カ
タクリの花は、種が発芽して花が咲くまでに7、8年かかるという。初めて開花した若い株は、草丈が短く葉も花もごく小さく、可憐なことこの上ない。それが年を累ね、地中の鱗茎に栄養を蓄えるにしたがって葉は大きく花は豊麗になる。
人工の手が過剰に加わり肥料分の多い土地で育ったものは、これが同種の花かと思うほどに肥大(シクラメンみたい)し、観るに堪えない花容と化してしまう。
カタクリに限らず、山野草は、自然の中にあってこそ麗しいもので、掘り採って栽培するのはもっての外だ。保護の名目で人手をかけることも望ましいことではない。
ここ10数年、春には欠かさず観賞するために登っていた山のカタクリの自生地では、訪れる人が増えたためか、それとも自然の遷移の一環なのか分からないが、初期の頃の群落の面影を失いつつある。これは各地の山野草の自生地に共通する宿命なのかもしれない。
カタクリは種がアリに運ばれることによって増殖するという。新たな自生地の再生は、あの小さな昆虫の活躍に期待するほかない。もっともアリにとっては、カタクリの繁殖を図って種を運んでいるのでなく、本能の命ずるままにカタクリの種を集め、巣に備蓄するに励んでいるだけのことだが。
今春は、これまで自生を予期していなかった山域で、全体にまだ株が幼いカタクリの群生地を偶然見つけた。草丈10センチそこそこ、イカリ形の花も斑のある葉も、小ぶりな可愛いカタクリだった。
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