TPP(環太平洋連携協定)について最も不愉快なのが、交渉の内容、つまり話し合いの中身が全く分からないということだ。TPP推進派は「中身が知りたいなら、まず交渉に参加するべきだ」と言う。しかし、それはおかしいだろう。
海の物とも山の物とも分からない交渉に、何の警戒心もなく入っていくのは“馬鹿”と言うしかない。まして、国益を左右する経済外交である。これは国家・国民全体に影響することなのだ。
そもそも、交渉当事国が日本など新しい国に参加を呼びかける場合、「現在、このような内容の交渉をしています。よろしければ参加してください」と言うのが、最低限の礼儀作法である。そして、その交渉の中身を検討した上で、入るか入らないかを決めるのが普通の対応である。
ところが、外務省にどのくらい情報が入っているか知らないが、国民は24項目のテーマだけ知っていて、あとは何も分からない。それでも、交渉に入れと推進派は言うのか。こんな無茶な、いや恥知らずな呼びかけはない。
そこで気が付いたが、これは「ぼったくりバー」の手口と全く同じである。綺麗なお姉ちゃん(キャッチガール)が近寄って来て、「いい所があるわ。寄っていかない?」なんて声をかけてくる。つい、鼻の下を長くしてその店に入ると、料金表などは全く出ていない。 「まあ、いいか。こんな汚い店なら大した値段じゃないだろう」なんて考え、ビールや水割りを1~2杯飲む。
そうこうするうちに、店の雰囲気にやや不安を感じて帰ろうとする。「お勘定は?」と聞くと、3万~4万円の請求が来るのだ! その時はもう遅い。そこで喧嘩をしても始まらない。
最近は、クレジットカードを使って清算すると、4000円ぐらいの値段が10数万円になることもあるそうだ。そうなると訴訟問題に発展するか、泣き寝入りするかのどちらかである。仮に訴訟で勝ったとしても、あとが非常に面倒である。こんな店には二度と来るものかと思うだろう。
私も若い頃、新宿などで「ぼったくりバー」に引っ掛かったことがある。その反省を込めて言っているのだ(笑)。 その話は止めておくが、TPPを見ていると、ぼったぐりバーにそっくりではないか。
中身、つまり飲食物やサービスの値段が全く分からない。キャッチガールに誘われるのは良いが、後でとんでもない料金を吹っかけられるのだ。もちろん、店に入る前にお姉ちゃんに大体の値段を聞いても、適当にはぐらかされて本当のことを言ってくれない。当たり前だ! ぼったくる相手に、本当のことを教える奴はいないのだ。
ぼったくりバーこそ、アンフェア(不公正)そのものだ。TPPもまさにアンフェア! 我々が知りたいことを、事前に何も教えてくれないのだ。こんな所にのこのこと入っていく者こそ馬鹿である。
今日は、自分の若い頃の失敗談を交えて話をしたが、分かり易かったのではないか。 もう一度警告しておく。ぼったくりバーで被害に遭うのは、個人的な問題で済むが(それでも、懐が痛むよ~~)、TPPの場合は国家・国民全体に影響することなのだ。事前に、中身をいっさい教えないアンフェアなTPP交渉などに、絶対に参加してはならない! (2011年10月27日)