旬くん
「今日(9/29)マツジュン、サーフィン行くって言ってたなあ。」
JUN STYLE 2007/10/6で、潤くんがサーフィンの話しています。
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(参考)
先週の情熱大陸2007/11/11-小栗旬くん
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まにまにさんのおかげで冒頭部分完成しました!
ありがとうございます!
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(映画クローズZERO完成披露試写会/9月26日東京六本木)
この日は彼にとって主演した映画の完成披露という、とりわけ大切な日だった。
が、起きてこない。
スタッフ
「小栗くん!小栗くん!旬くん!おはようです!」
ようやく出てきた小栗はやつれ果てていた。
そして、そこには近しいスタッフでさえ見たことのない小栗旬がいた。
(メイクしてもらいながら、水を飲み、プログラム?を見ている旬くん)
異様なほど緊張感をみなぎらせていた。
誰も声すら、かけられない。
30分ほどかけて支度を終えたところで、ようやく小栗が口を開いた。
旬くん
「なににこんなにムカついているんだろうっていうくらいに、
いろんなことに本当にムカついてる、今いちばん。
どこ行っても最近喧嘩ばっかりしてるもんな。
昨日も結局また喧嘩しちゃったもんな。」
スタッフ
「え、したんですか?」
旬くん
「友達とね。
なににこんなにオレ怒ってるんだろう?」
小栗にこの異変が起こったのは、9月の末のことだった。
理由はこれだった。
(小栗旬のマネージャーが実際に使用しているスケジュール帳)
5月から始まった超ハードスケジュール。
200日間ノンストップの仕事漬け。
その間に精神も肉体も極限状態に追い込まれていた。
1/200日(5月1日映画クローズZERO/大阪)
5月1日、今年を走る時と決めた小栗への密着が始まった。
そのころまだ彼は自分がやがてどれほどの存在になるかわかっていなかった。
旬くん
「なんか、オレにそんなに密着してもらって申し訳ないですね。」
旬くん
「なんかちょっと緊張しますよね。」
そして小栗は走り始めた。
200日間の果てに、なにが見えてくるのかわからないまま。
41/200日(舞台:お気に召すまま)
夏には舞台と連続ドラマのかけもちという離れ業もやってのけた。
52/200日(ドラマ「花ざかりの君たちへ」)
旬くん
「最近どんどん痩せていくもん。」
スタッフ
「食っても?」
旬くん
「うん。」
それでもきた仕事は全部引き受けた。
61/200日(アフレコ:サーフズ・アップ)
62/200日(雑誌撮影:Smart)
65/200日(ラジオ:オールナイトニッポン)
(オールナイトニッポン収録風景)
旬くん
「小栗旬のオールナトニッポン!」
眠れぬ日が続いた。
スタッフ
「眠そうだね。」
気がつけば小栗はこんな存在にまでなっていた。
25歳以下で今活躍していると思う俳優、ダントツの1位。(日経エンターテイメント調べ)
だが、その人気にも小栗は満足できなかった。
―俺は役者として芝居するってことが仕事だから…「小栗ノート」より―
旬くん
「結局今のオレの人気なんて、あと1年で終わるんですよ絶対。
それで調子に乗ってもさあ、自分が壊れるだけだから、
逆に今は、こんだけ応援してくれてる人たちを裏切りたい、
と思うことの方が強いですよね。」
小栗には役者としてひとつ守り通してきたことがある。
台本を完璧に覚えてから現場に臨む。
そして、そんな律儀な男に舞い込んだのが、
この200日間でもっとも高い壁、舞台「カリギュラ」だった。
―ガチンコ200日 Ⅱ オレは役者だ。―
(舞台「カリギュラ」ポスター撮影/東京南青山)
75/200日(7月14日東京)
7月、都内のスタジオで深夜密かにカリギュラのポスター撮りが行われた。
小栗は相変わらず多忙で、他の仕事を終えてそのまま駆け付けたようだった。
スタッフ
「だいぶ絞れてきてますね。」
75/200日(9月14日東京)
小栗は相変わらず多忙で、他の仕事を終えて、そのままかけつけたようだった。
旬くん
「おなかすいたな。
もう食っちゃおう。」
”好物、カップラーメン。”
旬くん
「あー、うめえ。」
”小栗流おいしいカップ麺の食べ方”
旬くん
「お湯はちょっと少なめ、時間は2分ぐらい、
(=麺は固めで、味は濃い)
っていうのが、おいしい食べ方だと思います。」
スタッフ
「なんでですか?」
旬くん
「そっちのほうが味が濃くなるじゃないですか。」
スタッフ
「つくづく王子のイメージとは違うんですね。」
旬くん
「僕がですか?
最近、どこ行っても王子って言われますけどね、ほんとに。」
(舞台カリギュラポスター撮り)
撮影が始まった。
ほぼ丸裸。
舞台カリギュラがこれまで日本で演じられたことはほとんどなく、
演出家蜷川幸雄が小栗のためにと温めていた企画だった。
中身は、残虐非道の限りを尽くして殺されたカリギュラの生き様を通して、
不条理な人間の本質を描くもの。
セリフは極めて難解で、その量は155ページ分にもなる。
小栗はそれを人気が先行しがちな自分への蜷川からの宿題だと受け止めていた。
旬くん
「もうアイドル俳優ですから、僕は。」
蜷川さん
「(笑)」
旬くん
「それこそ観に来てくれる人たちにそんなこと言っちゃあれだけどさ。」
蜷川さん
「(うなづく)」
旬くん
「一番悲しいよね。
別にオレらがなにしようとさただ出てるだけでいるだけでいい。」
蜷川さん
「許した人たちがな。
俳優も成長しなくなっちゃうんだけどなあ。」
旬くん
「カリギュラは本当にお客さんを、今日はもう置いていくつもりで、
やりたいなと。」
蜷川さん
「ときどき芝居でぶっちぎりたいって思うときがあるよね。」
問題は、セリフの量とカリギュラの心にどれだけ近づけるか。
"稽古初日は、10月8日と決まった。"
(ドラマ花ざかりの君たちへイケメンパラダイス撮影終了)
9月14日3ヵ月半に及ぶ連続ドラマの撮影がようやく終わりを迎えた。
137/200日(9月14日茨城)
稽古初日まで後20日あまり。
スタッフ
「覚えたんですか?カリギュラは?」
旬くん
「まだ全然。
今まだ一幕しか読めてないです。
全然頭に入ってこない。
本当に気が重たい。」
スタッフ
「そろそろ彼女欲しくなってきました?」
旬くん
「マックス。」
スタッフ
「マックス?」
旬くん
「マックス!」
しかし、彼女どころではなかった。
(9月14日花ざかりの君たちへイケメンパラダイス撮影終了日)
(9月16日名探偵コナン撮影開始)
2日後、2週間に及ぶスペシャルドラマの撮影が始まった。
139/200日(9月16日茨城)
その初日、現場ではさらに小栗を困惑させる事態が起きていた。
(ドラマ名探偵コナン撮影現場/茨城県神栖市)
カットの声がかかるたびに、ざわめきが起こる。
スタッフ
「人気者だね、すごい!どんだけ花束もらえるの!」
旬くん
「すごいね。」
高視聴率を得たドラマの影響か、
無数のファンが現場を取り囲んでいた。
人気だけの俳優でないことを証明したい、
が、ますますアイドル人気が高まるという皮肉。
旬くん
「全然人減らないんだけど、大丈夫かな?
次の芝居がものすごく不安になってくるなあ。」
そして、この日小栗は、自分のルールを破った。
(パイプ椅子に座って台本を読む旬くんの映像)
台本を現場に持ち込んでしまった。
いろんなことが重なって、集中して覚えられない。
(メイクしてもらっている映像)
頭のどこかにはカリギュラのこともある。
しかし、今はドラマだ。
ひとつおろそかにすれば、
あの時代に戻りかねないことを知っている。
嫌な思い出がある。
(小学6年生エキストラをしていた頃の写真)
まだ、エキストラをしていたころ、
そこに主役として来ていた同世代の少年がいた。
”俺らは寒いなか屋外で待たされているのに、
彼らは暖かいロケバスに乗っている。
俺は絶対、あのバスに乗ってやろうと思った。”
(居酒屋?で)
スタッフ
「あの時代がなかったら、今はない感じありますか?」
旬くん
「絶対(今は)ないと思いますよ。うん。
悔しさっていうものはなくなってるけど、
あのときの怖さとか、トラウマみたいなものは、
やっぱ、残ってますね。
そのエキストラ時代じゃなくても、
やっぱ怖いと思った、
怖いと思ったことは全部残ってるから、
いつでもすぐ戻ってきますっていう恐怖。
なんか、その恐怖に立ち戻ることが出来る自分だから、
いろんなことを考えられるのかなと思うところはありますね。
恐怖があれば、強くなれるとは思いますね。
すいません、ビール!」
(9月のスケジュール帳
/9月26日映画クローズZERO完成披露試写会)
どれほど強くなっても、しかしスケジュールは、
容赦なく襲いかかってくる。
149/200日(9月26日東京)
稽古初日まで2週間をきって、
ドラマとカリギュラの台本を抱えたまま、
今度は完成した映画の宣伝に奔走する日々が始まった。
(映画クローズZERO完成披露試写会/9月26日東京六本木)
司会
「主演小栗旬さんです!」
旬くん
「おい!おまえら!愛してるぞ!」
会場
「キャー!」
不安があってもファンの前では笑顔。
それが仕事だ。
(楽屋外で)
山田孝之さん
「すごいね、きついね。」
映画で共演した山田が小栗の状態を心配した。
旬くん
「追いつかないわけ、全然。」
山田さん
「糖分いっぱい摂っといたほうがいいよ。」
旬くん
「ブドウ糖?」
山田さん
「わかんないけど。
ホント(頭に)入らなくない?疲れてくるとセリフなんか。」
旬くん
「元気よく入ったほうがいいですか?」
スタッフ
「はい!元気よく!」
山田さん
「元気よくだって!」
スタッフ
「はい!次お願いしまーす!」
(ホテル?の部屋に入っていく)
旬くん
「こんばんは!」
山田さん
「どうも。」
(9月29日名探偵コナン撮影)
稽古初日まで、あと7日。
152/200日(9月29日東京)
まだ、ドラマの台本と格闘していた。
(心臓を押さえてベットに倒れこむシーン)
芝居さながら、小栗はフラストレーションの塊のようになっていた。
(楽屋で)
スタッフ
「まだ全然やってないんですか?カリギュラは?」
旬くん
「まだ全然。」
スタッフ
「まだ全然。」
旬くん
「今日マツジュン、サーフィン行くって言ってたなあ。」
(音楽がかかり)
旬くん
「わかる?これ?スキマスイッチ。全力少年。
♪つまづいて転んでたらおいてかれるなあ~。
なんだろう?
オレ、基本的に洋楽の方が好きなんだけど、
最近、英語の歌を聞くと、ちょっとムカつくんですよね。
わかんねえこと歌ってるんじゃねえよ!って。」
(ウルフルズの曲がかかっています)
旬くん
「♪言えない一言が切ない帰り道~
なんだか泣けてくーる~思わず泣けてくる~
明日も頑張ろうぜ~」
(廊下で逆立ちをして腕立てする旬くん)
結局、ドラマの撮影中、カリギュラの台本は手付かずのままだった。
(スケジュール帳/10月4日5日:完全OFF。セリフを覚える)
ようやく時間が出来たのは、稽古4日前。
159/200日(10月5日東京)
小栗を訪ねると、自宅近くの公園にいた。
スタッフ
「おつかれさまです。」
旬くん
「これ(灯り)持って来てよかった。」
スタッフ
「やっぱり家だと覚えられないですか?」
旬くん
「家だとなんか、テレビとかつけちゃうし、
音楽とか聴いちゃうし。」
与えられた時間は4日間。
(公園のベンチで台本を読む旬くん)
問題はセリフの量ばかりではない。
たとえば、最後のこんな場面。
”おれは生き、おれは殺し、破壊者の狂乱した権力を行使する。(中略)
自分の人生を眼下に支配している比類なき孤立、
罰を受けない暗殺者の常軌を逸した悦び、
人間の命を砕く情け容赦ないこの論理、(中略)
そしてついに、欲しくてたまらない永遠の孤独を完成させるんだ。”
これほど難解な言葉と論理を撒き散らすカリギュラの狂った心を、
どう自分に宿すかだった。
旬くん
「やっぱり見られて読もうと思うと、キツイですね。」
スタッフ
「ちょっと離れてみる。」
小栗が初めてカメラを拒絶した。
162/200日(10月8日埼玉)
セリフを覚える作業は稽古が始まる直前まで続いた。
(劇場?搬入口で、しゃがんでセリフを覚える旬くん)
心配した先輩(俳優吉田鋼太郎)がやってきた。
旬くん
「セリフが入らないんだよ、本当に。
本当にヤバイ。」
吉田さん
「なんかすごいちゃんとした筋があるわけじゃないからな、
シェイクスピアみたいにさ。」
旬くん
「ピンチ。」
吉田さん
「人生最大のピンチ?」
旬くん
「人生最大のピンチ。」
吉田さん
「ウケるなあ。」
旬くん
「セリフ覚えるの得意だったんだけどさあ。」
吉田さん
「大丈夫だよ。
そういう覚えてないっていうようなオーラを出してると、
嗅ぎ付けて立ち稽古やろうとか言い出すから、堂々としてろよ。」
旬くん
「無理だよ。本当に無理だよ。」
吉田さん
「(笑)ウケる!」
その様子は、見ているこちらが舞台のさきゆきに不安を覚えるほどだった。
(10月12日カリギュラ稽古)
ところが、わずか4日後意外な光景を目にすることになる。
166/200日(10月12日埼玉)
稽古が始まって4日目。
正直に言えば、小栗が蜷川にしごかれる場面を撮りに行った。
旬くん
「そうやって生きるより・・・、生きるより、オレが刺してやる。
その方法はちゃんとある。
オレは、みんな・・・、みんなが思っている・・・、
オレはみんなに欠けているものを知っている。」
”たびたびセリフに詰まる。
しかし、蜷川から罵声は飛ばない。”
旬くん
「帝国でただ1人自由な男!」
”小栗はどこか突き抜けた様子だった。”
ようやく小栗が蜷川に呼ばれた。
蜷川さん
「あるいは、フシ、フシ。」
旬くん
「フシ、フシ。」
だけど、わずかにアクセントを直されただけだった。
蜷川さん
「あとは、完璧。」
旬くん
「ホント?」
蜷川さん
「ホントだよ。よかったよ。」
蜷川さん
「小栗をノックアウトしてやろうと思ったんだけど、
残念だな、出来ちゃったな。
不愉快だ。」
”その後3週間続いた稽古で、
小栗が蜷川から罵声を浴びることはなかった。”
スタッフ
「世界にいろいろ恨みを持っているから、
それがいいのかもしれない。」
蜷川さん
「オレの狙いは当たりだろ。
イライライライラしてる。
集中できないくらい、芝居に。」
イライラ。
それが答えだったのかもしれない。
小栗がセリフ以上にカリギュラに近づけたことの。
殺人的なハードスケジュールの中で、
小栗のイライラはマグマのように静かに溜め込まれていた。
それが限界を超えたのが、あの日だった。
”9月26日映画クローズZERO完成披露試写会”
(9月26日10:30完成披露試写会の朝)
恐らく小栗はこのときにはこれまで経験したことのない感情を手に入れた。
そして、それこそが、暴君カリギュラを演じるために必要なものだった。
(9月26日23:30同日夜)
ただ、それをどう処理していいかわからず、もてあましていた。
(スタジオロビー?ソファでうつ伏せになりながら)
旬くん
「本当こんなに忙しくなると思わなかった自分。
怖い。本当に怖い。」
スタッフ
「怖いですか?」
旬くん
「怖いっす。すっげえ怖い。」
”恐怖があれば、強くなれる。”
200/200日(カリギュラ初日11月7日/渋谷シアターコクーン)
11月7日カリギュラ初日。
(開演30分前楽屋で腹筋、腕立て、逆立ちなどする旬くん)
小栗はまだ恐怖と戦っていた。
(セリフを言う旬くん)
”200日間、恐怖と戦って小栗旬は何を手に入れたか。”
旬くん
「はっきり言って、なにも見られて恥ずかしいことなんて、
なにひとつない。」
スタッフ
「どんな姿でも?」
旬くん
「うん。」
(BGMに竹内まりやの元気を出してが流れています。)
スタッフ
「怒っても泣いても?」
旬くん
「うん。この1年で本当にそうなりましたね。
どこに行ってもやっぱ、今オレを見てる人たちは、
虚像のオレを見てるわけでしょう?
どこに行っても。
はやし立てられ、もてはやされてるオレが、ね、
そこにいるから。
そしたら、なんかもう、それを信じてる人たちに、
こういう自分を見せる必要があるのかどうかわからないけど、
でも、オレのこと見るのなんて、
みんなそれぞれ見たい取り方で見るわけだから、
本当にオレも勝手に見られて困ることはなにもない。
もうやるだけです、あとは。」
(発声練習?する旬くん)
(開演5分前/18:55)
開演時間が迫った。
スタッフ
「じゃあ、ここまでなんで。」
旬くん
「おいっす。ぶちかましてきます。」
(BGMは、徳永英明さんがカバーした安室奈美恵さんのCan you celeblate?)
(楽屋を出る旬くん)
(11月7日19:00開演/東京渋谷シアターコクーン)
そして、小栗旬200日目の舞台の幕が開いた。
”舞台カリギュラ”
まるで、小栗の中にあるむき出しの感情が、
一気に爆発したかのようだった。
見せて恥ずかしいものなどなにもない。
その言葉通りの舞台だった。
(カリギュラの舞台の模様の映像)
そして舞台はこの言葉で締めくくられた。
”オレはまだ生きている!”
(カーテンコールの映像)
カーテンコール。
すべてを出し切った小栗の顔は、
一点の曇りもなく、澄んでいた。
2時間後、小栗はボロボロの体をひきずるようにして、
いつもの場所に向かった。
(11月8日0:30/東京有楽町)
旬くん
「小栗旬のオールナイトニッポン。」
201/200日(11月8日東京)
小栗は、200日を走り終えたと同時に、
201日目をまた走り始めた。