
翌日。晴れた空に鳥の声が響いていた。
まだ期末試験は続く。

味趣連の三人は肩を並べて教室へと急いだ。
試験が始まる。

終わると三人は手を振り合って別れた。互いにエールを送りながら。
「試験がんばってー!」「アンタもねー!」

雪は次の試験が行われる講堂へと急いだ。
お馴染みのメンバーににこやかに挨拶する。
「こんにちは」

「赤山ちゃん、ハ〜イ?」「やぁ」

雪の顔を見て、柳がニヤニヤしながら言った。
「さては沢山勉強出来たな?表情が明るいぞ?」
「はは、そうですか?」

雪は軽く笑いながら柳の隣の席に腰掛けた。
会話する柳と佐藤。雪はふと後ろへと視線を流してみる。
「面接のメールがさぁ‥」「おお」


目に入って来るのは、心を憂鬱にさせるメンバー。
平井和美、横山翔、柳瀬健太。

清水香織、糸井直美。


心に刺さった棘が一本一本抜けて行くように、一人二人と消えて行く。
ようやく現実に戻った雪が見たのは、こちらを睨む視線など一つもない世界だった。

後ろを向いたままの雪を見て、柳は不思議そうな顔をする。
「どしたん?」「あ、いえ。なんだか講義室が寂しい感じがして‥」

その雪の答えに、柳はふっと笑った。
「そーか?静かになって良かったんじゃね?」

「平和に試験受けれるよな」

憂鬱から解放されたその世界に、未だ雪は慣れてはいないようだった。
それでも柳の言葉を聞いて、ホッとしている自分を認めざるをえない。
これって満足感か?それもちょっと笑えるな

どこか落ち着かない気分だった。
例えるなら、今までずっと歩いて来た獣道が急に補整された道路になったような。
何の障害物もないその道は、確かに歩きやすいのだが。
「ていうか健太先輩はどうしたんだろう?」「バイト地獄らしいぜ」
「この時期に?」

一方柳瀬健太は、
補整された道路どころかこの先どこに進めば良いのかすら分からなくなっていた。
ズーン‥

突然ですが、ここで彼のコーナーです

<今日の健太くん日記<1>>

「カテキョの時間、勝手に変更しちゃダメでしょ〜?俺にも予定ってもんがさぁ‥」

ピキピキと顔を引き攣らせた健太が彼の受け持っている生徒にそう説教するが、
生徒は二人共不服そうに言い返して来る。
「俺だって予定があるんスよ。俺って忙しいヒトなんで」

「その時間はダメって言ったのは先生の方でしょ?他のカテキョがあるからって。
いきなりコマ増やして来たのは先生の方じゃないですか」

「あー母さんがコーヒー代忘れててくれなくてー」
「そ、そーか?そんじゃ俺が払っとくわ」「先生は?」
「俺はいいよ‥」(ふざけんなよ!チョロまかしやがって!)

「お前今どこだ?!ネカフェだろ!音でバレバレだっつーの!」

しかも一方は調子に乗ってコーヒー代をせびり、一方は授業をバックレる有様である。
年下にナメられ振り回され、健太はストレスの限界だった。
「タバコ‥タバコ‥」

からっぽ‥

「ぐわああああ!」

健太は地団駄を踏みながらこの無情な現実を嘆き、その場で暴れた。
そしてダメもとでもう一度、青田淳にメールを送ってみた。
卒業試験も単位も絶望だわ。
俺、そんな悪いことしたか?俺が金欠で困ってんのは重々承知のはずだろ?フツーここまでするか?
今家教もバイトもやっててこれ以上何も出来ねぇよ。俺の人生どうしろってんだ!

すぐに来る返信。
先輩の事情まで考慮しないといけませんか?
一人で用意出来ないような大した額では無いと思いますけど。

その心無い返信を読んで、健太は逆上し携帯を放り投げた。
「この薄情ボンボン野郎が!んだと?!大した金額じゃねーだと?!気が狂いそうだぜぇぇぇ!!」

イライラと惨めさと、先の見えない不安と怒り。
健太は取り乱したり落ち着いたりと随分と忙しい。
「ふ‥いいさ‥我慢してやるよ。数日待ちゃバイト代が入るしな‥」

「けどその金全部払っちまったら俺はどーすりゃいいんだ?!」

「いや、けどそれでアイツと手が切れんなら!これが手を切らずにいられるかっての!」

イライラMAXでポケットを探るも、何も掴めはしなかった。
「煙草もねぇし!クソーッ!」

先行きがまるで見えない閉塞感。
タバコの煙は吐き出せないが、その道筋は白く煙って見通せない‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<満足感と閉塞感>でした。
このコマ!びっくりしたー!


一瞬平井和美や横山翔が戻ってきたと思いましたよ

彼ら全員がいなくなるまでかれこれ6年掛かったと思うと感慨深い‥。
あ、でもまだ健太がいますね。
この人はどうやっていなくなるのか、といういなくなる前提で考えちゃいますね。。
次回は<寄す処>です。
☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は文章が途中で切れ、
半角記号、ハングルなどは化けてしまうので、極力使われないようお願いします!
人気ブログランキングに参加しました



障害となっていた存在が彼女の前から尽く去っているということが分かる1コマでしたね…!
時々このブログを最初から読み返しているため、このページを最初にみたときは私も「あれ…?過去編のブックマーク開いた?」とおもいました()
雪ちゃんはたしかに淳の影響を徐々に色濃く受けているようですが、同じように河村氏など色々な人物の影響を受けているし、他者の影響を受けるという点はほかのキャラクターにも言えることではないかと思います(そして、そんな人物の心情変化を描くのが作者さんは上手だなーって)
雪ちゃんが黒淳化しつつあるとしてもこの回を読む限りでは、そんな自身についてどこか自戒的なあたりがまだ我らが良識人!!って感じます。雪ちゃん、賢い立ち回りを覚えることは悪いことじゃないんやで…!!
そして過去のブログ記事も読み返して頂いてるようで、嬉しいです〜〜。
私は最初の方は文章がぎこちなくて恥ずかしくてあまり読み返せないです‥ひぃぃ
雪ちゃんは不器用だけど、根っこが純粋だから人に影響されますよね〜。本当、みんなの良い所を沢山取り込んで楽に生きていって欲しいです。
とりあえずだぶるさんの最後の関西弁が気になるんやで‥!笑