昨日、行き場をなくしたがん患者を扱ったNHKの番組『さまよえる がん患者』を観ながら、怒りがおさまりませんでした。2年前「がん対策基本法」を成立させ、早期発見から治療・療養・看取りまで「切れ目のない医療」を築くなどと、思いやり溢れる理念を掲げているにもかかわらず、実情はあまりにもお粗末。
国が進める医療費削減政策や、医療従事者の人員規定などが病院経営を縛りつけ、手術を終えたがん患者は早期退院を迫られたり、長期療養されると病院が赤字になってしまうので、治る見込みがないと判断された患者は(「もう打つ手はありません」などと苦悩している患者に簡単に告げてしまうし)入院さえさせてもらえなかったり、信じられないような現状が露呈されていました。
入院させてもらえないばかりに、抗がん剤の点滴をつけたまま1時間半の道のりを自分で車を運転して通院している高齢のがん患者の姿に、日本はこんなにも弱者に冷たい国だったのだろうかと哀しくなってしまいました。ホント「みぞゆう」の事態だと思うわ、麻生さん。
過日、ベストセラーとなった『国家の品格』の著者である藤原正彦氏の講演会を取材したのですが、氏は改革に次ぐ改革で、逆に日本の国柄は壊されていると嘆いていました。新渡戸稲造が明治の頃、最も重要だといった「惻隠(そくいん)の情」、つまり弱者、敗者への涙、同情、共感ですね、それを日本人は取り戻さなくてはいけないと語っていました。NHKの番組を見て、まったくその通りだと改めて思いましたね。