陽だまりの中のなか

前田勉・秋田や詩のことなど思いつくまま、感じたまま・・・。

佐藤ただし エッセイ集『水田とツバメ』

2025-04-04 | 地域・社会

       

詩とエッセイで構成する『海市』同人の佐藤正さん(秋田市)が、エッセイ集『水田とツバメ』を刊行した。
収められた36編は、同誌3号から38号までに連載されたもの。その後も継続中。
因みに創刊号と2号は「鳥日記」で、これは収録されていない。どうという意味合いはないが、彼らしいな
と感じた。なお、『水田とツバメ』は第1回目のタイトルでもあり、現在に至る連載のタイトルでもある。

勤務先を退職するにあたり<一区切り>つけるためベトナムとカンボジアへ旅行した際、「今回の旅行で印象
深かった」と記すのは、「ハノイからハロン湾に向かう途中で見られた水田風景と、カンボジアのアンコール
ワットの遺跡で見かけたツバメだった」という。兼業農家として、若い頃から両親の農作業を見て来ている
作者にとって印象深いとする光景が、現在も日本の農村部にわずかながら見られる光景であったというのは、
ちょっと意外な気もした。もしかして、その情景は、彼の持つ意識と原風景が重なったからかも知れない。

アトランダムに・・・と言うのは適正ではないが、テーマ主体はきっちりさせながらも、都度視点を変えて
記す<農業><農家><地域制><風土><社会通念><自身の在り方>などなど、読んでいてあらためて
物事に通底する世の基本を知らされる。稲や草の生態もしくは名称など私は意識することもなかった。これ
は読者の一人として大きな収穫。勉強家でもある彼は、歴史ある地域の謂れや先人、今を生きる先輩の生き
方などを時として語り、記す。何よりも、生物を意識して自らが生きているということが伝わってくる。

昨今の<令和の米騒動>関連は、残念ながらこの中に収録されていないが、次の39号では次のようにある。
「値段が急に上がると驚くが、ご飯茶碗一杯に使われているコメの重さは約六五グラムだという。一〇キロ
の袋に入ったコメだと一五四杯分になる。仮に一〇キロが五〇〇〇円だとすると、一杯あたり三二円くらい
になる。三杯食べても一〇〇円以下である」と書く。珍しく”声”をあげた。

 

著    者   佐藤ただし(本名 佐藤 正)
出    版   書肆えん    (010-1604 秋田市新屋松美町5-6
発行日    2025年2月8日
定 価    非売品

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2冊の民話と伝承 黒沢せいこ(編)

2025-03-28 | 詩関係・その他

               

 秋田県現代詩人協会会員の黒沢せいこさんから、『秀衡街道ものがたり』と『大雄の民話と伝説』を受贈した。
 『秀衡街道ものがたり』は、奥州平泉と秋田を結ぶ古道周辺に残る口伝と神社等を探りながら巡る。サブタイト
ルは
~岩手から秋田へ民話でつなぐ黄金の道~とある。『大雄の民話と伝説』は、秋田県横手市大雄地区の民話と
伝説をまとめたもので、地区に残る謂れを感じ取る
ことが出来る。どちらも地元での採話による成果だと思われ
るが、その地道な努力と熱意に敬服。両書を比較するのはおかしいが
、敢えて言えば読みごたえとロマンがある
のは『秀衡街道ものがたり』。取り上げている岩手・秋田間のマップもあり興味がわく。
 「秀衡街道という言葉は、(略)平安時代末期、東北を治めていた平泉三代(清衡、基衡)藤原秀衡と、黄金文化
にちなんでつけられた、古代の道」(秀衡街道あれこれ・講話より)。岩手平泉から秋田横手に至る間にはたくさん
の金山があったと言われ、その運搬路でもあり軍事要衝の街道でもあったという。私には、源頼朝・義家親子が、
陸奥の国の豪族安倍頼時・貞任親子を攻める前九年の役、そして後三年の役・・・くらいの知識しかない。ずいぶ
昔、若い頃に横手市の金沢柵址と「後三年合戦金沢資料館」を訪れたことがあったが、そういう歴史ある土地柄
だという程度の認識。恥ずかしいが。
 黒沢さんは、これまで古道の「東山道(とうさんどう)」を調査して歩いたことから「羽州民話街道」活動を仲
間と行ってきたという。1988年出版の『雪国の昔っこ』を機に県内に伝わる昔ばなしの採訪や収集、語り手と
して活躍されている。


『大雄の民話と伝説』・・・発行日:2024.10.03、編集・発行者:黒沢せいこ、定価:500円+税
『秀衡街道ものがたり』・・発行日:2024.11.23、編集・発行者:黒沢せいこ、
              企画製作:みちのくアート、定価:1000円+税

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

詩誌『穂』(静岡)50号を迎える

2025-03-14 | 詩関係・その他

      

       

 

静岡県内在住の8人の女性による詩誌『穂』が50号を迎えた。
今号は過去と新作の詩を1編ずつと、「Essay 詩の周辺」という約520字のエッセイを
それぞれ掲載している。ほかに「三木 卓ノート」。

詩もさることながら、「Essay 詩の周辺」での同人たちのエッセイもいい。
詩への姿勢のみならず、物事の考え方見方、ちょっと身構えた内容、緊張感などが伝わってくる。
それは、物を書く人であればよくわかる心理でもあって興味深い。

井上尚美さんの詩「洗濯」。40年ほど前の作品とある。
洗濯槽の中で家族の洗濯物が絡んでいる様を描く。再び絡み合う前に夫を持ち上げると
すでに妻が絡んでいて、その先には息子も娘もしがみついている。ハッとする視点だ。
  一本の無骨な紐になって/洗濯槽の中からあらわれてくる

岡村直子さんの詩「をんな」は、第一詩集『をんな』から。
  
をんなは/みたび/をんなする
という強烈なフレーズで始まるこの詩は、男の私にも何となくわかるような気がする。
少女期を経て子を宿し更年期になり性の閉塞と色香が消えてゆくのを恐れる・・・。
  あの時が/そうだったように/愛欲の海原に/櫓をこぎ出せ//
  をんなは/自身のために/をんなする//みたび/をんなする/

菅沼美代子さんの詩「鰯のお店」は、時間構成とタイトルの付し方に注目した。
物忘れがひどくなって来たらしい「あなた」と3ヶ月に1回逢うことにしている「私」。
「この前」「あなた」はすっかり忘れていて、電話すると慌ててタクシーでやって来た。
  そのうちに 私の顔 私の聲 私の名前さえ/忘れてしまうだろうか/
  (略)錦鯉は口を大きく開けて のどかな春の空気を吸った/山茶花の白い花が
  ポトリと池に落ちて小さな波を立てた/
小骨を上手に外して美味しいと満足気な「あなた」を見て「なんだか急に哀しくなる」「私」は、
「あなたの安らぎに満足すればよいのだと言い」聞かせる。
  移り行く季節を愉しみ 私だけはあなたを/忘れないように 次の季節の予約を入れた
「この前」(過去)~逢っている今(現在)~次の季節の予約(未来)。それらを平易な自然体の
詩の中で、さらりと表出している。実に巧くしっくりとした構成だ。また、タイトルについても、
心情や情景に沿ったものにしがちだが、今いる(現在)を強調するように「鰯のお店」としている。
ここでは動かない(現在)なのだ。

 

発行人:井上尚美 / 発行:穂の会 静岡県島田市 / 同人:井上尚美、岡村直子、菅沼美代子、
酔 芙蓉、田村全子、ほさかゆかる、松本真理子、室井かずみ

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

生存確認?

2025-01-27 | その他

     

何ヶ月ぶりのUPになるのか、と思い返したら3ヶ月経っていた。

一応、生きています(笑)。
 
知人のブログに生存確認というタイトルのものがあつたので真似てみた。
昨秋から体調が芳しくないことが続き、寝込んだり鬱々としたりしていたこともあり、
ブログの事はとんと思い浮かばなかった。
この期間に恵投いただいた詩集のうちの数冊は礼状や読後感も出せないままに・・・。
 
今日は本当に久々の外出。
これから所属協会の打合せ。
快晴、雪なし、朝冷えの凛とした空気が気持ちいい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

畠山義郎 生誕100年展開催中

2024-10-22 | 詩関係・その他

        

故畠山義郎さんの生誕100年展が、あきた文学資料館で開催されている。
開催期間は12月26日(木)まで。入場無料。10時~16時まで。

また、「畠山義郎の詩的生涯」と題し、佐々木久春氏の講演が11月10日(日)同館で13時30から行われる。無料。
但し、電話か窓口で事前予約が必要。定員30名と少ないのでお早めに。☎018-884-7760

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「秋田の詩祭2024」10月27日に開催します

2024-10-15 | 詩関係・その他

       

秋田県現代詩人協会主催による「秋田の詩祭2024」が
今月27日(日)13時から、秋田市内の協働大町ビルで開催されます。
今年は佐々木久春氏による「現代詩への旅 ー秋田の場合ー」と題する講演のほか、
参加者による
詩の朗読を予定しております。
入場無料、申込不要。どうぞお気軽にご参加ください。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

石川悟朗詩集『遠望』

2024-09-18 | 詩関係・その他

      

元秋田県現代詩人協会会長の石川悟朗さんが第4詩集『遠望』を刊行された。
所属詩誌「密造者」に発表した27編を収めている。
どれも「密造者」で目にした作品なのだが、時間を超えて一つになって溢れ出て来た、
そんな気がする作品群だ。
それは懐かしいような、読み手もどこかで
一緒に体験したような詩世界で、そこに立ち合っている感覚さえする。

石川さんの詩世界は、個人誌「のんびりや」を発行するようになってから
ますますその世界観が顕在化したようにも思えてくる。
言葉の持つ優しさがあって、だからこそ作品の中に出て来る人物も動物も自然も妖精も
夢も現実も、みんな和みのある”存在”となっている。石川さんの中に生息している分身たち。

何個かのキーワードを勝手にあてはめるとすれば、大きな存在は”生まれ故郷”、ふるさとだろうか。
多感で夢見る少年の世界の、絡まってしまったかもしれない糸玉を大切に大切に、
根気よくほぐしているようにも思える。

 
 「ふるさとくん」

どういうわけかぼくのうしろを
あるいてくる
ふるさとくんというひと
あなたはなにものですか
ふりむくとすっといなくなるのです

ふるさとくんはにおいます
おともします
おじいさんやおばあさんのごほんごほんというせき
うしやうまのにおい
こわいせんせいがムチでこくばんをたたくおと
おいかけます
するりとにげてしまいます

ぼくのまえをあるいていることもあります
ふるさとくん
あなたがかついでいるおおきなふくろから
ぴゅうとでてくるフィルム
むらのおとなたちがあせをながして
きをきりたおしすみやきをしている
ふんどしいっかんであかあかともえている
ぼくはいたずらがすきだったから
みずてっぽうでうってやった
こっぴどくしかられている

ふるさとくん
あなたはおどっているのですか
チラチラあなたのまわりからこぼれおちてくる
きぼうというあさひのようなかがやき
きらきらまう
ちぎれぐもはむらさき
あたまのうえにおちてくる

ふるさとくん
にがいあじもにじんでみえます
みんな
ポケットにいれてゆくのです
せつなくおもくおしよせてくるのです

ふるさとくん きえないでいてください
したしみがわいてくるのです

著 者  石川悟朗(いしかわ・ごろう)
発行日  2024年9月9日
出 版  書肆えん(秋田市新屋松美町5-6)

詩誌「密造者」同人、日本現代詩人会会員、秋田県現代詩人協会会員(名誉会員)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

旧ホームページ発見!?

2024-08-01 | 旧ホームページ

 パソコンのデータを整理していたら、昔、運営していたホームページのデータと
アドレスがあった。
 もうずいぶん前になったが、プロバイダーが有料版無料版を問わず、個人のホー
ムページ運営のための提供をやめるというので、やむなくそれに合わせて私もホー
ムページをやめたのであった。
 
 あまりにも懐かしくてアドレスをネットで検索してみたら、当然出てこない。
と思っていたら偶然ヒットして、なんと、旧ホームページのトップ画面が出て来た。
詩とか受贈詩誌といった画面の項目をクリックすると、これまたちゃんとリンクす
る。へぇ~。どういう仕組みなのかは知らないが、思わず自分の昔のホームページ
をネットサーフィンしてしまった・・・。
(アクセスできない箇所もあったが、それは致し方なし)

 下のアドレスをクリックすると旧ホームページを見る事が出来ます。いつまでア
クセス可能なのかは分かりませんが、下記アドレスをクリックし、トップ画面の各
目からどうぞご覧ください(笑)。なお、画面の下側にあるメールのアイコンをク
リックするとメール様式が出てきますが、そのアドレスは今ありませんので送信し
ないでください。

  (旧ホームページのタイトルは「窓枠大の空」)

  https://geocitiesjp.com/testdir/Bookend-Akiko/8638/index.html

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「詩と音楽を楽しむ ~夏~」 開催のお知らせ

2024-08-01 | 詩関係・その他

     

朗読グループ「KOEの会」による「詩と音楽を楽しむ ~夏~」
8月18日(日)1
3:30から秋田駅前のフォンテAKITA6階「ふれあーるAKITA」で開催されます。
特別出演にオカリナ奏者の「オカリナ魔女ichiko」さん。
入場無料。お問い合わせは「あきた文化交流発信センター」018-884-7341まで。
なお、同センターでは、下記事項に協力と理解を呼び掛けています。
①感染拡大を防ぐため、検温・手の消毒・マスクの着用
②席数に限りがあること
③許可なく写真撮影・録画・録音することは禁止

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「矢代レイ詩展 -しなやかな言葉-」開催中

2024-07-04 | 詩関係・その他

  

  

 秋田県現代詩人協会会員、矢代レイさんの詩展が、7月1日から秋田市山王の「秋田銀行本店」ロビーで開催されている。
 『ピッタインダウン』(起き上りこぼしの意)という個人誌の発行人でもある矢代さんは、この詩展や勉強会開催など精力的な活動
をしている。かつて、ある事故に遭いながらも、その理不尽さや精神的な苦悶を乗り越えることが出来たのは「詩」であり、詩を書く
ことで「生かされた」、と熱っぽく語っていたことがある。
それらが第4詩集『濁黒(KURO)』(2019年書肆えん)に表出されたの
は象徴的でもある。

 詩展は前回の展示会以降の作品を展示している。副題は「しなやかな言葉」(上掲の画像、参照)。『ピッタインダウン』の既刊号
を遡って見てみると、第2回目から副題がつけれるようになり、「詩とわたし」「詩を楽しむ」「詩と生きる」「詩に導かれて」
とあっ
た。それぞれその回の
詩に対する思いを表わしていると思われる。
 詩作品や、画像と詩を組み合わせたパネルの展示は、詩とは縁遠い?と思っている人でも接しやすいのではないかと感じた。また、
不特定多数の人が出入りする銀行が会場というのは大きなメリット。
 会場を訪れた時は、市民の方が作品を読んだり詩集を手に取ったりしていた。

 会期は7月31日(水)まで。時間は9時から15時。なお、土日祭日は休み。無料。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする