まだ本格的なトイレ・トレーニングはさせていないけれど、その前段階として毎日午前・午後に分けて、仕事部屋に置いてあるクレートで過ごす時間を数時間設けるようにしている。
クレート内でも回ろうと思えば回れるけれど静かにしている。私が出かけるときはたいてい音楽やラジオをかけていくのだが、1~2時間留守にしても遠吠えも鳴き声も立てていないようだ。どうせどこかで眠っているのなら、クレート内のほうが安心だ。
このサイズのクレートはブナとクリが使っていたもの。もう1台ある。トチが使っていたものはこれより一回り大きい。それもまだ処分できずに残してある。取っておいてよかったな。
夜、寝場所にしているソファのある部屋の入り口に立てていたゲートを外しておくことが多くなった。まだ左旋回はするもののトボトボと気をつけながら歩き回り、知らぬ間に仕事部屋でパソコンに向かっている私の足元に来ていたりする。
鼻先で手を叩きながら進むべき方向へ誘導すると2~3mは上手に歩く。夕方のエサのあと、同じ室内の床に張り付けたトイレシーツに連れて行くと、くるくる回りながら「なんとか及第」と言えるような排泄をしたのだから、よしとしよう。
うちに来てちょうど2週間。家庭犬としての暮らし方を何ひとつ教えられなかった7年間のことを思えば、わずか2週間のうちに何でも覚えられるわけがないもの。安心して、ゆっくりゆっくりここの生活に慣れてくれればいい。
妹のパートナーOクンが編んでくれたスヌーブをつけてお食事。編み物は、手先の器用な妹夫婦の趣味のひとつ。蒸し暑い季節なのでアクリル毛糸とはいえ、さすがに少し暑そうかなあ。
食後、あちこち歩き回っていたが、私の足元にたどり着き、ブナのオシッコ臭がまだわずかに残っている仕事部屋の絨毯のうえで寝そべっている。
毎日3回カヤの目に眼圧を下げる薬を点眼している。眼圧が下がっているかどうかは次の通院で眼圧測定することになっているが、最初の測定時に眼圧が低かったほうの右目が腫れているような気がする。
カヤの失明は、角膜に傷かついたあとブドウ膜炎などの眼疾患を発症したまま放置されていた結果ではないかと思われる。シェルターにいる日々が続いていたら、カヤは眼圧測定もされず眼圧が上がったままの目を抱え、ずっと頭の鈍痛や目の痛みを抱えていなければならなかったのだろう。
まだ緑内障には至っていないと言われたけれど、このまま眼房水が過剰に溜まる状態が続き眼圧が下がらなければ、いつまでもカヤは頭の鈍痛や目の痛みから解放されない。カヤを楽にしてあげるためには眼房水を作りだす毛様体を壊してしまう手術をするか、眼球摘出、あるいは義眼挿入の手術を受けることが必要だそうだ。
毛様体を壊す手術と眼球摘出の場合は、痛みから解放されるが目が萎縮して凹んでしまうそうだ。思わずクリの右目を思い出した。
クリは目が見えたにもかかわらず眼球が横に引っ張られていってしまい、さぞ不快だったことだろう。ああ、クリ……。カヤの場合、見た目にもベストなのは「義眼にすることでしょう」と先生はおっしゃった。
犬の義眼手術は角膜と強膜を残して、いわゆる黒目の部分を取り除き、シリコン製の義眼(シリコンボール)を挿入するという。
問題は、義眼挿入は酒井先生のところではできず、別の眼下専門医を紹介してもらって通院しなければいけないということ。そうなると酒井先生が行う避妊手術、乳腺腫瘍切除手術に加えて2度の全身麻酔が必要になる。
カヤも若くないので体力的なことも心配だけど、両目の義眼手術はとても10万円台では済まないようで、先生は私の高額出費も心配してくれていた。避妊・乳腺腫瘍切除費用と義眼挿入手術代、ううむ、算出したくない……。
酒井先生のところで1回の全身麻酔で済ませる方法は、避妊と乳腺腫瘍切除手術に併せて毛様体に手を加える手術を同時に行ってしまう方法だ。今のところその方向で考えているのだが、カヤが痛みから解放されるなら見た目は気にしないけれど、どうなのかなあ。
私の悩みを尻目にソファでスヤスヤ。随分のびのびと
過ごせるようになったと思う