![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1d/80/9cb74be7c38bb340f4e3a79936fd4154.jpg)
不意に呼び止められ、振り向いた静香が目にしたのは、厳しい顔をして立っている雪の姿だった。
雪は覚悟を決めると、静香の方を見ながらハッキリとその意志を口に出す。
「あなたが河村氏のお姉さんだから、今まで何も言わなかったですが、この前のこと‥。
”先輩の彼女だ”って直接私に言って来たり、今こういう形で青田先輩の話を出して来たり‥」
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雪は顔に怒りを滲ませながら言葉を続けた。
「正直不愉快です。こんなことをしてくる意味も分かりません」
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突然の雪からの攻撃を受けて、静香はふっと片眉を上げた。
そのまま何も言わない静香を、雪はじっと睨み続けている。
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すると静香は雪の方へ歩み寄り、その顔を覗き込むような仕草で雪に問い掛け始めた。
「え~?何なの?どうして突然その話が出てくるの?謝ったじゃん?冗談だって」
「たとえ冗談だとしても、私は不愉快です!」
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しかし雪は誤魔化されない。キッと静香のことを見据え、ハッキリとこう続けた。
「それにそんな冗談言って、誰か信じたらどうするんですか?
もうそんなこと言うの止めて欲しいんです!」
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雪は真剣な顔をしてそう言った。
しかし静香は首を傾げると、突然雪の方を指さして笑い始めたのだった。
「はぁ?はぁぁ~~??」
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いきなり笑われて雪は怯んだが、気を取り直して言葉を続けようとした。
しかしサングラスを外し目の前に立った静香の瞳と向き合った途端、雪は言葉が紡げなくなった。
「おい、」
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静香は瞳孔の絞られた瞳で雪のことを見据えながら、瞬きもせずにそう声を掛けた。
雪は鼓膜の裏に響く、自身の心臓の音ばかりが気になってしまう。
「アンタ何か勘違いしてるみたいだけど‥」
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静かな、それでいて低く通る声が、重々しく雪の耳に届いた。
「アンタあたしの弟とあたしの幼馴染み、あの二人と上手くいってると思ってるみたいだけど、
いつまでそうしていられると思ってるワケ?」
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目を丸くしてそれを聞く雪の表情を見て、
は、と静香は息を吐き捨てた。
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静香はニヤリと口角を歪めながら、何も言わない雪に向かって話を続ける。
「あの二人超イケメンだから、アンタ正気に戻れないんでしょ?
私ってシンデレラ~?みたいな、結婚夢見ちゃう~みたいな?それとも二人の男の間で揺れる、
ドラマのヒロインみたいな気分なのかしら?」
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静香の言葉は鋭利な刃物のように、その弱みや急所を目掛けて飛んでくる。
その言葉の先で相手が何も言い返せなくなるように、先回りしながら。
「てかアンタ達付き合ってどのくらいなのよ。
長くて半年ってとこ?それじゃああたしとはどのくらいの付き合いだと思う?」
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そして雪は、案の定黙り込んだ。
下を向き口元をぎゅっと結ぶ雪を、静香は高い所から見下ろす。
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雪は一人、心の中で呟いた。
そうだ‥三人は、私の知らない過去を共有してる。
私は絶対に、入り込めない‥
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ぐっと拳を握り締める雪に向かって、静香は自分の優位を見せつけるかのような言葉を続ける。
「アンタ、互いの何をどのくらい分かってるっていうの?
人と人との関係ってさぁ、浮き沈みはあるとしても、長続きするのはマジ並大抵なことじゃないじゃん。
でもアンタは、まだそれを始める段階ですらないじゃない」
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静香には自負があった。誰よりも近くで淳を見てきたという誇りが。
それが彼女を何よりも強くさせ、どの”淳の彼女”にも負ける気がしないのだ‥。
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静香はニッコリと笑顔を浮かべると、雪の肩を軽く叩いた。
己の優位を盾にしながら、彼女に宣戦布告する。
「だからさぁ、マジ調子乗んな?」
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静香のその言葉を聞いて、それまで黙っていた雪の頭の奥で、何かがブチッと切れた。
こンの野郎~~~とワナワナしながら、雪は口元を引き攣らせながら話し出す。
「‥昔仲良かったからって、今も優位だってわけじゃないでしょう‥?」
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は?と聞き返す静香に、雪はギリッと歯を噛み締めながら尚も続けた。
「必ずしも、長く続く関係だけが良いものとは限りませんよ。
そちらさんは、今あの二人との関係は良好なんですか?」
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もうヤケクソだ、と雪は思った。
この後がどうなろうと、もう受け取るしか無い。静香からの、宣戦布告を。
「そうじゃないみたいですけどねーーぇ‥」
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雪はそう言って顔を上げ、静香からの宣戦布告を受け取り、そして返上した。
すると雪のその言動を前にした静香の顔が、ぐにゃりと歪む。
「死にてぇのか?」
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ひぃぃぃぃーーーっ!
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ドスの利いた声でそう言った静香を前に、雪はヒイッと息を飲んだ。
だが今にも殴りかかって来そうな形相の静香も、あと一歩のところで押し留まっている。
「あらあら‥この口がそんなこと言いやがったのかしら?
可愛いわねぇ~」
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完全に据わった目つきをしながら、静香は雪の頭を軽く撫でる。
そしてその気概とは裏腹に動けなくなっている雪に向かって、静香は脅しを掛けた。
「ねぇ社長令嬢、口は達者だけど腕っぷしの方はどうなのかしら?
今までアンタみたいにピーピー言った子たち皆、あたしにボコボコにされたことを知っての上で、
こんな風に言ってるのよね?」
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その幼稚な脅しに対し、雪は単純に腹が立った。
バッと顔を上げ、大きな声で言い返す。
「知りませんよ!そんなの子供同士の喧嘩で通用する内容でしょう?!」
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その剣幕に気圧される静香に向かって、雪はギリッと歯を食いしばりながら言葉を続けた。
「昔は何をどうしていたのか知りませんけど!
今その年齢で人を殴ったらどうなるか、さすがにご存知でしょう?そちらさんに将来はありませんよ!」
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「口だけは達者‥」と呟きながら、静香は怒りにブルブルと震えた。
雪は自身の顔を差し出しながら、静香を挑発してみせる。
「殴ってみますか?したら痛くて死にそうだって言いますからね。
私は手出ししないから、ほら、殴ってみなさいよ!」
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その雪の言葉を聞いて、静香は遂に拳を固めた。ブンッ、と重たい音が空気を裂く。
「殴れって言うなら殴ってやるっー‥!」
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雪は身を庇いもせず、自ら殴られる為に静香と向き合った。
虎とライオン、二匹の猛獣が牙を剥きながら、今相対するー‥。
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しかし静香の拳が雪の頬に当たるより先に、雪は鼻から一筋の鼻血を流した。
雪は鼻に違和感を感じ、手で触ると手の平に血痕が残っている。
「あ‥」
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静香はその突然の出来事に、事態が把握できず拳を固めたままフリーズした。
鼻を押さえる雪に向かって、「?まだ殴ってないけど‥」と言って心底不思議そうだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/14/51/f592f4341d37f007af029c3f81b0aa4f.jpg)
ハッ!
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しかしそこで静香は我に返った。
今雪を殴ることのメリットは何も無く、むしろデメリットばかりが増えるということに気づく。
「あたし殴ってないわよ?!脅しはしたけど殴ってない!ね?!
淳ちゃんには言わないでね!?あたしのクレジットカード~!!」
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そう言って焦る静香と、鼻を押さえて俯く雪と‥。
こうして、両者の宣戦布告はその結末を見ないまま、一筋の鼻血によってお流れになったのだった‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<宣戦布告>でした。
雪ちゃん、真っ直ぐですね~~。
話をはぐらかしながら相手を煙に巻いていく静香に対して、本当にとことんストレート‥。
そして、あの二人(淳と亮)と「昔から親しい」静香と「今親しい」雪との、プライドのぶつかり合いは見応えがありますね^^!
案外この二人、違うところで会っていたなら良い友人になれたのかも、ですね‥。
次回は<痕跡の正体>です。
*そしてそして‥今日は太一の誕生日です‥!!おめでとう太一!
いつまでも真っ直ぐで甘えん坊な末っ子長男で居て下さい。聡美とお幸せに!
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亮さん、姉が勝手に告っちゃってます…。
それに静香の台詞は「あの二人共がイケイケな見えしてて正気に戻れないらしいじゃない。」何か変な日本語・・・ごめんなさい、私の日本語力じゃこれまでです。
かにさんの最後の一文、じわじわきます。笑笑
以前、雪ちゃんが静香と相対した時(例の、静香が揚げ物をガリガリと食べた時です)は、雪ちゃん、静香を“超キレイ・・・”などと思って萎縮していたけれど、ここへきてやっと“私は先輩の彼女っ!”的な気持ちになれたのかと思いました。亮や先輩から静香のことを聞いて、余裕?も出てきたのカナ・・・?
静香さんにとっても、自分の美貌(+脅し)が効かないのは初体験(?)なのでは・・・?
静香の >「あたし殴ってないわよ?!脅しはしたけど殴ってない!ね?! 淳ちゃんには言わないでね!?あたしのクレジットカード~!!」 のセリフには笑いました!(^▽^;) 何というかこの二人、ケンアクそうでも結構漫才みたいな...。 師匠の仰る「話をはぐらかしながら相手を煙に巻いていく静香 vs. とことんストレート雪」を意識したら、なんだか可笑しくて・・・(^^;
雪ちゃんピンチ(!?)な場面でも、清水香織や横山を相手にしていた時と違って、今回の静香との場面は、どっちもイケイケ的な(ワクワクな)気分です。(清水香織・横山の時は背筋がムカムカ~な嫌~な気分でした。平井和美の時は今回に近かったです。)
それにしても雪ちゃん、亮のときは左鼻血、今回は右鼻血って、ちょっとヤバくないですか・・・?
しかしほんと~お亮さんが好きだって言ってないのに静香ったら余計なことを・・・
ここへきてやっと“私は先輩の彼女っ!”的な気持ちになれたのかと思いました
だって、致しましたしね~^m^
それにしても、こんだけ静香姉さんが「亮があんたを好きなのよ」って勝手に告ってるにも関わらず、「え!?そうなの!?////」(もしくはやっぱり!?////)となっていないところが流石です、いろんな意味で。。。それだけ先輩が好きで他の男子がアウトオブ眼中(←死語)なのか、単に鈍感なのか。。。
ゆきちゃん白血病とか悲しい落ちで終わらないか不安になってきた
もう‥マジで亮さんドンマイ‥T T
>CitTさん
なるほど‥!なんとなく、ニュアンスは分かりました‥!自分なりに直してみます‥!
ありがとうございますー!
>ぽこ田さん
昔からの幼なじみと今の彼女の対決‥これだけ見れば立派な恋愛漫画ですよね!(だから最初から恋愛漫画だって!笑)
>どんぐりさん
読者は、静香の過去や今までの経緯を知っているからこそ、香織や横山が出てくる話とは違った目でこの”悪役”を見れますよね~^^
そして今まで静香を怖がってばかりだった雪ちゃんが真っ正面から対抗しようとするまで変わったことも、大きいですね。
確かに雪ちゃん両鼻から鼻血って‥ヤバイ‥。
>むくげさん
ここで記憶喪失やら病気やら出て来たら一気にげんなりですもんね‥。どうかこのまま最終回までいってほしいですね。
>めぷさん
なんか雪ちゃんって、あんまり動揺しませんよね‥。特に亮に対して‥。好みのタイプのはずなのに‥。
>にゃにゃにゃさん
悲しいオチ‥で終わったらコメ欄炎上しますよね‥^^;
病気パターンは止めて欲しいですね‥!
イケイケ‥な見た目‥?ってことですか‥?淳と亮が??
「正気に戻れない」のも淳と亮ですか??
すいません全然分からない‥!