前回は、がんを注射で治す方法をご紹介したので、今回はそれに関連して、『癌の新研究 ガンは注射(ワクチン)で治る』(蓮見喜一郎:著、学風社:1960年刊)という本をご紹介しましょう。
この本の著者の蓮見喜一郎(はすみきいちろう)氏は、明治37年生まれで、大正14年に千葉大学医学部を卒業し、昭和6年以来がん研究に着手し、昭和12年に医学博士となった人物だそうです。
この本によると、蓮見氏は、昭和22年に世界で初めてヒトがんウイルスの電子顕微鏡写真の撮影に成功し、その結果、がんの原因はウイルスであり、これを撲滅する方法は免疫療法でなければならないと主張するに至ったそうです。
そして、がんのウイルスを紫外線等で減毒して、病原性を失わせたワクチン(蓮見ワクチン)を作成し、このワクチンを患者に注射する免疫療法によって、第一期(がんが近くのリンパ腺にまだ転移していない状態)、第二期(がんが近くのリンパ腺に転移した状態)のがん患者はほとんど完全に治癒したそうです。
また、第三期(発生場所から遠く隔った、無関係の場所にがんが転移した状態)の重症患者でも何%かは全治し、がんの再発もほとんど予防できたそうです。
ただし、この蓮見ワクチンに対しては、熱烈な支持者がいる一方で、強く批判する専門家も多く、どう評価していいのか迷うところですが、専門家が蓮見氏を嫌う理由は、以下のような蓮見氏の考え方に原因があったのかもしれません。
◆『癌の新研究 ガンは注射(ワクチン)で治る』本文199ページ2行目から
ガンは、何等かの刺激によって起るという、漠然たる考えからは、ガンは切りさえすればい
い。切ればガンは治るといった方法が出てくるわけですが、外科的に、ガンを手術いたします
と、その大多数は再発という形で、わずかの間隔をおいて、また、ガンが再発してまいります。
再発の場合には、その発生した場所によって、隣接臓器にも非常な影響をあたえ、二度目の
ガンは手術ができないとされています。そのために、再発ガンは、実際には、お手あげの状態
になっているのが現状であります。
その再発ガンの予防のために、まだ、ガンが再発しない時期から、ラジゥム、コバルト、ア
イソトープなどの放射性物質を使って治療いたします。
しかし、こうした予防措置を講じている場合ですら、手術後の再発は日常茶飯事なのであり
ます。要するに、放射線療法では、患者にも苦痛を与え、しかも、再発の措止すらも困難であ
るというのが、残念ながら、現状であります。
“ガンは治る″という豪語も、見方によれば一つの虚勢とも見られます。
◇
これは、手術や放射線照射ががんの原因を治療していないことから、当然の指摘ですが、この本が出版された1960年当時は、本ブログの「早期発見早期治療のウソ」でご紹介した田崎勇三氏が、早期発見・早期治療でがんは根治すると日本全国に宣伝していた時期ですから、蓮見氏の正論が医学界の支配者層を敵にまわすことになった可能性はありそうです。
私としては、第三期の重症患者の治癒率が「何%」程度しかなかったことが問題だと思うのですが、蓮見ワクチンを批判する専門家の論点はそこではなく、例えば『「癌と外科医・内科医」―医学とヒューマニズム―』(小田切信男:著、東京独立ロゴス社:1968年刊)という本によると、蓮見氏の説は非科学的で、彼はがんでないものをがんと称しているにすぎないというものでした。
しかし、『いのちと医学の間 ガン治療をめぐる医学界の黒い霧』(村上信彦:著、大和書房:1966年刊)という本によると、逆に大病院でがんの診断を受け、蓮見ワクチンで助かった人が多数いるそうなので、これは水掛け論的な感じもします。
また、現代では、子宮頸がんがヒトパピローマウイルスによって引き起こされるとして、予防ワクチンを打つよう盛んにキャンペーンが行なわれているわけですから、単なる商売上の問題として、ワクチンが作れなかった人々による妨害だったのかとも思われるのです。
なお、蓮見ワクチンを使った実際の治療法は、『蓮見ワクチン病症別療法 Ⅳ 子宮ガン・乳ガン・膀胱ガン・前立腺ガン・直腸ガン』(村上信彦:編、細川書房:1971年刊)という本によると、一般的には普通ワクチンとよばれるものを月6回(5日に1回)注射し、がん反応がマイナスになればしだいに注射の回数を減らしていくそうです。
また、重症の場合は患者自身の尿から自家ワクチンを作成し、症状によっては栄養注射や増血剤を併用することになるそうです。
蓮見ワクチンによる治療を受けることは現在でも可能なので、ご興味のある方は「珠光会」で検索してみてください。
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