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夏休み目前の空は、蒼く抜けるような色をしていた。
木々の緑は色濃く、風に揺れると大きく葉擦れの音がする。
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雪は音楽を聴きながら緑道を歩いていた。
昨夜遅くまで課題に取り組んでいたので、半分眠りながらの登校だった。
「雪ちゃん」
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ふと後ろから名前を呼ばれた。
しかしイヤホンをしている雪は気付かない。
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青田淳は、背後からもう一度彼女の名前を呼ぶ。
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雪はやはり気付かない。
ふぅ、と息を吐きながら淳は彼女との距離を縮めた。
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淳の耳には、サワサワという葉擦れの音が聞こえている。
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「雪ちゃん ゆーきーちゃーん」
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爽やかな朝の緑道に、彼の声が響く。
淳は一層彼女に近付いた。
「雪ちゃん?」
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淳が近づいて見ると、その小さな耳にイヤホンが見えた。
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ムニャムニャと半分眠りながら歩いている彼女に、淳はプハハと小さく笑う。
「雪ちゃん!」
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トントン、と淳は手の甲で雪の肩を叩いた。
雪はハッと目を開け、振り返った。
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雪の目の前に、青田先輩が微笑みながら立っていた。
「先輩‥!」
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雪は突然現れた彼に驚き、声を上げる。
目の前の彼は、何やらとあるジェスチャーをしているが、その言葉は聞こえない。
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「え?先輩の髪型ですか?」
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先輩は笑いながら否定する仕草をした。まだ言葉は届かない。
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さすがにおかしく思った雪が、それがイヤホンのせいだとようやく気がついた。
「あちゃ‥」
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メロディーが、木漏れ日揺れる緑道を包む。
先輩がまた何か言った。
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何と言ったのか聞き取れない。
雪の耳に、彼の手が伸びる。
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世界は無音になった。
時が止まったようだった。
生まれたての世界で聞こえてきたのは、彼の発する落ち着いた声だった。
「イヤホン外さなきゃ」
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最近ずっと上の空だね、と先輩は言った。
いきなりの彼の行動に、雪は思わず固まる。
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先輩はイヤホンをまとめると、
「ここに入れればいい?」と雪の鞄に入れようと身を屈める。
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ち、近い‥!
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雪は思わぬ彼との接近に動揺した。
「私が‥!自分で‥!」
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雪はイヤホンを取り返そうと先輩から身を離した。
するとコードが絡まりそうになり、二人はワタワタした。
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雪の足がもつれ、後ろに転びそうになる。
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しかし背後に居た先輩が雪の肩を掴み、その身体を支えた。
「雪ちゃん!」
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強く掴まれた肩。
「気をつけないと!」
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その言葉。
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雪の脳裏に、急激に記憶の波が押し寄せてきた。
アイツには気をつけろ
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河村亮からのあの忠告。
次に思い浮かんできたのは、去年ホームレスから傷を付けられた翌日、
自販機の前で先輩が言った言葉だった。
君は、転んだり怪我したり忙しいな
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そして書類を落とした時の、あの警告。
前にも言っただろ?
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肩にかけられたあの強い圧力。
そして掛けられた言葉。
これからは気をつけろよ
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目の前にある暗く沈んだ瞳。
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その冷酷な闇に飲み込まれてしまいそうな、あの恐怖‥。
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雪は息も出来なかった。
慄然とした小さな叫びを上げながら、雪はその身を縮こまらせた。
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淳は彼女の反応に、目を丸くした。
二人を包んでいたあの温かい空気が、手からこぼれ落ちていく。
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次の瞬間、雪はハッと我に返った。
「あ‥!び、びっくりしちゃって‥!ご、ごめんなさい!」
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先輩は何も言わない。
わざとじゃないんですと弁解しながら、雪は自分を責めた。
何やってんの私! ありえない!!
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先輩はそんな雪を見て、「大丈夫だから気にしないで」と言った。
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そろそろ授業の時間だ、と言って先輩が雪を教室へと促した。
並んで歩きながらも、雪は自分の行動に激しく後悔していた。
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頭を抱える雪を、淳は横目で見ていた。
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先ほど目にした彼女の反応に、彼も又去年の記憶を思い出していた‥。
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<刻まれた記憶>でした。
今回の前半部分は個人的に好きなシーンです。
雪が何の音楽を聴いていたのか非常に気になりますね。
爽やかな緑道でのちょっとトキメキ感ある場面なので、こんなLove全開popはいかがでしょう。
Yoseob & Eunji - Love Day MV [English subs + Romanization + Hangul] HD
完全私の趣味で上げただけなのであしからず‥。
そして皆さんの「トキメキソング」聞きたいです!
聞くだけでワクワクする、ときめく、萌える!というオススメがあれば、コメント欄にて教えて下さい☆
後半は水面下にあった苦い記憶が出てきてしまいましたね‥。
雪の怯えっぷりが半端ないです。
これを受けて、淳の彼女に対しての態度が少し変わっていきます。
次回は<なんでもいいから>です。
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こりゃもっと攻めないと、とか?
過去はもう忘れるよう切り出そう、とか?
一回ちゃんと謝って仕切り直せばいーのに。
あん時は誤解しててあんな態度とってすまなかった、って。
なにかっちゅーと、なかったコトにしよーとすんだから、この子!
www.youtube.com/watch?v=Oo0t56dbPKo
何がぴったりするかと言えば、歌詞です。軽快なフレーズで無邪気にモーションをかけるオトコと、それをなかなか信じきれないオンナのやりとりになっています。
www.boom4u.net/lyrics/view.php?id=10H31B722BA3FB2
苦くて暗い記憶がよみがえる後半のシーンで、イヤホンからかすかにこの曲のサビが聞こえてくる…とか想像して、一人で勝手に悦に入ってしまいました。
yukkanenさんの曲も可愛らしい感じでしたね~!爽やかなボーカル二人の歌に、特に男の子(幼く見えました笑)の歌声が甘いというか、魅力的でしたねー^ ^♪
こちらのBlogに触れてからというもの、韓国のちょっとした情報や歌などに少しづつ身近に感じられるようになってます^ ^
あまり触れなかったジャンルでもあったので、こんなきっかけから興味をもつなんて思いもしなかったです!最近韓国にみょ~に反応してしまうkotokoでした^o^
あ、ちなみになのですが
トキメキソング!
あんまり深く考えずに感覚で聞いてたりもするので、選曲は難しかったのですが、、
この歌詞可愛いな~て、初めて学生のころに聞いてキュンときた歌です(*^^*)
多分恋歌ではいくつか上がる内のひとつかなーと。
1/2 川本真琴
http://m.youtube.com/watch?v=uzeV7Ba3Mv8&desktop_uri=%2Fwatch%3Fv%3DuzeV7Ba3Mv8
最後のカット、個人的には顔と首を区切ってほしかったです(爆)
先輩はこれ以降雪ちゃんに対して施し攻撃をしかけますからね、過去のことを解決しないまま恩を重ねれば良い方向へ行くと信じてるんでしょうな。
トンチンカーン!
>青さん
すごい!
>苦くて暗い記憶がよみがえる後半のシーンで、イヤホンからかすかにこの曲のサビが聞こえてくる…
おお、想像するとドラマみたい!
リンク先拝見しました。曲はポップなのに歌詞は先輩と雪にピッタリ!!すばらしい~~^^
ありがとうございました!
>kotokogotoさん
川本真琴懐かしい~!歌詞かわいいですよね!
こんなラブ展開見たいですよねぇ。
私もチートラにはまってから、街でハングルを見ると「おっ」と思うようになりました~!テレビのハングル講座とか録画するようになったり^^
世界が広がるって楽しいですよね~!
はい!私のトキメキソング、マイラバ全般です。とりあえず『man&woman』にします。
ここでのトキメキとはちょっと違うかもしれませんが、思春期で独特な雰囲気だった中学生時代を思い出します。その頃よく聴いてカラオケでいつも歌っておりました…^ ^
川本真琴さんも同じ頃ですね。
あぁ懐かし。
そうです師匠。先輩、顔のくびれなくてのぺーんとしていて…。
はい、残念な青田淳行き~。
のっぺりならまだしも、のぺーん‥(笑)
さすがりんごさんです。
確かに「のぺーん」ですね、あれは。
あはは、いちいちツボです。
マイラバ、懐かしいな~
白いカイトとかman&womanとか好きでしたよ~
曲を聞くとその頃の思い出が浮かんできますよねぇ。