小さな窓から
小さな窓から小さな空へ
移りかわる雲の日々
晴れた日は手さぐりの虚ろ
雨の日はとおい耳
風の日は過ぎていく水
暗い夜はあてどなく
夢とうつつ
小さな窓から
雲にのせて
いずこへか魂をはこぶ
春の津波は
森の深くまで押し寄せてきたか
吹きだまりには落葉のやま
いまは獣の道もみえない
小さな窓から
夢の声を明るくする
小さな光
遠いのか近いのか
星の宇宙をノックして
光るものを言葉にかえる
*
笛
しみじみと
ドングリをひろう
その丸い実で
コマを作る
ただ転がして遊ぶ
釘で穴をあけて
笛を作る
唇にかたい響き
風のように虚ろに
吹きつづけた
しみじみと
ドングリをひろい
耳にあてる
いま笛を吹いているのは
誰だろう
*
失くした虹
雨あがり
ひたひたとどこかで
小さな眼が
光っているようだ
きっと虹を隠しているんだ
あいつら
カナヘビたち
すこしずつ
空の時間をずらしている
気をつけるんだな
光っているのはカナヘビ
くすんでいるのもカナヘビだから
失くしたものは
錆びた玩具
ちびた鉛筆と乾電池
パスワード
その言葉の虹には
ひかる虫が巣食ってたんだな
失くしたものばかり
光っているのは雨あがり
カナヘビだな
ひんやりと
ひたひたと
隠しているんだな
草むらだな
水たまりだな
石ころだな
光っているのは
虹だな
カナヘビたちの
冷たい虹
失くしてしまったんだな
*
秋の実
小さな手で
木の実をひろいながら
小さな手はおぼえた
実であることを
ひろっても
ひろってもなくならない
ひとつふたつと
みっつまではかぞえられたが
かぞえられない木の実で
小さな手はあふれた
かぞえてもかぞえきれない
歓喜して手からこぼれ落ちる
それが秋であることを
小さな手はまだ知らなかった
*
Into the Woods
近くに小さな森がある
トチの木がある
サワグルミの木がある
シイの木がある
両手をまっ黄色にしながら
固くて苦い木の実とたたかった
縄文人の足跡を踏む
餓死するまえに
森へ逃げこむ
赤い実をたべて赤くなる
青い実をたべて青くなる
苦い実をたべて生まれかわる
朽木と木の実の殻ばかりを残して
古い森は生きている
古い人も生きている
小さな森を抜けると
きょうの空はいつも新しい
小さな窓から小さな空へ
移りかわる雲の日々
晴れた日は手さぐりの虚ろ
雨の日はとおい耳
風の日は過ぎていく水
暗い夜はあてどなく
夢とうつつ
小さな窓から
雲にのせて
いずこへか魂をはこぶ
春の津波は
森の深くまで押し寄せてきたか
吹きだまりには落葉のやま
いまは獣の道もみえない
小さな窓から
夢の声を明るくする
小さな光
遠いのか近いのか
星の宇宙をノックして
光るものを言葉にかえる
*
笛
しみじみと
ドングリをひろう
その丸い実で
コマを作る
ただ転がして遊ぶ
釘で穴をあけて
笛を作る
唇にかたい響き
風のように虚ろに
吹きつづけた
しみじみと
ドングリをひろい
耳にあてる
いま笛を吹いているのは
誰だろう
*
失くした虹
雨あがり
ひたひたとどこかで
小さな眼が
光っているようだ
きっと虹を隠しているんだ
あいつら
カナヘビたち
すこしずつ
空の時間をずらしている
気をつけるんだな
光っているのはカナヘビ
くすんでいるのもカナヘビだから
失くしたものは
錆びた玩具
ちびた鉛筆と乾電池
パスワード
その言葉の虹には
ひかる虫が巣食ってたんだな
失くしたものばかり
光っているのは雨あがり
カナヘビだな
ひんやりと
ひたひたと
隠しているんだな
草むらだな
水たまりだな
石ころだな
光っているのは
虹だな
カナヘビたちの
冷たい虹
失くしてしまったんだな
*
秋の実
小さな手で
木の実をひろいながら
小さな手はおぼえた
実であることを
ひろっても
ひろってもなくならない
ひとつふたつと
みっつまではかぞえられたが
かぞえられない木の実で
小さな手はあふれた
かぞえてもかぞえきれない
歓喜して手からこぼれ落ちる
それが秋であることを
小さな手はまだ知らなかった
*
Into the Woods
近くに小さな森がある
トチの木がある
サワグルミの木がある
シイの木がある
両手をまっ黄色にしながら
固くて苦い木の実とたたかった
縄文人の足跡を踏む
餓死するまえに
森へ逃げこむ
赤い実をたべて赤くなる
青い実をたべて青くなる
苦い実をたべて生まれかわる
朽木と木の実の殻ばかりを残して
古い森は生きている
古い人も生きている
小さな森を抜けると
きょうの空はいつも新しい
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よろしくお願いします。
「私は私のままでいいんだ」という言葉に
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これからも、よろしくお願いいたします。