読書感想124 ハード・タイム
著者 サラ・パレツキー
生年 1947年
出身地 アメリカ、アイオワ州
出版年 1999年
邦訳出版年 2000年
出版社 (株)早川書房
訳者 山本やよい
感想
シカゴを舞台に女性の私立探偵V・I・ウォーショースキーの活躍を描くシリーズの中の一冊。
ウォーショースキーはハリウッドからシカゴの新聞、テレビに進出した〈グローバル・エンターテイメント〉のパーティーに招待され、主賓のロマンス・ホラー映画のスター女優レイシー・ダウェルの旧友というルシアン・フレナダと知り合った。パーティーの帰りに路上に横たわっていた女性を危うく轢き殺しそうになって車を消火栓にぶつけてしまった。彼女ニコラ・アギナルドはまだ生きていたが、翌日亡くなり、死体解剖もされないまま、何者かに遺体が引き取られた。ニコラは何者なのか。ウォーショースキーはニコラを轢いたという嫌疑を晴らすために、ニコラについて調べ始める。
登場人物も多い。30人近くいる。シカゴの共同住宅の暮らしぶりや、女子刑務所の無法ぶり、人権侵害ぶり、貧しい移民や不法移民の住む地域のようすや、そこでの教会の神父の役割なども興味深い。中でも毎日2匹のゴールデンレトリーバーと一緒にミシガン湖で泳ぐというのは、シカゴの都市環境の素晴しさを感じるし、アメリカ人の犬との距離の近さが分かる描写だった。
ミステリーというよりアメリカ社会の断面をウォーショースキーと一緒に見て歩くという感じの本だ。