川中ではカルガモが6・7羽、のんびり遊弋し、別の群れは、岸辺のガマの根元を啄いている。ガマ、ヨシは岸を埋め尽くして繁茂しているのだが、此処にはマコモが欠けている。これら3つの抽水植物のなかでは、マコモが最も水質に敏感なのかもしれない。
マコモは、江戸後期に流行ったといわれる俗謡「潮来節」で、
♪潮来出島のマコモのなかで、アヤメ咲くとはしおらしや♪
と謡われていた。当時の水郷では岸辺を埋めるように繁茂していたと思われる。今はどうなっているのだろう?因みに歌詞のアヤメは、正確にはノハナショウブだろうが、謡われた当時はアヤメと呼んでいたらしい。アヤメは湿地には生えない。
我々の世代にとってのマコモは、昭和39年にリリースされた歌謡曲「夕陽の丘」3番の歌詞のアタマで、最も親しまれていると思う。石原裕次郎と浅丘ルリ子がデュエットしたこの曲を、カラオケでデュエットした昭和の人は多いだろう。男声1番女声2番と唄い進んで当事者すっかり好い気分になり、間奏後の3番を唄う男性は、もう裕次郎になりきっていた。
♪ 間 奏 8 小 節
♪眞菰(マコモ)の葦は風にゆれ 落葉くるくる水に舞う♪
真菰の葦とは意味不明だが、歌で聴くと違和感がない。
閑話休題。いつも散歩に出かけていた佐鳴湖公園に行き、マコモの存否を調べた。佐鳴湖では水質浄化のため、人為的にヨシ(アシ)の増殖がおこなわれていて、湖岸にヨシが繁茂しつつある。そのヨシに混じって、辛うじて僅かにマコモが生育している場所があった。
寄寓した余禄で、万葉集に22首も載せられ、菰樽や円座など、生活資材として古くから使われてきた身近な植物マコモが、今日では激減していることを初めて知った。川にも湖沼にも、岸辺にマコモが再び繁るようになって初めて、旧の自然が蘇ったと欣ぶことができる。マコモはもしかしたら、ガマやアシに優る水辺環境の指標植物ではないだろうか?
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