第37回現代詩人賞(219年3月2日。主催日本現代詩人会)に決まった齋藤貢さんの詩集『夕焼け売り』。
今月上旬に先輩詩人から寄贈されていたのだが、なかなか手に取ることが出来ずにいた。著者の齋藤さんは福島生まれの64歳。地元紙には福島県内の高校の校長を歴任、福島県文学賞詩部門委員を務めていると紹介されている。
この詩集は東日本大震災と福島第一原発事故によって「無」になった時間、生活、何よりも亡くなった”ひと”への鎮魂と現実を凝視した作品集だ。客観視した位置から”ひとは”、と静かに言い、叫ぶわけでも喚くわけでもない。だからこそ詩句に込められた重さや感情の深さがよく伝わってくる。あぁ、これは”詩”だな。そう思った。剥ぎ取られてしまった後の空虚感。
亡くなった”あなた”についての連作がある。死の床に横たわる”あなた”への想いが切ない。詩ってこれなんだな、そう思う表現に出会うことが出来た。何回も読み返してみるべき詩集の一つだ。
発行日 2018年10月1日
発行所 思潮社
定 価 2,600円+税