東京新聞
2013年3月6日
天皇や摂政、国務大臣、国会議員、裁判官、国家公務員、地方公務員…。憲法を尊重し擁護する義務を負う、と憲法九九条で規定されている人たちだ。なぜ、国民はその義務を負わなくてよいのか、と不思議に思ったことがある▼主権者である国民が、国家権力に歯止めをかけるための役割が憲法である。近代の立憲主義の理念では、国民は国政を担う人たちが憲法に反して暴走しないように「監視役」と位置づけられている。それ故に、国民には憲法尊重擁護義務はないと学んだ▼憲法は法律の親玉ではない。理想とする国家像や伝統、価値観を政党が押しつけたり、ましてや国民に義務を課したりする規範ではない。自民党の憲法改正草案を読めば、憲法の本質を理解していない人たちが考えたことが分かる▼昨年末の衆院選に対する一票の格差訴訟の一審判決(二審制)がきょうの東京高裁を皮切りに、全国の高裁・支部で今月二十七日までに相次いで言い渡される▼異例のスピード審理の裏側は、最高裁から「違憲状態」と指摘されながら、制度を放置し続けた国会へのいら立ちもありそうだ。違憲判決どころか、選挙の無効まで踏み込んだ判断が出る可能性があるという▼違憲状態の選挙制度で選ばれた国会議員が憲法改正を訴えるのは、ブラックジョークに聞こえる。やるべきことをしてから、言ってもらいたい。
筆洗
2013年3月6日
天皇や摂政、国務大臣、国会議員、裁判官、国家公務員、地方公務員…。憲法を尊重し擁護する義務を負う、と憲法九九条で規定されている人たちだ。なぜ、国民はその義務を負わなくてよいのか、と不思議に思ったことがある▼主権者である国民が、国家権力に歯止めをかけるための役割が憲法である。近代の立憲主義の理念では、国民は国政を担う人たちが憲法に反して暴走しないように「監視役」と位置づけられている。それ故に、国民には憲法尊重擁護義務はないと学んだ▼憲法は法律の親玉ではない。理想とする国家像や伝統、価値観を政党が押しつけたり、ましてや国民に義務を課したりする規範ではない。自民党の憲法改正草案を読めば、憲法の本質を理解していない人たちが考えたことが分かる▼昨年末の衆院選に対する一票の格差訴訟の一審判決(二審制)がきょうの東京高裁を皮切りに、全国の高裁・支部で今月二十七日までに相次いで言い渡される▼異例のスピード審理の裏側は、最高裁から「違憲状態」と指摘されながら、制度を放置し続けた国会へのいら立ちもありそうだ。違憲判決どころか、選挙の無効まで踏み込んだ判断が出る可能性があるという▼違憲状態の選挙制度で選ばれた国会議員が憲法改正を訴えるのは、ブラックジョークに聞こえる。やるべきことをしてから、言ってもらいたい。
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