大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

米失業率、戦後最悪を記録

2020年05月09日 | 経済

 2020年4月のアメリカの失業率は、先月から10.3%上昇して14.7%と戦後最悪になった(失業者数約1,600万人増加)。

 5月にはいってからも毎週300万人以上のひとが仕事を失いつづけており、5月の失業率はさらに悪化することが予想されている。

 こうしたなか、以前のブログで書いたようにアメリカでは現在、月30-40万円以上の失業手当がでているほか(個人請負の人ももらえる)、中小企業に対して8週間分の賃金・賃料・光熱費の補償がおこなわれ、外出禁止の影響を緩和している。

 ほかにもアメリカでは、家賃不払いを理由とした借家人の追い出しを一時的に禁止する法的措置や金融機関によるローン支払いの一時免除などがおこなわれている。

 このような日本からすれば信じられないような手厚い補償によって、アメリカの人々の生活はなんとか支えられている。

 気になるのは、この手厚い補償がいつまで続くかである。

 大統領選挙があるといっても、選挙のある11月までこのような措置を続けるのは財政的に困難である(中小企業への8週間分の支払いだけで70兆円以上かかっている)。

 このようなことから経済再開が急がれているが、手厚い補償をつづけられるうちに雇用(経済)は以前の何割ぐらいまで回復するのであろうか。

 経済回復のスピードについては楽観的な見方と悲観的な見方の両方がある。

 米経済回復の様子をひきつづき注意してみていきたい。


ドイツ、時短勤務が急増

2020年05月02日 | 経済

 ドイツで、新型コロナウイルスの影響で時短勤務する人が労働者全体の1/4近くにまで急増している。

 前のブログで書いたように、解雇の多いアメリカ月30-40万円以上の失業手当をだして失業した人の生活を支えようとしている。

 一方、なるべく解雇を増やさないようにしているのがヨーロッパ諸国。

 たとえばドイツは仕事が減ったとき、人でなく労働時間を減らして失業を避けようとしているワークシェアリング)。

 このためドイツでは、景気悪化で労働時間が減った場合、それによって減った賃金の60%(扶養家族がいる場合は67%)を政府が支給する仕組み(Kurzarbeit)がつくられている。失業保険の一種である。

 この仕組みをつかってドイツでいま時短勤務をする人は約1000万人。全労働者が約4.5千万人(日本は約5.7千万人)なので労働者の1/4近くが時短勤務していることになる。

 この仕組みによりドイツの4月の失業率は5.8%におさえられている(3月からわずか0.7%の上昇)。一方、アメリカでは4月の失業率は15%近くになるとみられている(3月から10%近く上昇)。

 私は、雇用調整助成金(休業して労働者に通常の6割以上の給与を支給した場合、1日8330円を上限に支給額の9割を国が補填する)に加えてこの仕組みを日本にも導入すべきと思っているが、労使ともにそのような機運はまったくない。

 私は20年ぐらい前、岡山県で厚労省が主催する政労使会議?(いまはない)に学識経験者として出たことがある。

 アジア通貨危機の直後で雇用が大きな問題になっていたときである。

 私はドイツのワークシェアリングのしくみを説明して、こうした方法で雇用を守る方法もあると発言したが、労働者代表の方から「賃金が減らされる」と猛反発されたことをいまでもよく覚えている。

 日本はバブル崩壊以降、欧米に追いつく過程で雇用が増え続ける発展型社会から、景気変動で雇用が大きな増減を繰り返す成熟型社会に変化した。

 ほんらいであれば、それに合わせて雇用維持・生活保障のしくみ(セーフティーネット)も変えていかなければならないが、それがなかなかうまくいっていない。

 緊急事態宣言がさらに1か月ほど延長されるようだが、これからの雇用のゆくえが少し気がかりである。

 

2020年5月9日追記

 アメリカの4月の失業率は14.7%となり戦後最高を記録した。


米の失業保険は月30-40万円

2020年04月30日 | 経済

 アメリカ失業保険を申請する人が歴史的に例をみない水準にふえているが、その理由のひとつに失業保険が月30万円以上もらえるというのがある。

 アメリカの失業保険ごとに異なっているが、失業前の給与の4-6割程度が支給される仕組みになっている(日本は収入により4-8割)。

 ただし州ごとに、月10万円(ミシシッピ州)から月36万円(マサチューセッツ州)という支給上限がきめられている(日本は年齢により異なるが最高で20万円程度)。

 ところが新型コロナウイルス対策のいっかんとして現在、これに週600ドル(6.6万円:1ドル=110円)が4か月間一律加算されることになっている。にすると25万円の加算である。

 この結果、アメリカでは失業保険給付が月30-40万円以上という日本からすると驚くような水準になっている。

 もとの仕事よりたくさんの手当をもらっている人も少なくない。

 このほかアメリカでは、大人一人1200ドル(13万円)の支給もすでに終わっている。

 日本でアメリカはレッセフェール(自由放任主義)で弱者支援が少ないとよく言われるが、日本では考えられないような手厚い水準である。

 ちなみに、アメリカの失業保険の支給期間は基本的に26週(半年)だが、失業が増えると52週(1年)に延長される。

 リーマンショック後は、これが99週間(約2年)まで延長された(日本は勤続年数などによるが最高330日)。

 雇用が短期間で回復にむかえば、こうした手厚い手当は個人消費の落ち込みを軽減させるのに大きな力になるかもしれない。


米石油採掘企業が破綻

2020年04月28日 | 経済

 2020年4月26日(日)、新型コロナウイルスによる経済悪化の影響をうけ、アメリカの海洋石油採掘企業ダイヤモンド・オフショア・ドリリングが日本の会社更生法にそうとうする破産法第11章(chapter 11)を申請した。

 負債総額26億ドル(2800億円:1ドル=110円)。

 フィナンシャルタイムズによれば、同社は10日前に5億ドル(550億円)の社債の利子を支払えず、ムーディーズは4月16日に同社の格づけを21段階の下から4番目に引き下げたところだった。

 現在、各国中銀が社債やCP(コマーシャルペーパー)の買い入れをはじめたり、その金額を増やしているが、対象となるのは基本的に投資適格の企業。

 Fed(米連銀)は、最近になって投資不適格に格下げされた企業の社債も買い入れ対象にしているが、現在もっとも資金を必要としている長く格づけの下位に沈んでいた企業に救済が拡大される見込みはいまのところゼロ。政府が補填できないほど大きな損失を中銀がかぶる可能性が高いためである(一部で、減産と引きかえに資金援助との報道もあったが実現は難しそう)。

 原油価格が低迷するなか、このような動きがどこまで広がるか注意してみていきたい。


米、中小企業に8週間分の給与を無償提供

2020年04月20日 | 経済

 アメリカでは新型コロナウイルスによる経済悪化から労働者と中小企業をまもるため、労働者を8週間解雇せず賃金を支払い続けた場合、その賃金総額プラスアルファを連邦政府が中小企業に無償提供するという、おどろくほど気前のいい仕組みがおこなわれている。

 それは給与保護プログラム(paycheck protection program)と呼ばれるもので、2020年3月末に議会で成立した2.2兆ドル(240兆円)の経済対策のうちに含まれている。

 仕組みはつぎのようになっている。 

<対象企業>

 労働者(+個人請負も含む)が500人以下の中小企業および非営利団体(NPO)

<金額>

 8週間分の賃金および賃料・光熱費(賃料・光熱費は全体の25%以下)。

 上限1千万ドル(11億円:1ドル=110円)。

<無償条件>

 企業がローンを受け取ってから8週間、以前からいる労働者をそのままフルタイムで雇用し続けた場合、返済は必要なくなる。

 労働時間を短縮した場合は、一部について返済の義務がしょうじる。

 この仕組みのため3490億ドル(38兆円)の予算がくまれたが、あっというまに資金がなくなった。

 このため、現在、3000億ドル(33兆円)ほどの資金を追加することが議会で検討されており、フィナンシャルタイムズ(2020/4/20)は合意が近いと報じている。

 

2020/4/22追記

 2020年4月21日(火)、米上院は給与保護プログラムに3200億ドル(35兆円)追加する予算を承認した

このほか、病院への補助に750億ドル(8兆円)、検査の拡充に250億ドル(2.7兆円)の追加予算も承認された。