著者 乃南アサ
生年 1960年
出身地 東京
出版年 2009年
出版社 (株)講談社
受賞歴 第1回日本推理サスペンス大賞優秀作
「幸福な朝食」
第115回直木賞「凍える牙」
☆☆感想☆☆
この物語は前半は東京を舞台にし、後半は北海道の知床半島の斜里に舞台が移って行く。故郷を離れて一人暮らしの主人公はふとした弾みから正規雇用から、非正規の派遣社員の身分に転落し、さらにそこからもはじき出され、借金まみれになって新聞販売店に転がり込む。そんな主人公の片貝耕平は、故郷の知床半島の斜里から、東京の無名の大学に進学し、初めて就職した先の上司に大学のことで馬鹿にされ、2か月でやめてしまう。その後勤めた会社は社長と経理部長が夜逃げをして倒産。派遣社員としていろいろな所に行くが、うまく行かず、小学生の学習塾で安定した職を確保したと思ったら、インフルエンザに罹って失職してしまう。新聞販売店にはいろいろな所から流れてきた、わけありの男たちがごろごろしている。借金の肩代わりをしてもらった代わりに、そこで住み込みの新聞配達員として働く毎日。店主には将来新聞販売店の経営者にならないかとも誘われている。東京ドリームは新聞販売店の経営者か。そこに沖縄から若い女の子が入ってくる。 「ニサッタ」はアイヌ語で明日という意味だそうだ。明治時代もそうだったが、北海道は敗者に寛大で、再生させる土地柄だ。戊辰戦争で敗れた伊達家や会津藩の士族たちが入植して艱難辛苦の末に成功している。この小説でも東京でもみくちゃにされた若者が再生する土地として描かれている。まだ、チャンスもあり、人間的な温もりが感じられる土地なのだろう。