「志」の英語教育

英語教育実践について日々の雑感を語ります。

ジョークを使った想像的読解力の養成(1)

2008-04-28 07:40:15 | リーディング
伝統的なリーディング指導を行うとき、多くの場合以下のような手順がとられよう。

まず、教える対象の生徒の力を頭に描きつつ、語数とテキストの難易度などから適当な長文問題集が見繕われる。授業ではそれを頭から順に和訳させる。あとは、素材の難易度を徐々に上げていく。

この方法が全く無意味だとは言わない。むしろ、これにより読解力のどのような部分が、どのくらい身につけられるかは興味深いところである。

しかしながら、この方法だけではおそらく養成しにくい力が読解力の内には存在するようだ。それは筆者のメッセージを想像しながら読む力であり、また自分の想像が論理にかなっているかチェックしながら読み進める力である。

こういった力を意図的に育もうとするとき、避けられないのは綿密な素材選びである。その力の大切さを学習者に感じさせることのできる教材と、その力なしには解決できない「仕掛け」を指導に組み込む必要があるのではないかと考えるからだ。

実は、これに関して自分の中にいくつかのアイディアはある。その一つがジョークを使って「落ち」の部分を考えさせるというものだ。グループワークで試したら予想以上に反応が良かった。シリーズでいくつか紹介するつもりであるが、今回はその一つ目。

A duck walks into a bar and asks, "Got any grapes?"
The bartender, confused, tells the duck that no, his bar doesn't serve grapes. The duck thanks him and leaves.
The next day, the duck returns and says, "Got any grapes?"
Again, the bartender tells him that, no, the bar does not serve grapes, has never served grapes, and, furthermore, will never serve grapes. The duck, a little ruffled, thanks him and leaves.
The next day, the duck returns, but before he can say anything, the bartender begins to yell: ''Listen, duck! This is a bar! We do not serve grapes! If you ever ask for grapes again, I will nail your stupid duck beak to the bar!''
The duck is silent for a moment, and then asks, ''Got any ( 1 )?''
Confused, the bartenders says no.
''Good!'' says the duck. ''Got any ( 2 )?''

( 1 )、( 2 )にはどんな言葉が入りますか。
※ ジョークはJokeBug.comのものです。

リーディングとはどういうことか

2008-04-18 20:03:46 | リーディング
3年生向け授業、第1時間目はオリエンテーションである。受験英語の手ほどきのつもりで、学習に向かう姿勢・態度などについて覚えておいて欲しいことを一通り話した。

その中で最後に話したのが「リーディングの力とは何か」についてである。いわゆる行間を読むこと、つまり直接的に表現されていないことを読み取る力の大切さを説く。

例えば、「メスを握る山田の額に汗が光る。それを見た花子はそっとハンカチを持つ手を伸ばした」といった文からは、おそらく山田は医師で花子は看護師であること、二人は手術の最中であり簡単な手術ではなさそうだということが推測されよう。

このように想像力を活用しながら英文を読む力は、決してリード&ルックアップやシャドーイングなどのトレーニング系指導法だけでは育たないというのが私のスタンスである。

授業から帰ると机上には数研出版さんのCHART NETWORKが。実は、このジャーナルは私の密かなお気に入りだ。

巻頭の記事は「リーディングとはどういうことか」というタイトル。筆者は早稲田大学の松坂ヒロシ先生だ。

「なんという偶然」と思いながら読んでみるとこれがとても素晴らしい記事であった。特に、「リーディングは文字を追うことでも、音読でも、暗唱でも、訳読でもない」というあたりに大いに感銘を受けた。流行に翻弄され本質を失った英語教育に対する痛快な批判である。

すぐにメールを送りたいと思い早大のサイトを見たものの、残念ながらアドレスは見つからず。いつかじっくりお話を伺いたいものである。

リーディング指導と教材選び

2008-02-07 22:18:45 | リーディング
ここ何年か音読中心の授業を追求してきた。マイナーチェンジを繰り返しそれなりの完成度を持つ指導過程になったと思っている。しかし、それと同時にこの方法の限界も見えてきた。一番の問題は初見の英文に対処する力が十分に付いていないことだ。

一つには語彙、もう一つにはリーディング・プロセスの指導にヒントがあるのではと仮説を立てリサーチに入る。リサーチといってもたいしたことではない。関連する記事をネット上で探すこと、関連のある話をしてくれそうな先生方の話を聞きに行くこと、手持ちの書籍で関連のありそうな部分を再読することくらいだ。

そんな中、筑波大学の卯城先生から興味深い話を聞くことができた。福岡女学院中・高校のセルハイ発表会での講演の中である。

---- 英語教育で読解ストラテジーについて触れることは多くなってきた。しかし、表面的な知識の伝授に終わってないか。ストラテジーが使えるようになるための指導を行っているだろうか。

---- スキーマは読み進めるにつれ変化していくものである。よい読み手は先を推測しながら読むものだが、自分の推測に論理性が保たれているかをチェックしつつ、それに従って推測を調整しながら読んでいる。読解力向上にはこの力の養成が不可欠である。

といったような話である。

さて、問題はこのアドバイスをどう活かすかだ。手元にある教科書や問題集を素材にして論理的な推測を要求するタスクをつくることもできなくはないだろう。しかし、どこにどのような仕掛けを作るかを考えるのはかえって手間だ。その割に指導のクオリティは上がりそうにない。

ここで一つ意外と見過ごされている事実に気づく。リーディング教材の選択ってもっと丁寧にする必要があるのではないかということだ。採用された教科書に載っているからというだけで、そこにある教材を頭からひとつひとつ淡々とこなしてゆく。長文問題も問題集にあるものを番号の若い順に読んでいくのみ。こんな種の読解力をつけさせたいからこの教材でなければならないのだという視点が決定的に欠けているのではないか。

他教科を担当する同僚に教えられたことがある。サブノートなど市販の副教材を漫然と使っているようでは半人前、自分の手作りの教材でしか本物の授業はできるはずがないとのこと。文法指導で同様のスタンスをとるのはさほど難しくはないだろう。しかしリーディング素材を自由自在に引き出して指導している人はどれだけいるだろうか。

良い読み手は良い教材から育つものにちがいない。