TULIP DIARY

届くといいな やさしい風に乗って

102歳、一人暮らし。

2024年01月26日 | 読書日記

102歳、一人暮らし。 石井哲代 中国新聞社 著 中国新聞社

図書館で予約して借りて読んだ本です。あっという間に一気に読み終えました。だいぶん前に新聞に掲載されていたので読んでみたかった本でした。この本は、広島県の尾道で暮らしておられる石井哲代さんの100歳から102歳(この本が出版された2023年1月当時の年齢)までの毎日の一人暮らしの日常と生き方が紹介されていた本です。100歳を超えてもお元気な姿がテレビなどで紹介されてから話題になっている哲代さんの常日頃心掛けておられる心の向き合い方や暮らし方を知ると読んでいるだけでも元気のおすそ分けをいただいけたほどその前向きな生き方には本当に頭が下がります。これからどんどん歳を重ねて行く上で役立つこともいろいろと教えていただいたように思います。

この本には哲代さんの写真がたくさん掲載されているのですが、どの写真も笑顔で優しそうで楽しそうな写真がたくさん掲載されていて、その瞬間瞬間を楽しんで毎日を送っておられるお姿が生き生きとされててまたとってもチャーミングだなあと思いました。子供がおられないということですが、姪ごさんやご近所の方々にサポートされお互い見守られながらも一人暮らしをエンジョイされているそのお姿は見習うことがたくさんあり勉強になりました。

よく笑い、よく食べ、よく動き、よくしゃべることを心掛けながら、ピアノを弾き、大きな声で歌い、畑仕事を続け、脳トレに励む哲代さんの座右の銘は「さびない鍬でありたい」。心と体がさびないように常に気を付けながら暮らしておられる「健康で長生きするための八つの習慣」や「生き方が上手になる五つの心得」はステキだなあと思いました。

「生き方が上手になる五つの心得」

1 物事は表裏一体、良いほうに考える 2 喜びの表現は大きく 3 人をよく見て知ろうとする 4 マイナス感情 笑いに変換 5 手本になる先輩を見つける

お元気でもっともっと長生きしていただきたいなあと思います。

 

 

 

 

 

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栄光のバックフォーム

2023年11月13日 | 読書日記

栄光のバックフォーム 中井由梨子 著 幻冬舎

『羽鳥慎一モーニングショー』で今年7月に亡くなられた元阪神タイガースの選手だった横田慎太郎さんの特集が取り上げられていたのを見ました。この番組では横田さんのお母さんも出演されていて、横田さんのお話とこの本の紹介もされていたので読んでみたいと思って半日で読んだ本でした。

この本は、横田さんがどのように野球に興味を持ち、少年時代から高校時代に掛けて甲子園を目指して野球を続けて来られた頃の話、ドラフトで2位に阪神に指名されたときの喜びの話、阪神の選手として頑張っておられたときの話、闘病されていたときの話、引退試合のときの8回表で守りに着いてバックフォームされたときの話、引退後各地を回って講演されてきた話、最後にホスピスでご家族の皆さんと最期を迎えられたときの話がお母さんの視点でお母さんの語り口で語られていた本でした。いつも傍に寄り添って愛する息子さんを見守って来られたお母さんの掛け替えのない愛とお父さん、お姉さんの家族の皆さんのとの絆がどれだけ固いものだったかが語られていました。そんな家族の愛と横田さんを応援され続けて来られた球団関係の皆さん、チームメートの選手の皆さん、ファンの皆さんに支えられながら、闘病して来られた横田さんが病気に負けまいと格闘されて来られたその前向きな努力とその道のりは壮絶なものだったことがよく伝わってきました。病状が大変だったときにも講演に出向き、多くの方々にエールを送って来られたその行動力の素晴らしさにも圧倒されました。絶えず自らの目標を設けて頑張って来られた横田さんの姿は横田さんの登場曲で何度も病室でも聴かれていた大好きなゆずの『栄光の架け橋』を多くの人々に繋げ続けるような尊い行いだったと思いました。また、引退試合のときのバックフォームは奇跡というより常日頃の横田さんの努力の賜物だったということをこの本を読んで再認識しました。亡くなられる前の5月に阪神の優勝が見たいと普段言われたことがなかったことをぽつりと言われていたことが阪神の皆さんやファンの皆さんに伝わっていたことが阪神の優勝に繋がった一因を作っていたのだろうなあとも思いました。横田さんの24番のユニフォームが阪神優勝時と日本シリーズの制覇時の二度に渡る胴上げの宙に舞っていたのをきっと喜んでおられることだろうと想像しました。この本は野球や阪神に興味がない方にも読んでいただきたい本です。頑張って来られた元野球選手の方の全力疾走で掛け抜けられて来られたその生き方が多くの方々にきっといろいろなものを与えてくれるような本だと思います。

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白髪の国のアリス

2023年09月24日 | 読書日記

白髪の国のアリス 田村セツコ 著 集英社

だいぶん前に新聞の書評を見て読んでみたいなあと思って図書館で予約しておいた本です。予約してから半年以上経ってから順番が来て先日読みました。

子供の頃、雑誌でよく見掛けた田村セツコさんのかわいい絵はよく覚えていました。奥付を見たら1938年のお生まれと書かれていて、母よりひとつ年下の方だったんだなあと思いました。

この本は、著者の紙とエンピツがあれば幸せという自由でおおらかな生き方や元気の源とされている健康法について書かれていた本で、いくつになっても明るく幸せに暮らして行くお手本がたくさん散りばめられていました。読んでいただけでいつのまにか勇気付けられて元気のひとかけらをいただけたような気分になったのでまさしく魔法がいっぱい詰まっていたような本でした。

この本の中で著者自身がかわいい白髪のアリスとして描かれていました。ポエムやエッセイ、魔法練習帳がかわいいイラストと一緒に書かれていました。

ポエムの章で印象に残った言葉を挙げてみました。

「人生はすてるところのないごちそう。だからなんでもスキキライなくよ~く、かんで食べるのですよと言われてきました。それで今味わっているところです!!」

「困ったときはノンシャランこんがらったらノンシャランどこ吹く風ぞノンシャラン知らんぷりでもノンシャラン」

「すべてのおばあさんはまちがいなく魔法使いです。豊富な経験こそが魔法そのもの。そこに気づかないとしたらじつに、勿体ないです。」

これらの言葉をかみしめながら読んでいると少しずつ魔法にかかったみたいに元気になってきたので不思議でした。

エッセイの章で印象に残った箇所を挙げてみました。

「さすが」について書かれていた箇所では、年老いた親が何か思い出話や気になる考えをつぶやいたときにはしっかりしてよとか言わずに耳元で「さすが」とつぶやくほうがずっと効き目がある魔法のお薬ですと書かれていました。長い間、ご自身のお母さんの介護をされて来られた方だそうで、我が家では年老いた父が私にいろいろ話をしますが、そのときの受け答えに困るときが多々あります。この「さすが」という言葉の発想転換はステキだなあと思いました。

「紙とエンピツ健康法」について書かれていた箇所ではいつもメモ帳を持ち歩いておられて気になった言葉をメモされてそのメモを部屋の中に貼り話し相手がいないときなどにそのメモに向かって話掛けておられると書かれていました。いろいろな興味や関心を抱くことはいくつになっても大事だということだと思いました。

「ある日、バスの中で」について書かれていた箇所では、子どもの頃にバスの中でおばあさんがかばんの中で薄切りハムとサラダ菜を丁寧に巻いておやつを食べておられてさすがと眺め入っておられたことが紹介されていて、おばあさんは生まれつきおばあさんなのではなく、お茶目な少女、まじめな女学生、キャリマウーマン、お母さんなどいろいろな女性たちが棲んでいて、しかもそれらは現役で体に入っていて、この貴重な体験を上手に使いこなしたならほぼ魔法使いになれるのではないのでしょうかと提言されてました。バスの中のおばあさんのように実力を発揮しつつ、時にはボケたふりっをしてとぼけながらきびしい世の中を向こうに回しつつ楽しく暮らしていけたらと思っているところですと締めくくられていました。

エッセイを読んで行くと、著者が歩んで来られた道のりで体験されたいろいろな出来事を上手に使いこなしている魔法使いのアリスの姿が浮かんできましたよ。

「アリスの魔法練習帳」では上手い下手は関係なく楽しんで絵日記を書いたり、しあわせを呼ぶ言葉100やひとりごとを読者自身が書いてみようと勧められていました。

自分も書いてみようと思いましたが、これだけたくさん書くことができませんでした。

誰でも年を重ねて生きて行くのですが、年を重ねてもいつも楽しく暮らして行く心の持ち方や行動のしかたのヒントを示唆してきれていたような気がします。

 

 

 

 

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みんな、本当はおひとりさま

2023年03月19日 | 読書日記

『みんな、本当はおひとりさま』 久本雅美 著 幻冬舎

話言葉で肩肘張らずに楽に読めた久本雅美さんのエッセイ本。新聞の書評を読み図書館で予約して借りて読んだ本です。仕事、恋愛、家族、友達のことなどについて久本さんの日頃の人との向き合い方や物事に対する姿勢や考え方がよく伝わってきたエッセイでした。久本さんが豪快で何事もあまり気にされないようなイメージをテレビを通して勝手に抱いていましたが、この本を読むと、そのイメージとは違って、本当は真面目で誠実な方だということがよくわかりました。誠実であることを常に大切にされていてよく気を遣われる方なのだなあと思いました。本のタイトルにある「おひとりさま」のことを書いておられる本の中では上野千鶴子さんの本を一番最初に思い浮かべるのですが、上野さんの著書で言及されている「おひとりさま」に係わるシビアな面のこととほぼ同じようなことを書かれていても明るく希望が持てるような書き方で表現されていたので共感できた箇所がたくさんありました。また、久本さんが尊敬されている黒柳徹子さんの「おひとりさま」の格好良い生き方はお手本になる生き方だと紹介されていました。気付いたら一人だったけれど、後悔もしていないし、不幸せでもないし、既婚者でも独身でも人生を切り拓いていくのは自分しかできないし、誠実に生き抜くことをモットーに生涯現役を目指しながら明るく潔く生き抜こうとされていると語られていて元気が出そうなメッセージも伴っていたように思った本でした。

この本の中で印象に残った箇所が二つありました。ひとつは、久本さんが座右の銘のようにされている「桜梅桃李」(おうばいとうき)という言葉について書かれていた箇所でした。26歳のときに友達に教えてもらわれた言葉だったそうで、今でもこの言葉が心の支えになっておられると書かれてました。「桃は桜にはなれないし、李も梅にはなれない。花を咲かせる時季も違えば、咲かせる花も違う。だから、自分らしい花を咲かせていけばいい。それぞれの個性を大切にすること。」という意味だそうです。「人と比べて、落ち込んでいるなら、昨日の自分と今日の自分を比較したほうが前向き。」と考えることに感動されたと書かれてました。この言葉は初めて知りました。自らの人生を自分らしく、自らが幸せと思える生き方を明るく生き抜くことが大切なんだろうなあと思いました。

また、ご家族のことを書かれていた箇所でご両親が亡くなられても子どもの生き方をずっと見守ってくれていると信じておられてきちんと生きることが最高の親孝行と語っておられたことが印象に残りました。大阪城公園を散歩しているときに、「頑張って生きてるよ。」と亡き母に時々一人で語りながら自転車で走っているときが多々あります。ほぼ同じようなことを考えておられた方がおられたということに共感できましたし、勇気付けられました。

 

 

 

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花の本を買って帰る

2023年03月19日 | 読書日記

3月19日、近鉄上本町店の11階にあった書店に寄って、花の本を3冊買って帰りました。もう本はなるべく買わないでおこうとしていたのですが、この3冊の本を眺めているだけでもなんだか幸せな気分に浸れるなあと思ったので3冊も買うことにしました。その3冊の本は『にっぽんの花地図』、『美しい日本へ 花絶景の旅』、『日帰り絶景ウォーキング』です。どれも花旅の本です。この中でも一番気に入っているのは『美しい日本へ 花絶景の旅』です。掲載されている花の絶景風景の写真がピカイチきれいだったですし、絶好のポイントで撮影されていた絶景写真が盛りだくさんだったからです。こんな写真を撮ってみたいなあと思う写真ばかり掲載されています。今までに行ったことがある場所も何箇所か掲載されていますし、訪れてみたけれど、お目当ての花々が咲いていなかった場所の美しい絶景をこの本で見たらまたいつか行ってみたいなあとか歩けるうちに行ってみたいなあとか元気をたくさんもらっています。死ぬまでに一度は見たい絶景という本もありますが、生きているうちに一度は見てみたいなあと誘惑に駆られる場所もたくさん掲載されていました。この3冊と同じような花旅の本はすでに何冊か買っているので自宅の本棚に一緒に並べて花旅をしたいときに取り出して楽しむ本が増えました。

 

 

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明日、野球やめます

2023年01月15日 | 読書日記

明日、野球やめます 鳥谷敬 著 集英社

2003年から2019年までの16年間を阪神タイガース、2020年から2021年までの2年間を千葉ロッテマリーンズに在籍し、18年間プロ野球で活躍された鳥谷選手の引退後初の著書。プロ野球選手時代の鳥谷選手はクールであまりしゃべらないというイメージでしたが、引退後、プロ野球の解説やいろいろな番組に出演されて饒舌に語っておられたのを見てそのイメージのギャップはなぜなんだろうと思ったのがきっかけで書店で見掛けて読んでみようと思い図書館で予約してやっと順番が回ってきて読んだ本でした。

この本では18年間のプロ野球人生の軌跡、プロ野球選手をやめない理由とやめる理由、家族の話、人生を歩んで行く上での考え方や行動のしかた、これからはじめたいことなどについて飾らない言葉で素直に語られていました。

プロ野球選手時代、多くを語らぬようにされてきたのは野球に専念するための一種の対策であったようです。愛想を振り翳さない不愛想な鉄仮面をきちっと演じ切っておられたので、一見あまりしゃべらないクールな人なのかなと勝手なイメージが植え付けられたのだろうと思いました。そのクールに見えていた姿は野球人生の多くをスタメンで遊撃手として活躍され続けて来られるために考え尽くされた対策のひとつだったことがこの本を読んだらよく伝わってきました。引退後にテレビなどで映る鳥谷さんの姿や話し方は野球に集中するための不愛想な鉄仮面がもう必要でなくなったので、流暢に話をされたり素に近い普段の姿をお見せになられているのでしょうと思いましたし、そもそもそんなお姿が本来のお姿なのだろうと想像できました。

この本の中で印象に残ったことがいくつかありました。入団してからやめるまで、毎日試合に出る前の準備の仕方やトレーニングの仕方や遊撃手としての守備のしかたなどいろいろな準備を大切にし続けて毎日同じことを積み重ねて来られたことが唯一誇れるものだと言及されていたこと、悩むことがほとんどなく怒りも無駄と考えておられたこと、すべてのことに前向きに物事を捉えておられることでした。自ら選び自ら考え自ら実践して自ら責任を持って物事を進めて行くことはなかなかできないことですがそれを実践されている潔よさを感じました。常に確固としたポジティブな信念を持ち続けておられたのもよく伝わってきました。また、野球が好きで好きでたまらないという方ではなくサッカーが好きだったときがあったことや高校に入るときに野球を止めてサッカーをしようかと思ったときにお父さんが野球だけは続けて欲しいと言われたことが野球を続けるきっかけになっておられたこと、阪神のユニフォームを脱がないといけなくなったときに奥さんやお子さんたちからどんな形でもいいから野球に携わって欲しいと言われたことがそのまま引退されずにもう一勝負したいと思われた決め手になっていたことなどが特に印象に残りました。ロッテに移籍されてから阪神タイガースに在籍されていたときに恵まれていたことを改めて知られたこと、阪神ファンの有り難さにも言及されていたのも印象に残りました。

この本で語られていた内容は野球というひとつのことに一生懸命打ち込んで来られた鳥谷さんの経験をもとにいろいろな立場に置かれたときにどう考え対処できるかというヒントを教えてくれている本だった気がします。

 

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コロナに翻弄された甲子園

2022年11月01日 | 読書日記

コロナに翻弄された甲子園 小山亘宏 著 双葉社

2020年、コロナで、全国高校野球選手権大会が中止になったことは記憶に新しい出来事でした。この本では野球名門校と呼ばれている8校の名監督さんたちに取材され、各校の野球部の生徒さんたちとこのコロナ禍をどう乗り越え、どのように歩んで来られたか、その思いや伝えたかったことをそれぞれの各校の実情を紹介しながらコロナ禍に翻弄された高校野球の今と未来が語られていた本だったと思います。

甲子園でプレイしたいというその純粋な思いがコロナという自分ではどうしようもないものに立ち塞がれてしまった生徒の皆さんは、目標を見失い、迷走していく生徒の皆さんも多かったと語られていました。そんな生徒の皆さんを目の当たりにした監督さんたちは、生徒の皆さんの悲しみややるせなさとどう向き合い、不安や葛藤をどうアドバイスしたのか、時には寄り添いつつ、コロナ禍での限られた練習方法を手探りしながら、前に進んで行かれた道のりが熱く語られていました。いつも身近で生徒たちを見守っていた監督さんたちがそれぞれの生徒に掛けて行く言葉はその時々に重みを増して、人間力と指導力に応えて乗り越えて行った球児の皆さんにも監督さんたちの思いが伝わって行き、球児の皆さんのひとつの立派な成長になって行く過程が力強く語られていました。

高校野球の監督の名将の皆さんがそれぞれ語られていた言葉から伝わってきたことは、各校の生徒の皆さんに野球だけを教えておられたわけではなく、野球抜きでも生き抜いて行けるような人間教育をしっかりされていたということでした。甲子園の大会の試合の後などにコメントする選手の皆さんの表現のしかたひとつ取ってみても、多くの人が傷つかないような言葉を選んでコメントされているのに感心したことが多々ありました。その人間教育の賜物である人間力が磨かれていたことがよくわかるのが試合後の球児の皆さんのコメントだったりします。野球を専門にプロ野球の世界で生きて行ける選手はたったひと握りでしかないことを知らしめ、他の世界でも活躍できるようにと、野球だけに捕らわれないで野球を通して生徒の皆さんの心や行いをも育てておられたということを再確認した本になりました。新聞の書評に掲載されていたのを読んで図書館で予約して読んだ本でした。

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「こんど、君と」のパンフレット

2022年07月26日 | 読書日記

7月初めに見に行った小田和正さんのライブのときに買ってみた「こんど。君と」のパンフレットを読み終えました。ボリュームがあったので、全部読み終えるまで時間が掛かりました。パンフレットは映画館などでしか買ったことがなかったので、今回のライブに関することが載っているのかなあと勝手に想像していたのですが、違っていました。この本は、前回のライブの「ENCORE!!」のライブが開催された2018年以降、小田さんが活動されて来られたライブのそれぞれやご当地紀行で回られたところの写真などを中心に、質問企画としていろいろな観点から小田さんに質問されて答えられているインタビュー形式のページなどで構成されていました。質問企画のインタビューのページを読んで行くと、小田さんが普段思われていることや普段の生活の過ごされ方などを通してその人となりがよく伝わってくる内容やどうでもよさそうなことについても真面目に答えておられた内容が掲載されていました。その中で印象に残ったことは、ご当地紀行で各地の観覧車にはたくさん乗られたそうなのですが、大阪の道頓堀にあるドン・キホーテの観覧車が怖いと言われていたこと、ゴキブリが苦手と言われていたこと、歳を重ねて来られて人見知りがなくなって来られたことなどが記憶に残りました。冒頭の前書きに書かれていましたが、その質問企画の中の最後の質問で、「いちばん大切にしているものは何ですか。」という問いかけに、自分と思い出を共有してくれた人たちだったことにハッキリと気付かれたと書かれていました。小田さんのこのライブに掛ける思いや音楽に向き合って来られた思いがすべて凝縮されていたように思いました。質問企画で、回答されていたそれぞれの文章を読むと、その飾らない、自然な感じが、音楽にもよく表現されていて伝わるものがあるなあとも思いました。分厚い本でしたし、買うのをためらうくらいの高い値段だったですが、買って読んでみたら小田さんのいつも一生懸命の等身大の姿が格好よかったですし、全体を通して、元気をもらえた気がした本でした。

このライブでは歌われていなかった曲「この日のこと」の弾き語りがあったので貼り付けてみました。

この日のこと

 

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丘の上の賢人

2022年05月15日 | 読書日記

丘の上の賢人 原田マハ 著 集英社文庫

だいぶん前に読んでいた「旅屋おかえり」の続編です。だいぶん前に読んでいたので前作の内容は忘れてしまっていたのですが、少し前にNHKでドラマ化されていたのを見て、前作のことを思い出し、続編を読んでみたいと図書館で予約して読んだ小説でした。文庫なので字が小さくて読みずらいので拡大鏡を片手に後4日で返却しないといけないこともあり、1時間くらいで集中して読めました。原田マハさんの小説を読むと最初は読めるかなといつも思っていてもなぜか一気に読めてしまうので不思議でした。読者を一気に引き付ける書き方は作者の持ち味だったのかもしれません。

この本は、依頼人に代わり旅の代行をする主人公「おかえり」こと丘えりかが北海道の札幌と小樽を旅する物語。今回の依頼人は、東京に住む札幌出身の古澤めぐみというアクセサリーの制作や販売をしている会社の社長でもあった40歳の女性でした。札幌の丘の上で待ち続けるある男性の動画を偶然見ためぐみがその男性が元恋人の浜田純也ではないかと気になり出したことが今回の依頼のそもそものきっかけでした。めぐみの依頼は、浜田純也、小樽でお店をしている純也のお母さん、めぐみのお姉さんの3人の人たちに会ってきてほしいということでした。3人に会った丘えりかがが旅の成果物として持ち帰ったものが感動を呼ぶ結末になっていました。

登場人物すべてがみんなお互いを思い合う優しい人として描かれていたことやおかえり自身も実に心優しい人だったということが自然に伝わってきたお話になってました。こんな優しい人柄の人々を設定できる原田マハさんも優しいお人柄の方なんだろうなと思いました。めぐみと純也を繋いでいた赤いリボン、ビートルズの歌、イサム・ノグチ、フーコーなどのこの小説の背景に漂っている印象的な色や独特の景色やメロディーを身近に感じながら読み手も小説の中でおかえりと同じように旅をしているかのような気分で想像しながら読めました。旅好きの原田マハさんが実際に訪れて感じられたそのままのイメージが文章と溶け合いながら生き生きと具現化されていたからだったのでしょうとも思いました。

挿入されていた言葉のそれぞれの意味も感慨深かったです。たとえば、純也のお母さんの「自分の子どもが人生で一番やりたいことを実行しているのを親は嬉しいものよ。」とおかえりに言っていた言葉、「ふるさととはおかえりと言ってくれる人がいるところ。」とおかえりがのぞみに言っていた言葉です。ふるさととは場所だけでなく、その人との繋がりの中にある温かい心の中だったりするという言葉などがとても印象に残り、心に響きました。

人生で一番やりたいこと、自分の場合もできてなかったから親孝行ではなかったですし、このまま過ごしてこの世から去って行く時間も後残り少なくなってしまったなあなどと思いましたし、おかえりと言ってくれる人がだんだんいなくなってきたので心のふるさとがなくなってしまうのはホントに寂しいなあとも思いました。でも、この世からいなくなる日までの時間が少々残されている間はまだこれからできることもあったりするかもしれないでしょうと思っておくのが一番希望が持てる過ごし方だったですね。

この小説ではめぐみと純也の純愛の赤いリボンがちぎれそうになりながらも時を超えて繋がっていたというロマンティックな関係性がドラマティックに描かれていました。お互いがお互いを待ち続けることやお互いを思い合う切なさは二人だけにしかわからないような尊くて誰も入り込むことができない世界でもあって、待つという受動的な行為の中に潜む能動的な希望や夢を感じたほっこりできた小説でした。

 

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グッモー!

2022年04月13日 | 読書日記

グッモー! 井上順 著 PARCO出版

この本は、俳優、歌手、司会者などの多才な才能をフルに発揮されてきた井上順さんの初のエッセィ本です。渋谷で生まれ育ち、生家は祖父が経営されていた井上馬場だったというお話、ご両親のお話、スパイダースのお話、役者や司会のお仕事のお話、常にダンディーであることの意義や日々の日常生活で心掛けておられる大切なことなどについてが語られています。自らエンターテイナーであり続けて行きたいと願われている井上順さんが常に前向きに楽しいことを探しながら暮らして行かれる日々の向き合い方や考え方がとても素敵でした。こういう風に年を重ねて行くといいのかなと思ったヒントをたくさんもらえたような気がします。細部に気を配るような文章の選び方で書かれていたように感じたので、いろいろなところに気を配ることができるお人柄も伝わってきた内容の本でした。産経新聞の書評の中のインタビューのコーナーで大きく取り上げられていたのを読みましたし、少し前に『徹子の部屋』に出演されていたのを見て興味が湧き図書館で予約して読んだ本でした。

スパイダースの裏話、ドラマ『ありがとう』や『夜のヒットパレード』の裏話など、どれも懐かしくて楽しいお話でした。渋谷区の名誉区民に選ばれたことで73歳ではじめられたらしいツィッターを楽しそうに更新されておられるそうですが、お金が目的じゃなく、砂漠にある小さなオアシスのような存在になりたい、見た人が微笑んでくれたらそれでいいという心意気が素敵だなあとも思いました。

いつも笑顔で暮らすことができて、心から嬉しい、楽しいと感じて生きられることが一番の幸せと思って、街に出て、日常のどんな小さなことでも喜びや感謝を感じられるように、「感性をオープンにしておく」毎日の過ごし方を実践されている井上順さんの生き方を知ると年を重ねてながら生きて行くことの混沌さや不安や寂しさを一掃してくれそうな励ましや元気をもらえたような気持になりました。

 

 

 

 

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