読書感想123 灰色の虹
著者 貫井徳郎
生年 1968年
出身地 東京
出版年 2010年
出版社 (株)新潮社 新潮文庫
感想
冤罪の被害者が冤罪に加担した人々に復讐する話である。復讐する相手は刑事、検事、弁護士、裁判官、目撃者。被害者の追想と、復讐される人達の事件との関わりと現在の話が交互に語られていく。誰一人被害者の話を親身になって聞かず、被害者の話をまともに検証しようとしなかった。特に担当刑事は予断に基づく見込み捜査と脅迫まがいの取り調べで被告に自白を強要した。不審な連続死の関係に気付いた一人の刑事が犯人を追いつめていく。
最初から犯人がわかっている。殺される人は殺される理由も分からずに事故のように死んでいく。復讐なら理由を知らせる必要があったのではないだろうか。または殺される恐怖を味わわせるとか。ミステリーとしては物足りないが、どんでん返しもある。しかし、冤罪の構造を暴いて見せた作品である。どこかでまともに検証されていれば冤罪は起きなかったということである。