農業がなかった時代は、人間は土を使うことを知らず、鳥獣、魚や虫、木の実などを捕食していました。この期間は百万年ぐらい続き、食べることで今日のような幸せな毎日を送っていたことはないと思います。人間は、1万年前、土や水を管理しタネを確保して計画的に作物を得る技(農業)を知り文明を築くことができました。文明とは『食べる余裕ができるくらし』といってもよいと思います。文明を続けるには、土と水とタネを繰り返し、繰り返し働かせることです。この3つのどれを壊しても文明が死にます。エジプトやメソポタミアなど世界の大文明は、この3つのどれかが壊れて大木が枯れるように徐々に滅亡しました。いま、人口爆発で飢餓が拡がり、各国の農業が危機にあるといわれています。日本の農業は国際競争に弱くて大変な危機にあります。日本の文明もこの3つの何れにも危機があります。その一方、今ひとつ消費者の「食」についての態度が甘くなっていることもあります。東京に住む我々は「食に困ることはない」と何となく思っています。また若い人達は、ゲーム感覚でものを食べたり、外食や中食に頼ったり、サプリメントを食事代わりにして、「食べる」という厳かな営みから遠のいています。海外から安い農産物や食品が大挙して押しかけています。若いママさんや青少年達は、美味しいものがあふれかえる幸せな現代に浸かりすぎてつい、食べることは、冷蔵庫や自動販売機などから選ぶことぐらいに考えて、作ることには関心を持たない、そのくせダイエットや食の安全には関心があるが、「作る」という農家の厳かな営みには尊敬を払わず、食には永久に困らないだろうという楽観に支配されていうようです。それは全く根拠のない楽観に過ぎません。戦後生まれの人は、食べることに困ったことがないから、「困るってどんなこと?」と問題に気づいていないということに過ぎません。「作る」、「食べる」ことの両面を正しく見直す『食育』という言葉を掘り下げ親として若い者に背中を見せて一緒に考え、行動しませんか?
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