悠木さんの第五詩集となる「吉祥寺から」が届いた。写真との”組詩”という編集。表紙も街並みを切り取ったようなモノクロ写真がすっきりとしていて好感。
詩を書くとき、直截的に一人称で自己を表出するかそれとも第三者的な目線で物語風に表現するか、それとも・・・・。この詩集は後者の方と言えようか。物語風で読む側を引き込んで行くから不思議。そしてさりげなく悠木さんの生き方が見え隠れするようでもあり、一気に23編を読み切った。時間をおいてからまた読んでみるが、こんな感覚を感じることは久々である。どこがどうということは後日として、さりげなく表現できる巧さに魅かれた。
「日常の些事を拾い、詩的な構成を試みた作品群である。声高に叫び、拳を振り上げることはしないが、いささかの批評性を看取していただければ嬉しい。」と、あとがきで控えめに記している。印象的だ。
亀谷健樹さんの第五詩集となる『杉露庭のほとり』が刊行された。
第一章<詩禅一如>、第二章<行脚偶成>、第三章<家郷遊花>の三章構成になっている。あとがきによると、第一章は『詩と禅を、並立的に観るのが普通だが、高橋新吉<著名な禅の詩人>ともまた異なった現代的手法をさぐった。ほんものの、しかも至純の詩は、禅の悟境そのものであるとした立場で、独自な詩趣を試みた』と、僧職詩人らしく、しかも自信に満ちた一面をのぞかせる。第二章は国内外を見聞した折々の心象風景とし、<単なる旅の随想ではないつもりだ>とする。第三章は<随分あきた弁の詩が多い>と振り返り、『自己の脚根地を素材にすると、不思議に泉の如くコトバが溢れ出す』と言う。
詩誌「密造者」で目にした作品も多い。コトバの持つ重厚さと豊かな詩情に出会えそうだ。
出版:書肆えん 発行日:2015年6月26日 A5版上製本