大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

フェラーリの独立

2016年01月24日 | 日記

 2016年1月3日、FCA(フィアットクライスラー)とフェラーリの両社は、フェラーリの独立が完了したと発表した。

 2015年、FCAは債務削減などを目的に子会社フェラーリを分離することを決定。2015年10月にフェラーリはNY証券取引所でIPO(新規株式公開)をおこなった。このIPOに際し、FCAは持ち株10%相当を売却し10億ドル(1200億円:1ドル=120円)の資金を調達することに成功した。

 フェラーリの財務報告書(Form 6-K)によれば、2015年第1四半期~第3四半期の売上は21億ユーロ(2700億円:1ユーロ=130円)、純利益は2.4億ユーロ(300億円)。売上に対する利益率は10%を超える。

 この独立を主導したのはFCAのマルキオンネCEO(フェラーリの会長も務める)である。マルキオンネCEOは2018年にリタイアすると公言しているが、これまで数多くの功績を残している。

 なかでもとくに大きな功績は、

1)経営不振に陥っていた2005年にGMとの提携解消を認め、GMから違約金20億ドル(2200億円:1ドル=110円)を得て経営再建を軌道に乗せた。

2)リーマンショック後、経営破たんしたクライスラーに資本参加。2014年にはクライスラーを完全子会社化したうえで、同社とフィアットを傘下にもつFCAを設立してNY証券取引所に上場した。

 といったことがあげられる。

 これほどドラスティックな改革、投資をおこなえる人物なので、きっと創業者一族なのだろうと思っていたが、最近読んだFT紙の記事でそれが間違いであることに気がついた。

 マルキオンネ氏は、1952年、南部イタリア生まれ。14歳の時に親戚を頼って両親とともにカナダのトロントに移民。その後、弁護士、公認会計士の資格を取得。いくつかの会社をへて2003年にフィアットの取締役に就任。翌2004年、ジャンニ・アニェッリ会長が死去した際、当時28歳だった後継者ジョン・エルカーンにこわれてフィアットCEOに就任し現在にいたる。

 FT紙では大口をたたく人物(big mouth)と評されているが、ヨーロッパの大企業に過ぎなかったフィアットを短期間で世界的な自動車メーカーに押し上げた功績ははかりしれない。マルキオンネ氏引退後のFCAが少し気がかりである。