開催場所:名古屋市美術館
展覧会名:開館35周年記念 福田美蘭―美術って、なに?
会 期:2023年9月23日(土・祝)~11月19日(日)
訪問日:2023年10月4日
惹句:「美術って、なに?」 ―固定概念を捨てて、いざ福田美蘭ワールドへ!
内容:序章 福田美蘭のすがた
名画 イメージのひろがり/視点をかえる
時代をみる
1.序章 福田美蘭のすがた
福田美蘭氏について、この特別展の紹介によれば、下記のように書かれている。
「福田美蘭(1963-)は、東京藝術大学大学院を修了後、具象絵画の登竜門といわれた安井賞を最年少で受賞し、国内外で活躍を続ける現代美術家です。現代社会が抱える問題に鋭く切り込み、ときにユーモアを添えて絵画化して見せたり、意識して「もの」を見ることを促したり、東西の美術、日本の伝統、文化を、意表を突くような手法であらわしたりして、私たちの既成概念を打ち破ってきました。そして現在も、絵画の新たな可能性に挑み続けています。」
上記の説明からは、若くしてまず具象絵画分野で頭角を表し、その具象表現技術で現代社会の課題に対し既成概念を破る作品を制作し、国際的に評価されている人と読める。
その人となりを、福田美蘭の自画像等を並べて表現している。
下は最初に飾られている「志村ふくみ《聖堂》を着る」という絵画である。美術館に展示されている志村ふくみ作の《聖堂》という名の豪華な着物を、彼女自身が着ているかのように描いている。美術品としてもう触ることもできない着物を着ている姿を見せることで、美術品の意味を考えようという作品である。その他有名人との写真、子供の頃のブレちゃった写真などを大きくアクリルでそのままに描いて、自分を題材に写真と絵画との関係を考えさせるように仕向けている。
2.名画 イメージのひろがり/視点をかえる
これまで名画と見なされている絵画についてその意味を考えて、ポーズを少し変える模写や、名画の中の登場人物になった場合の視点、その頃になかった表現で現在の手法になっているものなどを取り入れた模写など 種々の試みを行っている。なお絵の中の登場人物の視点は私は好きではないので例示しない。
ここはこの人がなんでも描けるということを自慢しているかのような作品が並んでいる。
ダビンチのモナリザのアレンジ版、同様にミレーの種まく人のアレンジ版、ゴッホをよりゴッホぽく描いた作品、新しい見地からの浮世絵や水墨画など、過去の絵をその作者の表現方法を完全に取り入れつつ、新しい姿勢や、絵の中での新しい視点、絵が描かれた頃になかった影の表現といったものを取り入れて描いた作品が並んでいる。
それらの新しい視点には確かにびっくりする。そして確かにこういった美術の見方もあるなと思う。
でもそれがどうしたとも、おもってしまう。なんかじれったい。この人にとっては軽いアイデアばっかりで、大きなジャンプはないのか。
・モナリザのアレンジ版
ダビンチがモナリザを描いていた時、モデルも時には休憩をとったであろうと考え、その休憩中のモデルの様子を描いたもの。あの頃はこういった女性の姿を絵画にすることはなかった。
・ミレーの種まく人のアレンジ版
ミレーの種まく人は種を手で持ち撒く直前の力を込めた状態だが、わかりにくいとして撒いた瞬間を描いた。もちろんミレーのタッチそっくりである。
・役者絵の浮世絵
全体はもとの構図だが、非常にグロテスクに現代風に顔を描いている。
・美人画の浮世絵
浮世絵では、顔などは平面的に描かれていたが、影をつけて立体的に描いてみる。
3.時代をみる
芸術家も時代に生きる人との観点から、貿易センタービルの崩壊やウクライナ戦争の当事者の肖像を取りあげるとともに、時代の大衆へのイメージや癒しなどが展示されている。
ここでも過去の例に新しいアイデアを重ねた作品が多い。9.11の貿易センターに関わる絵やブッシュ大統領の政策に関わる絵、最近のウクライナ戦争に関わる絵などがあるとともに、昔の衣服を掛け並べた絵がディズニーなどの衣装に化けたり、扇子を並べた絵が最近のウチワに変わったりと風潮を感じさせる絵画がならんでいる。このアイデアは素晴しい。
でもやっぱり・・・と思ってしまう。
・ブッシュ大統領と神との対話
9.11後に復讐だけを考えて周りの話を聞かなくなったブッシュ大統領に、キリストが話をしにいったが聞いてくれるだろうかという絵。
・プーチンとゼレンスキーの肖像画
プーチンにはモリディアニ、ゼレンスキーにはマネが描く肖像画の雰囲気を感じたのだそうだ。
・着物を掛けた絵
かつて外出用の着物を掛けていた仕切りに現代のものを掛けたらこうなるよという絵。
・うな丼の絵
何事にも松竹梅等のランクがあることを皮肉った絵だそうだ。なお背景はパンチイングメタル科と思っていたら、印半纏の文様だそうだ。
おわりに
この人はなんでも描けるうまい人であることはわかった。そして過去に崇められていた作品に新しい視点を導入して、一般大衆をえっとビックリさせ、「美術ってなに」と考えさせるかもしれない教育者であることはわかった。
でも教育者の立場はいいから美術のもっと先は?ということを追求してほしい。技術が高すぎるゆえに期待しすぎるのかもしれないが、普通の人にはわからないけれども、凄い存在があるのだけは感じるといったものを生み出してほしい。
展覧会名:開館35周年記念 福田美蘭―美術って、なに?
会 期:2023年9月23日(土・祝)~11月19日(日)
訪問日:2023年10月4日
惹句:「美術って、なに?」 ―固定概念を捨てて、いざ福田美蘭ワールドへ!
内容:序章 福田美蘭のすがた
名画 イメージのひろがり/視点をかえる
時代をみる
1.序章 福田美蘭のすがた
福田美蘭氏について、この特別展の紹介によれば、下記のように書かれている。
「福田美蘭(1963-)は、東京藝術大学大学院を修了後、具象絵画の登竜門といわれた安井賞を最年少で受賞し、国内外で活躍を続ける現代美術家です。現代社会が抱える問題に鋭く切り込み、ときにユーモアを添えて絵画化して見せたり、意識して「もの」を見ることを促したり、東西の美術、日本の伝統、文化を、意表を突くような手法であらわしたりして、私たちの既成概念を打ち破ってきました。そして現在も、絵画の新たな可能性に挑み続けています。」
上記の説明からは、若くしてまず具象絵画分野で頭角を表し、その具象表現技術で現代社会の課題に対し既成概念を破る作品を制作し、国際的に評価されている人と読める。
その人となりを、福田美蘭の自画像等を並べて表現している。
下は最初に飾られている「志村ふくみ《聖堂》を着る」という絵画である。美術館に展示されている志村ふくみ作の《聖堂》という名の豪華な着物を、彼女自身が着ているかのように描いている。美術品としてもう触ることもできない着物を着ている姿を見せることで、美術品の意味を考えようという作品である。その他有名人との写真、子供の頃のブレちゃった写真などを大きくアクリルでそのままに描いて、自分を題材に写真と絵画との関係を考えさせるように仕向けている。
2.名画 イメージのひろがり/視点をかえる
これまで名画と見なされている絵画についてその意味を考えて、ポーズを少し変える模写や、名画の中の登場人物になった場合の視点、その頃になかった表現で現在の手法になっているものなどを取り入れた模写など 種々の試みを行っている。なお絵の中の登場人物の視点は私は好きではないので例示しない。
ここはこの人がなんでも描けるということを自慢しているかのような作品が並んでいる。
ダビンチのモナリザのアレンジ版、同様にミレーの種まく人のアレンジ版、ゴッホをよりゴッホぽく描いた作品、新しい見地からの浮世絵や水墨画など、過去の絵をその作者の表現方法を完全に取り入れつつ、新しい姿勢や、絵の中での新しい視点、絵が描かれた頃になかった影の表現といったものを取り入れて描いた作品が並んでいる。
それらの新しい視点には確かにびっくりする。そして確かにこういった美術の見方もあるなと思う。
でもそれがどうしたとも、おもってしまう。なんかじれったい。この人にとっては軽いアイデアばっかりで、大きなジャンプはないのか。
・モナリザのアレンジ版
ダビンチがモナリザを描いていた時、モデルも時には休憩をとったであろうと考え、その休憩中のモデルの様子を描いたもの。あの頃はこういった女性の姿を絵画にすることはなかった。
・ミレーの種まく人のアレンジ版
ミレーの種まく人は種を手で持ち撒く直前の力を込めた状態だが、わかりにくいとして撒いた瞬間を描いた。もちろんミレーのタッチそっくりである。
・役者絵の浮世絵
全体はもとの構図だが、非常にグロテスクに現代風に顔を描いている。
・美人画の浮世絵
浮世絵では、顔などは平面的に描かれていたが、影をつけて立体的に描いてみる。
3.時代をみる
芸術家も時代に生きる人との観点から、貿易センタービルの崩壊やウクライナ戦争の当事者の肖像を取りあげるとともに、時代の大衆へのイメージや癒しなどが展示されている。
ここでも過去の例に新しいアイデアを重ねた作品が多い。9.11の貿易センターに関わる絵やブッシュ大統領の政策に関わる絵、最近のウクライナ戦争に関わる絵などがあるとともに、昔の衣服を掛け並べた絵がディズニーなどの衣装に化けたり、扇子を並べた絵が最近のウチワに変わったりと風潮を感じさせる絵画がならんでいる。このアイデアは素晴しい。
でもやっぱり・・・と思ってしまう。
・ブッシュ大統領と神との対話
9.11後に復讐だけを考えて周りの話を聞かなくなったブッシュ大統領に、キリストが話をしにいったが聞いてくれるだろうかという絵。
・プーチンとゼレンスキーの肖像画
プーチンにはモリディアニ、ゼレンスキーにはマネが描く肖像画の雰囲気を感じたのだそうだ。
・着物を掛けた絵
かつて外出用の着物を掛けていた仕切りに現代のものを掛けたらこうなるよという絵。
・うな丼の絵
何事にも松竹梅等のランクがあることを皮肉った絵だそうだ。なお背景はパンチイングメタル科と思っていたら、印半纏の文様だそうだ。
おわりに
この人はなんでも描けるうまい人であることはわかった。そして過去に崇められていた作品に新しい視点を導入して、一般大衆をえっとビックリさせ、「美術ってなに」と考えさせるかもしれない教育者であることはわかった。
でも教育者の立場はいいから美術のもっと先は?ということを追求してほしい。技術が高すぎるゆえに期待しすぎるのかもしれないが、普通の人にはわからないけれども、凄い存在があるのだけは感じるといったものを生み出してほしい。
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