今から、二年前の十月過ぎに、私は、星ヶ丘病院の帰り道で、主治医の女医先生が出したお薬が増量されたのを内心怒り、そのまま、イトーヨーカ堂で大量の食品を買い込んだ。
その商品袋を持ったまま、今度は、ツタヤみどり書房桑野店になだれ込み、その場のガラスの商品ケースから、ゲーム機器、この場合、「任天堂スウィッチ」の中古品を、黙ってしばらく見ていたら、何だか、畑違いの私であったが、何か、新たな地平が開ける気がして、お店の人に話しかけた。
そこで、私は、それ以前から、新聞記事で知っていた、「どうぶつの森」がそのゲームで遊べる、この一点で、その他の沢山のゲームも遊べるのだから安い値段だ、と勝手に踏んで、御財布の全てあるお金をはたいて、それらゲーム機器を買った。
うちに帰って来て、真っ先に、自慢がてら、日蓮正宗無量山寿海寺のH田講頭さんに電話かメールで、その買い物の事を、これも暢気(のんき)にも知らせた。
その時の、講頭さんの、烈火のごとくの怒りに触れて、私は、普段のあの優しい講頭さんとは異質のものを感じたし、何か、障碍者がやるべき代物ではない、との断定口調に、私は、障碍者差別と受け取った。私個人の被害妄想も勿論あった事だろう。
そして、私と講頭さんとは、これは水掛け論となり、話しは平行線になった。
それから、私は、子供のいない夫婦の講頭さんに、子供がいれば、当然、子供がかわいいから、買ってあげるでしょ、と話を向けた。
すると、その、講頭さんのメールには、同じ講頭さんの兄弟の親としての、子供がまるでゲームに人質に取られた如くの、学校の勉強を全然しなくなったりした子供達の、悲惨な苦悩が書かれてあった。
それでも、私は大人であり、意にはその頃は一切介さなかったが、その後、私達、講頭さんと私は、関係修復不可能と言えるまで、仲が悪くなり、険悪な仲となり、どちらからも、携帯、PCのメールの類の交換は全くなくなった。
それが、今から冒頭でも書いた、二年前の突如の事であり、私も、その頃は、独自路線をゆき、お寺でも孤立化、一匹狼化してしまった。
その後、紆余曲折を経て、何とか、お寺では、講頭さんは私の面倒は見てはくれたりする事も非常に多かった。ほんの一時期、一時的な関係の悪さであったのだ。
そうして、私の心の中でも、あの頃の、講頭さん自身の兄弟の子供達の話を聞くにつけ、あの時、H田講頭さんは、私の親と言うか、兄弟の兄としての役回りを買って出てくれて、あれだけの、私に対する御心配をして頂いていたのだと、これは今となり、非常に遅すぎたが、得心し、気付きを得た事であった。
全ては私が悪かったのである。それら、ゲーム機器のお金だって、幾ら中古品だからと言っても、一、二万円以上はするものだし、そんな事にうつつを抜かすならば、我ら日蓮正宗信徒にとっては、勤行唱題、自行化他行の、折伏行唱題行、他、各種行事、お寺ではやる事が沢山あるのだから、それらに対して一つたりともなおざりには出来ない筈だったのだ。
何も、H田講頭さんは、自分ばかりがゲーム機器を買っていい思いをして、などと言う、そんなケチな性分から、私に文句を言った訳じゃなくて、正に親心、兄の如くの振る舞いから、私の時間がただでさえルーズな時間の使い方しか出来ない、いわば、これは自身の侮蔑の意味でも言うのだが、「ポンコツ」の人間の私が、そんな、ゲームなどと、時間感覚が無限に忘れてしまい、判らなくなってしまう、その怖ろしさを、講頭さんは述べたかっただけだったのだ。
だから、私は、もう、講頭さんが悲しむような事はしたくはない、と念じて思っているし、ゲームも、飽きた訳じゃないんだが、あんまりやる気も全然起きないのである。ゲームをやったとしても、10分~30分がいい所であり、それが不思議にも、今年に入ってからも、去年の十月位からも、一切、ゲーム機器にはタッチはしていないのである。
しかし、ゲーム機器のネット上での扱い方の説明書では、半年に一度は、内蔵充電池の為にも、バッテリーを充電して下さいとあるので、今とは言わないが、もうそろそろ充電しなきゃな、とは思っている。
その時に、ゲームを動かすかは分からないが、ハッキリ言って、私がやってもいつもゲーム相手でも負けるのが嫌で、ただでさえ勝気な私が負けるのが悔しいと言うのが何というのか、ガッカリであり、余りやりたくはないのである。私には趣味は多趣味であり、他にもやる事、やりたい事は、沢山、時間が足りない程、一杯ある、有り過ぎる位あるのだ。
だから、ゲームになどは、目を向けている時間がないのが正直な所の今の気持ち。
その時の、詰まりは、講頭さんとの争いの悲惨な思い出や、福祉関係者さんたちの、ゲームの課金制のコワさ等を聞かされてから、私には手に負えないな、とはずっと買った時から思い、もう嫌だ、とも思ってきた。
本当は、こんな無用物、売ってもいいんだが、二束三文であろうし、その時の、一万円以下のこちらの売値を見たくないから、敢えて、それらがぶっ壊れるまで、じっとうちで寝かせて置こうと思っている。
人から見れば、何て贅沢で無駄な、と思われても、何一つ、言い訳も出来ない、私である。
以上。よしなに。wainai