大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

トランプ大統領、鉄鋼の輸入に25%の関税: 日本への影響は中国より大きい

2018年03月03日 | 日記

 2018年3月1日(木)、トランプ大統領は、来週に鉄鋼の輸入に25%、アルミの輸入に10%の関税を課す大統領令に署名すると宣言した。

 日本の一部では、これはとくに中国をターゲットにしたものだという意見がでているが、おそらくそうではない。鉄鋼もアルミも輸入にしめる中国の割合はわずかだからである。アメリカへの輸出超過国がひろくターゲットになっているとみるべきだろう。

 米国勢調査局によれば、2017年のアメリカの鉄鋼製品(steel products)の輸入額は291億ドル(3.2兆円:1ドル=110円)。

 輸入が多い国順にならべると、

 1位 カナダ 17.5%

 2位 韓国 9.6%

 3位 メキシコ 8.6%

 4位 ブラジル 8.4%

 5位 ドイツ 6.3% (EU全体だと31.5%を占める)

 6位 日本 5.7%

 対して、中国の比率は3.4%にとどまっている。 

 アルミについても輸入が多いのは、カナダ、ロシア、UAEとなっている。

 政権内には関税そのものに反対、同盟国への関税には反対などいろいろな意見があるようだが、ニューヨーク・タイムズ(2018/3/2)によればトランプ大統領は木曜日におこなわれた企業経営者との会合において、ひとつの国に例外を認めると収拾がつかなくなるのですべての国を同じに扱うと発言している。

 税制改革を成し遂げたトランプ大統領の次の政策課題は、公約にかかげていた保護貿易の実行ということになるのであろう。

 NAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉とともに今後のなりゆきをみまもりたい。

2018/3/4追記

 EUは、米が鉄鋼・アルミの関税を上げた場合、対抗して米製品の関税を上げると発表。

 これに対し、3月3日(金)にトランプ大統領は、もしそうなれば欧州からの自動車輸入に高関税を課すと発言した。

 実際には、各国が報復的に高関税をかけあうような事態は起きないと思うが、この問題がどのように決着するのか引き続きみていきたい。

参考

トランプ氏は過激な公約を放棄しない(2016/11/11)

 


米長期金利はどこまで上昇するのか?

2018年03月01日 | 日記

 米国の長期(10年)国債利回りは1980年代前半(レーガン大統領時代)にピークをつけ、その後、一貫して低下してきた(価格は逆に一貫して上昇してきた)。それをあらわしたのが、下の図である。

 しかし現在、米長期国債の利回りは上昇に転じている。

 はたして米長期国債の利回りはこの先4%、5%とどんどん上昇していくような長期上昇のトレンドに入ったのであろうか?

 一部の投資家は、そのような立場で大きな賭けにでている。ウォール・ストリート・ジャーナル(2018/2/26)は、米長期国債についてのショート(価格低下=利回り上昇で利益がでる取引)が大きく積みあがっていると報じている。

 一方、CNBC(2018/2/23)が伝えるところによると、世界最大の債権ファンド・ピムコを長年率い債券王の異名をもつビル・グロス氏は、おだやかな金利上昇(マイルド・ベア)を予想している。

 グロス氏は、債券投資家に対し、パニックになる必要はない、ただしこれからは利回り上昇が債券価格低下で相殺されるので債権投資は0-1%程度の利益しかうまないだろうというようなことを述べている。

 このためグロス氏は現在、わずかなショート・ポジションを除いて米国債への投資をおこなっていないようである。

 これからアメリカの長期金利がどう推移するか私にはとても予想がつかないが(アメリカでは2018年末には3%を超えているとの予想が多いようであるが)、その推移を注意してみていきたい。

追記

 上記ウォール・ストリート・ジャーナルは、一定の方向(利回り上昇)にあまりにポジションが傾きすぎると、逆の動きになったとき一気にポジションが巻き戻され市場は不安定になると指摘している。