちりと留めた黒いシャツ姿。ギター自体もサポート時とは異なり、ホワイトボディのテレタイプに。SaZは首もとの空いたインナーから赤いタトゥーを覗かせラフな雰囲気を漂わせている。濃いメイクを施したSORAは額に黒いターバンを巻き、90年代の古き良きバンドを彷彿とさせるスタイルだった。ドラムセットも2バス仕様で気合いがうかがえる。
逆毛を立てた黒髪をツインテールにセットした千秋がマイクスタンドの前に現れる。ライブは重々しい空気をまといながら、初期の楽曲である「「眩暈」」からゆるやかに走り出した。ポーカーフェイスで淡々と音を繰り出す楽器陣と、両手を前へ伸ばしエモーショナルに歌い上げる千秋の対比が目を引く。
イントロに合わせて手拍子が起こった「メリーさんの自殺未遂」、メンバーもオーディエンスもヘッドバンギングを炸裂させた「「殺意」」と徐々に勢いは増していく。「遊ぶなら本気で遊べ!」と千秋が喝を入れると、「脳みそくん。」と「「不透明人間」」ではモッシュが巻き起こる。MiyakoとSORAは時折歌詞を口ずさんでいた。
カニバリズムを彷彿とさせる奇怪千万な歌詞が小気味いいリズムとクロスする「肋骨少女」「胃潰瘍とルソーの錯覚」では、千秋もギターを掻きむしる。ツインボーカルのように息のぴったりなSaZのコーラスが重なり、ライブバンドとしての強みも見せつけていった。シーケンスの怪しげなイントロが流れ出した瞬間から高揚感に包まれる「「絶蘭」」も、オーディエンスが髪を振り乱しながら一斉に体を折り畳み、フロアは異様な光景に。ステージは赤と青の照明が交差し、毒々しい紫色に染まっていった。
千秋が再びマイクスタンドの前に立ち、首を右へ傾けたまま歌ったのは「包丁の使い方~実行編~」。フリルの広がるシャツの袖をプラプラと揺らしながら“-赤い罠に染めた世界は僕のもの-”と歌う姿をは無垢な神童のようにも見えた。
ライブ中盤、千秋が「休憩しようか?」と提案するも、そんな発言とは裏腹に手加減はせず、シャウトで攻め立てる「ゴシック」へと繋げ、オーディエンスを暴れさせる。途中、千秋にギターを奪われたMiyakoがマイクを手に取り、観客を煽って声を求める場面も。そんな彼に「慣れてねえな!」とダメ出しをした千秋はSaZにギターを托し、今度はベースを持って暴れ狂う。SaZもSaZで意気揚々とタッピングをキメ始めたが、本来の持ち主であるMiyakoが立ちはだかりギターを奪取。メンバーも自由奔放だ。
観客の声が小さいと指摘し、「そんな死んだ目で俺を見るなー!」「僕はこんなにがんばってるのにーー!!」とストレートに承認欲求をぶつける千秋。負けじと声を張り上げる観客に「心で叫べ!」と言い放ち、フロアから控えめに声が上がると「(声が)漏れてるぞ!?」とツッコむ。「もういい! 君たちには期待してないから! これは俺たちのライブだから!」と言い放つと、1人ずつメンバーをも煽り、これまで以上にテンションをグイグイと引き上げていく。
その後もたびたび「休憩」と称しつつも、千秋とSORAは悪友のようにニヤリと視線を交わし、「「教育」」「「死刑宣告」」を投下。一向に休ませる気配はない。「「死刑宣告」」のアウトロでMIyakoが取り繕えないミスをし、千秋が無言でずいずいと詰め寄っていたが(笑)、目を開けているのが困難なほど眩いストロボのなか披露された高速テンポの「doze.」で巻き返していく。
ウォールオブデスと土下座ヘドバンでフロアがカオスと化した「「秘密」」、SORAが高速テンポからスローテンポなドラミングまで華麗にキメた「「切断」」と畳み掛け、「包丁の正しい使い方~終息編~」では、突如千秋がフロアへと身を乗り出す。いつのまにか口元が血のりで赤く染まっている。そのままフロアへと降り立ち、もみくちゃになりながらも後方まで駆け抜けていったようだ。途中で雪崩も起こってしまったが、観客同士で手を取り助け合う。
そんな熱を帯びた空間を急速冷却するように披露された「「擬死」」では、Miyakoが冷たい表情で淡々とギターを鳴らし、曲世界に入り込んでいるかのようだった。小柄で「かわいい」イメージが先行しがちな彼の異なる一面を見られたと同時に、DEZERTのメンバーとして覚悟を決め、その一歩をしっかりと踏み出した瞬間だったようにも思う。
ここでも壊れた人形のように首を傾げたまま歌う千秋。アウトロでは「嘘を嘘で、嘘を嘘で僕、嘘を嘘で君…」とうつろな目でつぶやき、会場の空気をさらっていった。
ラストに披露された「「追落」」は絶望の縁に差す一筋の光の如く、微かな希望ようなものを感じさせた。メンバーがステージを去ると、ふと我に返ったように大きな拍手が沸き起こる。その直後、スクリーンには2016年1月20日発売のニューアルバム『最高の食卓』より、「君の子宮を触る」が先行公開された。“過去”と“未来”という刹那的なワードが印象的な、クセになるメロディアスなナンバーだ。
そして、本アルバムを引っさげて2016年2月よりスタートする“DEZERT ONEMAN LIVE TOUR 2016【楽しい食卓”のツアーファイナルとして、6月5日(土)Zepp Tokyo公演を行なうことも発表された。DEZERT史上最大キャパシティのハコでのワンマンライブということもあり、現実的な思考が勝ったのだろう、会場からは歓喜の声というよりも「ええ~!?」と驚きの声が上がる。
しかし、そんな我々の反応も、メンバーにとっては予想の範囲内に違いない。リアリストな彼らは誰よりもDEZERTをわかっている。4人の挑戦、いや、「実験」はまだまだ続くーー。
【SET LIST】
1.「眩暈」
2. メリーさんの自殺未遂
3.「殺意」
4. 脳みそくん。
5.「不透明人間」
6. 肋骨少女
7. 胃潰瘍とルソーの錯覚
8.「絶蘭」
9. 包丁の正しい使い方~実行編~
10. ゴシック
11.「教育」
12.「死刑宣告」
13. doze.
14.「秘密」
15.「切断」
16. 包丁の正しい使い方~終息編~
17.「擬死」
18.「追落」
千秋(vo)がオーディエンスを煽った第一声がこれである。感情に身を任せ、ある種メチャクチャなステージングは彼らの持ち味だ。
12月12日(土)新宿BLAZEで、 “年末特別公演【ちみとぼくの最終実験(仮)】”と題されたDEZERTのワンマンライブが行なわれた。
DEZERTは、9月27日の赤坂BLITZ公演をもって前任ギタリストが脱退。その後のライブでは「みーちゃん」なる人物がサポートギターを務めていたが、新宿BLAZE公演の2日前である12月10日、「Miyako」が正式メンバーとして加入する旨、そして新アーティスト写真がオフィシャルサイト上で発表された。
お察しの通り、みーちゃん=Miyakoなわけだが、この日の新宿BLAZE公演は、正式加入後の記念すべき初ライブである。とはいえ、別段MCでMiyakoを紹介するわけでもなく、サディスティックな「いつも通り」のライブが展開された。
開演予定時刻を20分ほど過ぎた18時5分。BGMとしてエンドレスリピートされていたTHE BEATLESの「Yesterday」がフェードアウト。不安な気持ちにさせる残響音混じりのギターが爪弾かれ、スモークが勢いよく噴射される音とともに、幕がゆっくりと開いていく。真っ赤な照明で彩られたステージには、Miyako(gt)、SaZ(ba)、SORA(ds)、の姿が浮かび上がった。
サポート期間は白いシャツに身を包んでいたMiyakoは一転、ボタンをきっちりと留めた黒いシャツ姿。ギター自体もサポート時とは異なり、ホワイトボディのテレタイプに。SaZは首もとの空いたインナーから赤いタトゥーを覗かせラフな雰囲気を漂わせている。濃いメイクを施したSORAは額に黒いターバンを巻き、90年代の古き良きバンドを彷彿とさせるスタイルだった。ドラムセットも2バス仕様で気合いがうかがえる。
逆毛を立てた黒髪をツインテールにセットした千秋がマイクスタンドの前に現れる。ライブは重々しい空気をまといながら、初期の楽曲である「「眩暈」」からゆるやかに走り出した。ポーカーフェイスで淡々と音を繰り出す楽器陣と、両手を前へ伸ばしエモーショナルに歌い上げる千秋の対比が目を引く。
イントロに合わせて手拍子が起こった「メリーさんの自殺未遂」、メンバーもオーディエンスもヘッドバンギングを炸裂させた「「殺意」」と徐々に勢いは増していく。「遊ぶなら本気で遊べ!」と千秋が喝を入れると、「脳みそくん。」と「「不透明人間」」ではモッシュが巻き起こる。MiyakoとSORAは時折歌詞を口ずさんでいた。
カニバリズムを彷彿とさせる奇怪千万な歌詞が小気味いいリズムとクロスする「肋骨少女」「胃潰瘍とルソーの錯覚」では、千秋もギターを掻きむしる。ツインボーカルのように息のぴったりなSaZのコーラスが重なり、ライブバンドとしての強みも見せつけていった。シーケンスの怪しげなイントロが流れ出した瞬間から高揚感に包まれる「「絶蘭」」も、オーディエンスが髪を振り乱しながら一斉に体を折り畳み、フロアは異様な光景に。ステージは赤と青の照明が交差し、毒々しい紫色に染まっていった。
千秋が再びマイクスタンドの前に立ち、首を右へ傾けたまま歌ったのは「包丁の使い方~実行編~」。フリルの広がるシャツの袖をプラプラと揺らしながら“-赤い罠に染めた世界は僕のもの-”と歌う姿をは無垢な神童のようにも見えた。
ライブ中盤、千秋が「休憩しようか?」と提案するも、そんな発言とは裏腹に手加減はせず、シャウトで攻め立てる「ゴシック」へと繋げ、オーディエンスを暴れさせる。途中、千秋にギターを奪われたMiyakoがマイクを手に取り、観客を煽って声を求める場面も。そんな彼に「慣れてねえな!」とダメ出しをした千秋はSaZにギターを托し、今度はベースを持って暴れ狂う。SaZもSaZで意気揚々とタッピングをキメ始めたが、本来の持ち主であるMiyakoが立ちはだかりギターを奪取。メンバーも自由奔放だ。
観客の声が小さいと指摘し、「そんな死んだ目で俺を見るなー!」「僕はこんなにがんばってるのにーー!!」とストレートに承認欲求をぶつける千秋。負けじと声を張り上げる観客に「心で叫べ!」と言い放ち、フロアから控えめに声が上がると「(声が)漏れてるぞ!?」とツッコむ。「もういい! 君たちには期待してないから! これは俺たちのライブだから!」と言い放つと、1人ずつメンバーをも煽り、これまで以上にテンションをグイグイと引き上げていく。
その後もたびたび「休憩」と称しつつも、千秋とSORAは悪友のようにニヤリと視線を交わし、「「教育」」「「死刑宣告」」を投下。一向に休ませる気配はない。「「死刑宣告」」のアウトロでMIyakoが取り繕えないミスをし、千秋が無言でずいずいと詰め寄っていたが(笑)、目を開けているのが困難なほど眩いストロボのなか披露された高速テンポの「doze.」で巻き返していく。
ウォールオブデスと土下座ヘドバンでフロアがカオスと化した「「秘密」」、SORAが高速テンポからスローテンポなドラミングまで華麗にキメた「「切断」」と畳み掛け、「包丁の正しい使い方~終息編~」では、突如千秋がフロアへと身を乗り出す。いつのまにか口元が血のりで赤く染まっている。そのままフロアへと降り立ち、もみくちゃになりながらも後方まで駆け抜けていったようだ。途中で雪崩も起こってしまったが、観客同士で手を取り助け合う。
そんな熱を帯びた空間を急速冷却するように披露された「「擬死」」では、Miyakoが冷たい表情で淡々とギターを鳴らし、曲世界に入り込んでいるかのようだった。小柄で「かわいい」イメージが先行しがちな彼の異なる一面を見られたと同時に、DEZERTのメンバーとして覚悟を決め、その一歩をしっかりと踏み出した瞬間だったようにも思う。
ここでも壊れた人形のように首を傾げたまま歌う千秋。アウトロでは「嘘を嘘で、嘘を嘘で僕、嘘を嘘で君…」とうつろな目でつぶやき、会場の空気をさらっていった。
ラストに披露された「「追落」」は絶望の縁に差す一筋の光の如く、微かな希望ようなものを感じさせた。メンバーがステージを去ると、ふと我に返ったように大きな拍手が沸き起こる。その直後、スクリーンには2016年1月20日発売のニューアルバム『最高の食卓』より、「君の子宮を触る」が先行公開された。“過去”と“未来”という刹那的なワードが印象的な、クセになるメロディアスなナンバーだ。
そして、本アルバムを引っさげて2016年2月よりスタートする“DEZERT ONEMAN LIVE TOUR 2016【楽しい食卓”のツアーファイナルとして、6月5日(土)Zepp Tokyo公演を行なうことも発表された。DEZERT史上最大キャパシティのハコでのワンマンライブということもあり、現実的な思考が勝ったのだろう、会場からは歓喜の声というよりも「ええ~!?」と驚きの声が上がる。
しかし、そんな我々の反応も、メンバーにとっては予想の範囲内に違いない。リアリストな彼らは誰よりもDEZERTをわかっている。4人の挑戦、いや、「実験」はまだまだ続くーー。
【SET LIST】
1.「眩暈」
2. メリーさんの自殺未遂
3.「殺意」
4. 脳みそくん。
5.「不透明人間」
6. 肋骨少女
7. 胃潰瘍とルソーの錯覚
8.「絶蘭」
9. 包丁の正しい使い方~実行編~
10. ゴシック
11.「教育」
12.「死刑宣告」
13. doze.
14.「秘密」
15.「切断」
16. 包丁の正しい使い方~終息編~
17.「擬死」
18.「追落」