風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

シロツメグサ

2010年05月17日 | 詩集「一瞬の夏」
Shirotume2


シロツメグサで
首飾りと花束をつくり
ぼくたちは結婚した


わたしの秘密を
あなたにだけ教えてあげる
小さな花嫁は言った
唇よりも軟らかい
かたく閉じられた秘密があった
シロツメグサで髪をかざり
赤ちゃんになったりお母さんになったり
お父さんになったり
子どもになったりした


朝といえば朝になり
夜といえば夜になった
夏といえば夏になり
冬といえば冬になった
一日は早く
一年も早かった
おいしいおいしいと言いながら
シロツメグサのパンばかり食べた


ときを忘れ
結婚していることも
すっかり忘れてしまった頃
彼女は美しくなって
ほんとの花嫁になった
手にはバラのブーケ
野には
シロツメグサがいっぱい咲いていたけれど
ぼくはもう
首飾りも花束も作らなかった


(2008)


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