読書感想113 アラバマ物語<o:p></o:p>
TO KILL A MOCKINGBIRD(原題)<o:p></o:p>
著者 ハーパー・リー<o:p></o:p>
出身地 米国アラバマ州モンローヴィル<o:p></o:p>
出版年 1960年<o:p></o:p>
受賞 1961年ピューリツァー賞<o:p></o:p>
映画化 1963年 グレゴリー・ペック主演<o:p></o:p>
3部門でアカデミー賞受賞<o:p></o:p>
翻訳者 菊池重三郎<o:p></o:p>
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感想<o:p></o:p>
映画化され、テレビでも何度も放映されているので、題名とストーリーを知らない人は恐らくいないだろう。<o:p></o:p>
1930年代の南部アラバマ州で黒人青年が白人の娘を強姦した罪に問われて裁判にかけられる。白人の弁護士が黒人青年の無罪を証明するが、陪審員の評決は有罪。弁護士は控訴の準備を始めるが、黒人青年は移送の途中で脱走を試みて射殺される。無実の黒人青年を陥れた白人の娘の父親が、恥をかかせた弁護士に強い恨みを抱く。<o:p></o:p>
簡単なストーリーは以上だが、物語は幼い娘のスカウトの目を通して綴られていく。スカウトは6歳から8歳までの時期であり、4歳年上の兄ジェムは10歳から12歳までの時期にあたる。母親を亡くした兄弟は父親アティカスの手で育てられている。母親代わりは黒人のコックのカルパーニア。優しい父親の下で男の子のように活発に育つスカウト。近所の謎めいた屋敷の住人のこと、口うるさいお婆さんのこと、小学校でのどうしようもない教師や貧しい一家との出会い、一族の先祖サイモンが切り開いた農場でのクリスマス、父親が黒人の弁護を引き受けたことで同級生と取っ組み合いの喧嘩をすること、スカウトの将来を心配するアレクサンドラ伯母さんが同居すること…。<o:p></o:p>
当時のアラバマ州では、白人と黒人の社会がはっきり分離されている。白人が黒人の家や教会に行く場合は特別な人なので歓待される。その反対はない。黒人差別の先頭に立ってリンチしようとするのがプアーホワイトといった貧しい階層の白人だ。ゆったりした南部の日常の中に当時の様子が分かって面白い。夏休みになるとスカウトの家の隣にやってくる同じ年のディルは、著者の幼馴染のトルーマン・カポーティがモデルになっているというので興味深く観察した。いろいろな物語を作り出してその中の登場人物になるという想像力溢れる遊びを、ディルもスカウトもジェムも一緒にしている。その中でもディルは自分についての物語はほとんど嘘つき状態だが、それを咎めることのないおおらかさが彼を取り巻く人々にはある。こういう環境の中で作家としての才能を開花させたのかと納得した。映画以上に原作がいいのが「アラバマ物語」だと思う。
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