陽だまりの中のなか

前田勉・秋田や詩のことなど思いつくまま、感じたまま・・・。

第2回秋田県短詩型文芸大会作品募集中

2022-09-10 | 詩関係・その他

 一般社団法人秋田県芸術文化協会が、「第2回秋田県短詩型文芸大会」の作品を募集しています。
 応募資格は①秋田県内在住者②県内勤務者③県出身者と限定されますが、対象者は参加してみては如何?
応募された全作品が作品集としてまとめられるのが魅力的です。
締切は来月10月31日(月)当日消印有効
各部門の共通テーマは「花」。「花」という語、または花の名称を含む作品。
なお、入選者の表彰式は明年2月5日(日)「秋田市にぎわい交流館AU」で行われます。
入賞者の発表は、12月中旬に本人にお知らせ。 
詩は400字詰め原稿用紙に本文2枚以内。応募料として郵便小為替千円同封要。

 <詳細・お問い合わせ先>
 〒010-0875 秋田市千秋明徳町2-52 あきた芸術劇場内 秋田県芸術文化協会事務局 
  ℡ 018-835-3193  /  E-mail : akitakengeibunkyo@gmail.com
 ※応募要領並びに応募用紙はホームページからダウンロードできます。
    http://www.akita-geibunkyo.net/


  

 

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三宅鞠詠 詩集『夢*とりかへばや』

2022-09-04 | 詩関係・その他

     

 東広島市の三宅鞠詠(みやけ まりえ)氏から、第4詩集『夢*とりかへばや』をご恵投戴いた。
 まずタイトルが気になった。「とりかへばや」とは何か。
 調べてみると、平安後期に成立した作者不明の『とりかへばや物語』が出て来た。
運命のいたずらで女装、男装を余儀なくされた異腹の兄妹の物語とある。
今は懐かしい?中村真一郎や田辺聖子らが現代語訳しているようだ。言葉の意味としては「取り替えたいなぁ
という古語だという。

 あとがきに「この詩集『夢*とりかへばや』は虚構です。以下に綴りました(前田/注・・・あとがきに述
べている事柄)
ことも、虚構であるとご理解ください」とあって、読後であれ前であれインパクトのある設定
だと驚く。病院の同室で取り違えられた(同室の女が故意に取り換えた)”私”が育てられていく中で、複雑
な人間の繋がりや”運命”を、ある意味思い切った設定と構成で27作品を収めている。個々の詩作品という
よりは繋がった一つの”物語”。紹介したいのだが、流れを断ち切る事にも成り兼ねないので、冒頭の詩を
紹介することにする。


   私は誰?

 私は夢を見ていました
 夢の中で私は
 K子と呼ばれていました けれど
 私の本当の名前はK子ではないのです
 私の本当の名前は今も解らないまま

 マリというのは
 私が初めて買ってもらった
 お人形につけた名前
 自分の本当の名前がわからないので
 自分の名前としてつかっています 

 

発行日  2022年7月31日
著 者  三宅鞠詠
頒 価  (記載なし)

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森田 薫 詩集『冬の崖底(そこひ)から』

2022-09-02 | 詩関係・その他

     

 森田 薫  氏(鳥取県北栄町)の第3詩集『冬の涯底(そこひ)から』をご恵投いただいた。
 言葉の美しさというのは表現を豊かにする。
 いや、言葉の美しさを引き出せる、使い切れるというのは表現を豊かにする、と言った方が正しい
のかも知れない。

 作者が意図するとしないとにかかわらず、さりげなく詩句として置かれているとしたなら、
それはもう、作者の資性としか言いようがない・・・。そんな感じが氏の作品に多く見受けられる。
”詩”を読むことの懐かしさのような、”詩”集を手に取るよろこびのような充足感。



    冬の道

 ・・ふしぎなことに
 もう何処へも行こうと思わなくなった
 そこに道があればおのずから
 ひらけゆくものがある

 道の傍らに一本の樹が立ち上がり
 夕べ、ぼくは梢のまわりを満天の星がめぐるのを
 カーテンの隙間から見ていた
    
 水天の華が風に舞う冬の道
 生と死と、あらゆるものに光と影を宿す
 この世の謎と
 幾世紀をめぐるはるかな旅程
 ぼくらの眼差した世界の踏破が未遂のままであれ
 ただ生きてあることのふしぎを想う

 道があり
 樹はそこに立っている
 吹きぬける風
 鳥たちの飛来も
 散華も
 花も鳥もわが家の犬の遠吠えさえも
 いま在ることのすべてが訪(おとな)う季節(とき)の約束なのだと

 

  *第3連 水天の華・・風花のこと(造語)  

  ※当ブログの入力機能に制限があるためルビが付された箇所は( )書きとし、
   注記記号が付された第3連”水天の華”は上記表記とした。(前田)

 

発 行  2022年8月30日
著 者  森田 薫
発行所  土曜美術社出版販売
頒 価  2,000円+税

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詩と思想詩人集2022

2022-09-02 | 詩関係・その他

     

 「詩と思想詩人集2022」が刊行された。月刊の商業詩誌「詩と思想」が毎年発行するもので、
今年は「詩と思想」創刊50周年記念とある。
 参加詩人はなんと500名。全部を読み終えるには相当な時間を要する・・・。名前だけは知っ
ていても
作品を目にしたことがない詩人について触れることが出来るのはいい機会だ。
 
 因みに秋田からは佐々木久春、駒木田鶴子、成田豊人の各氏と前田が参加。

発行日  2022年8月31日
発行所  土曜美術社出版販売
頒 価  5,000円+税

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根津真介詩集『余所事』

2022-09-02 | 詩関係・その他

     

 

 根津真介氏(高知市)の第15詩集『余所事』(よそごと)が刊行された。
 氏の作品を読んでいると、ふと、自分は目の前の事象や出来事あるいは心象を言い表わそうと
するとき、ありきたりのことしか言えないでいるなと思った。物の見方考え方捉え方、どのよう
に感じどのように言い表すか、それが何によって思考され構成されていくのか。そうしたことを
考えさせられた。

 読み進めて行くうちに、どの作品もリズミカルな感じがすることに気付いた。
よくよく見ると収められている40編のうち38編が20行。残り2編は19行と21行
(二つを平均すると20行!?)。20行詩という形式があるかどうかは知らないが、多くが
4・4・4・5行の4連構成となっていて、この中に作者の世界を
込めている。(下記紹介作品
は5・2・5・5行の4連構成)

   瓶
 
 
大きな瓶の中に
 小さな瓶が入っている ぼくは
 大きな瓶の中から出ることは出来ないが
 かといって小さな瓶に入ることも出来ない
 奇妙なモラトリアム状態

 熱い湯の中に浸っているのか
 冷水の中を漂っているのか

 自分をほめてみる しかってみる
 涼しい顔をする 嬉しそうな顔をする
 醜い顔をする 辛そうな顔をする
 やり直しは効かない
 交換することも出来ない

 大きな瓶からはみ出そうとするのか
 小さな瓶に潜り込もうとするのか
 どちらも無理なのに
 どちらかを選択しようとしている
 瓶が割れるのを待てばいいだけなのに

 

発行日  2022年8月20日
著 者  根津真介
発行所  土曜美術社出版販売
頒 価  2,200円+税

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前田 新 詩集『詩人の仕事』

2022-09-01 | 詩関係・その他

                   

 

 数年前、福島県会津美里町の詩人、前田新さんから突然年賀状を戴いた。
 ある詩人住所録に隣り合わせで掲載されていたからだろうか。
 秋田の某銀行の頭取であったMは自分の親戚であるが、秋田の前田はどういう流れか?と書かれていた。
残念ながらお伝えするような血脈を持ち合わせていないので、秋田県内の同姓について触れたメモ程度の
私信をお返ししたことがあった。
 さて、その前田さん
の13冊目の詩集となる『詩人の仕事』をご恵投戴いた。
 前田さんは、詩のみならず小説などこれまで22冊の著書を持つ詩人である。
 あとがきに「詩は若い頃から日誌がわりに書く、心象のメモランダムのようなもので、他者への発信
という意識は
あまりなかった」と記す。
 収められた45篇は世情への詩人の目線が一貫しており、ブレのない指向性・思考が見て取れる。
 読んでいて、その強さはどこから来るのだろうかと思った。他者への発信をあまり意識しないという
ことも大きな要因になっているのかも知れない。あるいは、就農、青年運動、農村演劇活動、農業委員
など、農民運動にかかわってきた経歴から見えてくる”民衆”の一人であるという根本的な確たる信条が
あるからかも知れない。
 冒頭に収められた「忘れ得ぬ詩人たち」で、9人の東北の詩人(真壁仁、三谷晃一、瀬谷耕作、蛯原
由紀夫、原かず、渡部哲男、物江秀夫、長嶺茂一、若松丈太郎)と1人の九州の詩人(松永伍一)を挙
げているが、その前提となる印象深い第3連を下記引用する。

 R・リルケは/”貧しさは内から射す美しい光だ”/と言った。光は詩と同義だ/詩人たちは光を言葉
に変換した/ そして貧しさとは心の豊かさの暗喩だと/その詩のなかで私に教えた/彼らが立ち去っ
たいま/ 私は彼らが残した美しい光のなかで/最晩年を生きている/光は私のなかの闇を射す/それ
とともに私をとりかこむ/ 虚妄の闇にも射しこむ/鋭い切っ先のような光を、/私は意志として詩の
言葉に変える/


 詩集の中から一篇、全行を紹介する。

   カンレン死

 関連死という言葉が
 原発事故から七年が過ぎた
 ある日、地方紙の紙面に踊った
 死の原因が原発事故に関連すると
 国が認定した死者の数が
 福島県では増え続け、
 二、二二七人(二〇一八年月、現在)になった
 子供たちの甲状腺の異常も
 見つかっているが
 放射線との因果関係はない
 と報告され続ける

 原発事故のカンレン死は
 「放射線とは関係なく
  避難など、環境の変化によって
  心的ストレスなどが原因で
  死に至ったと認定された死」
 (老人の自死も含む)と
 福島県は定義する
 認定されれば、国から死者に
 些少の金一封が出るが
 認定は、それだけに
 ハードルが高いという
 それでも年間にして
 四百三十七人のペースで
 関連死は続いている

 マスコミは復興を宣伝し
 大臣は東京オリンピックの
 会場を福島県へなどと、
 したり顔で言うが
 今もふるさとには帰れない
 福島県の避難民は
 八八、〇一〇人(二〇一六年八月末現在)
 県内のいたるところに
 積み上げられる汚染物質の
 中間貯蔵施設は一六〇〇ヘクタール
 そこへの移動もままならぬなかで
 水害でパックは流され破けている

 原発から百キロ離れた
 会津の山菜の線量は基準値を超える
 今年も市場から撤去の指示が出た
 現実を知らされないまま
 ”ああ、福島のあの話
  俺には関係がない”と
 思っているひとたちに言いたい
 原発に依存する限り
 認定されることはないだろうが
 カンレン死という死から
 あなた自身も逃れ得ない
 それをあなたが知らないだけだ

 

発行日  2022年8月30日
著 者  前田 新
発行所  株式会社コールサック社
頒 価  1,600円+税

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