クリは食べることを拒否しているわけではないのだけど、口にするものはすべておやつの類ばかりで、栄養価も熱量も不足している。あんなに毎日のように食べていたローストビーフも、今では買っても私のおなかに納まることになってしまう。焼き魚類をあげても顔をそむけ、「欲しいものはこれじゃない」というように少し哀しい顔をする。
体力が落ち、距離を歩くことができなくなった。けれども、散歩には行きたいという素振りを見せる。抱いて行ったり、カートに乗せて行ったりすれば、途端に歩けなくなってしまうだろうから、悩ましいところだ。
とりあえず車をエントランス先に回してから、クリを部屋から出して乗せ、たとえ長く歩かなくても、公園に行って土や風の匂いを感じてもらい、ほかの犬と挨拶させたりしている。
栄養補給に関しては、酒井先生に相談のうえ、高栄養、易消化のバランスフードを必要とする犬猫用のハイカロリー消化態経腸栄養食「チューブダイエット【ライト】」を与えることにして、いつも特別療法食を買っているサイトに注文した。
20g入り20袋で4,800円くらい
高栄養療法食の缶詰でも食べてくれれば楽なのだけど、缶詰もイヤイヤするのだから仕方ない。
「チューブダイエット」は代謝エネルギーが510kcal/100gとハイカロリーのパウダーで、粗たん白質が43.0%以上と高たん白で、16%濃度に溶解した場合、体液とほぼ等張となり、下痢も起こしにくいらしい。ビタミン・ミネラル類のほか、タウリン、オメガ脂肪酸も配合されているバランスフードである。
動物病院でも使うという栄養補給食で、経口給与のほか、経管給与、つまり胃に直接チューブで入れるとか、鼻からチューブを入れて食道に流すといった与え方もするようだ。
昨日届いたので、早速クリにあげてみた。クリにはペースト状にして、注入器かシリンジで口に入れてやっている。今は口腔内に傷をつけないように、シリコンの乳首が付属した注入器が売っていて、安全性も高く、使い勝手もよくて驚いた。
1袋20gのパウダーに対して1~2の割合の微温湯で溶かして与えるのだけど、クリの体重からすると全量給与の場合、1日150gくらいはあげなくてはならない。日数をかけて少しずつ増やしていくつもりだが、腫瘍で胃が圧迫されているクリは一度にたくさん与えると吐いてしまうので、1日の給与も何度かに分けてやらなければならない。
乳飲み子がうちにいるという感じ。いっぱいミルクを飲んで、ぐんぐん成長していく乳飲み子なら希望が持てるが、うちの乳飲み子はいのちのともし火がはかなく揺れている弱々しい乳飲み子なので、なんとも切ない。