風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

サバイバルゲームの木

2015年12月18日 | 「詩集2015」

秋は
さよならの声にとまどう
一本の木だった
小さな葉っぱは小さなさよならを
大きな葉っぱは大きなさよならを
掌のような葉っぱは
手を振りながら

さよならした
葉っぱの青空から
たくさんの風の声が降ってくる
木の耳を伝って
はるかな中空から地中へと
水がしたたる音もする

すっかり軽くなって
葉っぱは木ノ川を流れていく
物語の始まりは
小さな一本の木だった
大きな風の手で植えられた
小さな木だった
そして物語の終わりも
一本の木だった

ふたたび物語が始まる
その日まで
北風が語る夢のつづきを
木はじっと聞いている








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