今回は子供の頃の飼い犬の話。以前に投稿した時は鑑札の件で問題と言われました。でもあの頃の私たちの周辺では、犬に鑑札なんかほぼつけてなかったし、雑種で放し飼い、食べ物は残飯といった飼い方をしていて、最近の犬との関係とは違いました。
君の名前は「チロ」
隣町まで父と譲り受けに行った時、ふにゃふにゃとくっつきあっている子犬3匹の中で、最も白いのを選んだ。
「しろ」って名前をつけたつもりだったけれども、ちいさかった弟が「チロ」と呼んだので、そうなってしまったんだ。
その夜は、玄関に寝かせた。暗くするとキュンキュンと鳴くので、電気をつけっぱなしにし、たっぷりと古着を載せてやった。そして強く鳴いた時は起きて見に行ったけど、結局鳴きやんだかどうかわからないうちに、寝てしまっていた。
次の朝、まっすぐ「チロ」のところへ行くと、やはりキュンキュンと鳴きながらくっついてきた。
その時は、僕が小学校入学の前だった。
おじいさんの家から、僕達の家族が独立し、子供の足で20分位離れたところに移り住んだ。
人見知りの僕は、そこで友達が出来ないため、かっての友達のところまで通っていたんだ。
きっと両親はうまくないって思っていたのだろう。
子犬を連れて歩き出すと、近くの悪がきが集まってきた。
そして先ず子犬をからかい、ついでに僕とも遊んでくれるようになった。
犬ってのは、すぐ大きくなる。
最初は、一生懸命僕の後を追っかけてきたけれども、すぐ追い越してしまった。
息を切らして走る僕が立ち止まると、もっとどんどん行こうよとばかりに、数m先に行っては戻ることを繰り返した。
好きなのは山歩き。裏山へ入ると、山道からはずれて、走り回った。
よくある話と同様に、蜂の巣にイタズラして大騒ぎしたこともあったけど、秘密の見張り台と僕達が呼んでいた、視界が開けた岩棚に行くのが、僕達と同様に好きだった。
そこの一番高い所にちょこんと座って、耳をピクピクと動かし、眼下の町や田畑を見つつ、君は何を思っていたのだろう。
その時だけは、僕達が動き出すまで、動かなかった。
近所の家の犬とと同様に、ほとんど放し飼いだった。
繋ぐのは、僕達が小学校に行く時ぐらい。
ついて来てもらっては困るものね。
帰ってきた時はいない。しかし、さあ遊ぼうというタイミングで、ちゃんと玄関で待っていた。
結局 3年くらい一緒だったかな。
最後は、あっけなかった。
ちゃんと飼い主登録していなかったので、保健所の抜き打ちの野犬狩りで、捕まってしまった。登録が必要と言うことを聞いていたが、その頃の僕は、そんなに重要とは知らなかった。
雑種の中の雑種だったこと、田舎なので登録している家がその頃は珍しかったとのこと、野犬狩りなんてほとんどなかったことなどあるが、結局親が本気ではなかったんだろう。
捕まったのは僕達が学校にいる間。
帰ってきてがっかりしている僕達を見て、父と母がこれから鑑札をとって取り戻そうかとか話していた。
だけど、結局僕達に「しょうがない」と言う言葉を伝えた。
同級生でやはり犬を捕まえられた何人かの子のところにも、戻ってこなかった。
悲しかったけどあきらめた。
「チロ」に何が起こっているのか、薄々はわかってはいたけれども。
これが、宙ぶらりんの「しょうがない」ことがあるのをを知った、また社会に何かルールがあることを知った、人生の初めての出来事かもしれない。
それ以来、犬を飼うことはなかった。