黒田日銀総裁によるマイナス金利導入発表後、世界同時株安が加速している。
ところで気になるのが2015年9月末時点で135兆円の年金資産を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)だ。
GPIFは、安倍政権が誕生する直前の2012年9月末には資産(108兆円)の約23%を国内外の株で運用していたが、それが2015年9月末には43%と2倍近くに増えている。その結果、株価が下落すると以前より損失が膨らみやすくなっている。
ちなみにチャイナショック(中国人民銀行による突然の4%の元の切り下げとそれに続く中国本土の株暴落に端を発した世界同時株安)があった2015年7-9月の運用実績は7.8兆円の大幅赤字であった。
現在はチャイナショック時以上に株安が進行している。また急激な円高によって、海外株(21.6%)や海外債権(13.6%)を円換算したときの評価損が膨らんでいる(債券価格は上昇が期待できるが為替差損のほうがはるかに大きい)。
2015年10-12月期はチャイナショック後の株価回復で4.7兆円の運用益を計上したが、このまま株価が戻らなければ2016年1-3月期の損失はチャイナショック時以上のものになると思われる(2016年3月2日修正)。
私は、年金資金が株の運用をすること自体は悪いことだとは思わないが、GPIFが、株が上昇局面(高い水準)にあるときに株の運用比率を大幅に引き上げ、短期間に大量の株の買い入れをおこなったことは、はたして年金受給者のためになることだったかと疑問に思う。株の運用比率の引き上げのスピードとタイミングに問題があったのではないかということだ。将来の年金受給者のひとりとして、ここに書いた心配が杞憂でおわることを願っているのだが。
★ 2016年8月27日追記
GPIFは2016年8月26日、2016年4-6月期の運用成績が5兆2342億円の赤字になったことを明らかにした(GPIFの公表資料)。内訳は、国内株が2兆2574円、国外株が2兆4107億円、国外債権が1兆5193億円の赤字、国内債権が9383億円の黒字。
また日経新聞(2016/8/26)によれば、2014年10月に株の資産運用比率を倍増させて以降の累積でも1兆962億円の赤字と、初めて赤字に転じた。
なおGPIFの公開資料によれば、2016年6月末の日経225は1万5575.92円、TOPIX配当なしは1245.82。
★ 2016年9月10日 追記
国際的にみても、GPIFの株への配分比率は高い。
2015年に出されたIMFのワーキングペーパーでは、各国年金の国内外株への配分比率は次のように紹介されている(今はこれより上がっているかもしれない)。
デンマーク 23%
フランス 29%
ドイツ 11%
オランダ 23%
スイス 31%
イギリス 39%
オーストラリア 52%