マーク・ラッペ氏が書いた『皮膚 美と健康の最前線』(川口啓明・菊地昌子:訳、大月書店:1999年刊)という本をご紹介しています。今回は第12回目です。
◆若々しい肌の美容法
古代ローマの女性は、ハチミツ、ワインの沈殿物、スイセンの球根をまぜた練りものを顔に塗って若々しさを保とうとしたそうで、肌の美しさを追い求める気持ちはいつの時代も変わらないようです。
現代のアメリカ人は、可処分所得の6~10%を化粧品についやしているそうで、この支出の割合は、人びとが自分の外見にどれほど精神的な負担を感じているかを示しているとラッペ氏は考えます。
化粧品会社は、大きすぎる毛穴、不格好な鼻、テカテカした鼻、シミのある肌、薄くて色が悪い唇、ひどい脂性の肌、ひどい乾燥肌、蒼白な肌、浅黒い肌、などに注意を払うよう大量の宣伝を行なっていますが、ときには宣伝された化粧品を用いると逆効果になる場合もあるので注意が必要です。
たとえば、化粧品に含まれる油分によって、乾燥を防いでいる皮膚の油分がはぎとられ、ニキビが悪化したり肌の乾燥がめだったりすることもあるそうです。
石けんや皮膚収斂剤は、肌を保護している自然な油分を取り除いて乾燥を加速し、老化した肌の外観をもたらすので、たとえ「うるおい」を保証している製品でも使い過ぎには注意が必要です。
ケミカル・ピーリングは、若々しい肌の外観を一時的に与えますが、繰り返すうちにやがて肌は消耗し、すっかり乾燥してしまうそうで、これも要注意です。
若い人の皮膚には、自然なやわらかさとなめらかさがありますが、皮膚がこのような特徴を保つためには、最も外側にある角質層に十分な水分が供給されることが不可欠です。
皮膚に水分を「補給する」化粧品がさかんに宣伝されていますが、皮膚が保持している水分は外側からはわずかしか供給できないそうです。皮膚の水分のほとんどは血漿とよばれる血液中の水分から補給されるのであり、これらの水分は表皮のバリアの脂質層のすきまからしみでています。
水分保持の基本原則が理解できれば、若々しい肌を維持するのはむずかしいことではありません。
まず、強力な石けん、洗剤、溶剤などに過度に触れるのを避けることです。
また、肌を洗うときは、冷水をもちいて、石けんをほとんど使わないようにすれば、肌の質を改善できるそうです。
そして、皮膚の脂質が少なくなっている場合は、タオルで水分をふき取る前にスキンクリームをぬると皮膚の脂質を修復できるそうです。ラッペ氏は、肌を修復する作用がある程度科学的に確認されたものとして、アボカド油のクリームをあげています。
肌に若々しい外観をもたらす効果が最も高いのは、形成外科手術によって真皮にコラーゲンを注入する方法だそうです。ただしこの方法には危険もあって、体がこのようなコラーゲンを異物として認識すれば、免疫反応によって体中のコラーゲンが破壊される可能性があります。
もっとよいやり方は、自然なビタミン類(ビタミンE、ビタミンAなど)を用いることだそうで、たとえばレチンAというビタミンA関連物質を含んだクリームを肌にぬると、表皮をつくりだす基底細胞層を刺激でき、真皮のコラーゲンの再生も促され、肌が若々しくなるそうです。
ただし、レチンAをぬった肌が太陽光を浴びると、有益な作用がすべてなくなり、小さな炎症でも悪化するので、注意が必要だそうです。
ラッペ氏は、老化によって皮膚にシワがより、弾力がなくなるのは避けがたいという考えは神話に過ぎないと断言しています。彼の経験では、ほとんど太陽光を浴びずに生きてきた人の肌は、70歳をこえても非常に若々しいそうです。太陽光が肌の大敵であるのは間違いないので、海水浴や日焼けサロンはほどほどにした方がよさそうですね。
タバコも肌の大敵だそうで、カリフォルニア州の研究チームの調査によると、40歳以上になると、その人が吸うタバコの本数とシワの程度に相関関係があることが分かったそうです。
次回は、皮膚と自己意識についてのお話です。なお、本の順番では、次は紫外線の物語になりますが、これは本ブログの「紫外線の害」ですでにご紹介しているので、割愛させていただきます。
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