「志」の英語教育

英語教育実践について日々の雑感を語ります。

協調学習1

2013-11-30 21:39:25 | 研修
ここのところのキーワード、多読、クラッシェンにもう一つ追加されるべきものがある。それは、協調学習である。協調学習に関する情報を探っていて、あるレポートの参考文献の中でクラッシェンの名を見つけたのだ。クラッシェンの講義をこのタイミングで視聴したのは実はその流れなのである。

協調学習はグループワークを基本とした指導法であり、埼玉県において大きな取り組みになっている。そのコアは、最初のグループワークで共有された知見を、新たに組織された異なる知見を持つメンバーからなる別のグループに持ち寄り、それを融合させることによりさらに高いゴールを目指すという学習過程にある。

所属校の同僚がこの指導法を基にした研究授業に参加し、その校内服伝研修への参加に備えての情報収集時にクラッシェンの名を発見したのだ。などと言いながら、クラッシェンと協調学習のかかわりについては別の機会に回すこととし、今回は協調学習というものについて、私が理解したことについて述べさせていただく。

何を持って協調学習の定義とするかは現時点では非常に難しいが、私の学んだかぎりでは協調学習の主軸はエキスパート学習とジグソー法からなるらしい。まず、学びの対象となるある事象について、考察の視点を複数設置し、それぞれの視点においての考察をグループ内で深める。これがエキスパート学習である。

次に視点を共有したグループを解体し、異なった視点を持つメンバーを集めてグループを再構成する。新しいグループにおいて事象に対する多角的な視点を共有することにより、理解や考察が縦の深みと横の広がりの双方を持つようになる。これがジグソー法である。

さらに、二次グループそれぞれの代表者が全体に向けて話し合いの様子を報告することにより、考察に厚みが増すといった具合である。

この指導法はCoREFという団体が主導して広めているようである。下世話な話だが、佐藤先生との関係性も含めて興味をひくものであるのは間違いない。

にほんブログ村 教育ブログ 英語科教育へ




多読の掟

2013-11-29 10:06:06 | リーディング
偉い先生方はそうもいかないだろうが、一指導者とすれば数多ある指導法のいいとこ取りで授業を組み上げても何ら問題はない。気をつけておかなければならないのは、採用する指導法の意図するところが何で、どんな力をつけたいのか。そしてなぜその力が付くと見込まれるのか、その指導法使用上の注意すべき点は何か、弱点は何かといったことなど。ドリルがダメと一概には言えないし、ディベートもやればいいというものではない。

そこで重要になるのが実践例の研究や理論的背景知識の収集ということになる。ところが、その中で指導法の根幹となる原理・原則に疑義が生じることもある。「一派」に加わるつもりがないのなら、そこを無視したとしても授業運営上差支えなければ別にいい。ただし、ナイーブにそうしたのか、あるいは敢えて意図的にそうしたのかでは、その後の検証の仕方も変わってこようというもの。だから、機会があればその筋のしかるべき人にしっかりと質問しておくことが必要だと思う。

前置きが長くなったが、多読指導の話の続きである。いわゆる多読指導にはいくつかの「掟」が存在し、それが逆にこの指導法の敷居を上げる結果となっているように感じる。私の思うところでは、要するに楽しくたくさん読めればいいのではと感じるわけで「作法」がどの程度重要なのか判断に迷う。つまり、次のようなことである。

1 学習者が何を読むか決める。
2 理解度のチェックはしてはならない。
3 グレイディッド・リーダーズなどの教材を使用。
4 辞書は引かない。

1はラーナーズ・オートノミー、2はモチベーション、3はそれ以外に適切でアクセスの易しいオルターナティブがあるかという問題、4は帰納的に習得といった関係からだろうが、その決まりごとを破ることが活動全体をスポイルする致命傷になるかどうかは分からないはず。機会があれば私も聞いてみます。

にほんブログ村 教育ブログ 英語科教育へ

今井先生とクラッシェン博士

2013-11-27 22:28:13 | 文法
試験が近いということで放課後は自習監督として生徒におつきあい。合間を見て学級文庫にあった東進今井先生による英語学習の指南書を流し読み。印象に残ったのは、やはり「まずは文法」という件。先日のクラッシェンの講義と好対照ともいえる。

クラッシェンは多読によるインプット先行型の学習と文法・語彙を意図的に学ぶ伝統的学習法を比べ、前者は楽しんで欲しいものが得られるwin-winの学習法、後者は苦しんで欲しいものを得ることが難しいlose-loseの学習法と評した。(さらに過程と結果で得ようとするものが逆転しているという面白い指摘もあった)

ここで思い出されるのが、何かを学ぼうとするときには学びたいものを直接学ぶのではなく、何か他のものを通して間接的に学ぶのが有効という聖人ランディ・パウシュの言葉。つまり、コンピュータの操作を学びたいのであれば、マニュアルを読んで覚えるのではなく、コンピュータを実際に使って例えばウェブサイトを作りながら試行錯誤をしてみるのが逆に早道ということ。

とは言え、コンピュータを動かすにはそのための最低限の知識が必要だ。スイッチの場所やマウスの使い方、シャットダウンの仕方などを知らなければ、「取り敢えずやってみる」ことさえできないからだ。

今井先生のいう文法とは、おそらくはこの最低限の知識に相当すること。これすらなければ入門期の段階で大きな遠回りをすることになる(結果として大きなモチベーションダウンにつながる)であろうことはクラッシェン博士も否定されないのではないかと想像する。問題はどこまでを最低限必要な文法とするかではないだろうか。

にほんブログ村 教育ブログ 英語科教育へ


多読への誘い

2013-11-26 20:40:22 | リーディング
TUJがクラッシェンの特別講義の様子をYou Tube 上で視聴できるようにしている。クラッシェンも奨励する多読法はSSR(Sustained Silent Reading)と呼ばれるもの。好きなものを読む、面白くなければ止めるなど、日本でもお馴染みの多読法と大きな違いはない。

読むことを中心に外国語を習得した人物の例として講義の中で、Lomb Katoという通訳者が紹介されている。有名な人物らしいが私は知らなかった。Wikipediaにも出ているのでご存じの方も多いのでしょうね。

クラッシェンによれば、彼女は20代から学び始めた17カ国語を操るマルチリンガルで、言語習得の過程において目標言語の読書を通じてつけた力が大きかったらしい。そう言えば以前のエントリーでも触れたが、ピーター・フランクルも読書で外国語を学んだとNHKの番組で言っていた。日本語での読書は語と語の切れ目にスペースがないので苦労したという話が印象に残っている。

クラッシェンは54歳の時に彼女に会いまだ若いからもっともっと言葉を学べるわねと言われたそうだ。Wikipediaの英語版にもそのことが記述されている。その後、外国語を学び続けているというクラッシェンもやはり偉大であり一言語教師として見習うべき存在だと思う。

「自発的に」というところが多読指導の一つの肝であることは間違いないが、読む楽しみさえ共有できれば与える側が用意した素材でも、さほど効果に差は出ないのではないだろうか。良い文章を集めて授業で読みを共有する楽しさを当面は追求し続けたいと思っている。

にほんブログ村 教育ブログ 英語科教育へ


読まなきゃ読めるようにはならない

2013-11-23 13:48:31 | リーディング
他の多くの技能と同じように、読む力は読むことによって育まれるはずである。そこに指導者が手を加える余地があるとすれば、素材の内容、レベル、与えるタイミング、与え方などをなるべく適切なものに揃え致命的な失敗を未然に防ぐことだろうか。ここがうまくいかなければ発達の効率性は失われ、最悪の場合には学習者が読むことをを嫌うようになりうる。このメカニズムも他技能の場合と同様で、スキーや自転車など挑戦したことはあるものの苦手だという人は、習得を目指す過程で問題を起こした何か決定的な原因があったのではないかと想像する。

長州フォーラムでの徳山高専の高橋愛先生と、以前に聞いた香住丘の永末先生のお話から刺激を受け、リーディング指導の新しい企画を試験的に試みている。授業の導入として250語前後の文章を起立して読ませ、クラスの2/3程度が読み終わり着席した段階で、再読できないように課題文をしまわせる。その後、文章の肝になる情報を日本語で問う。生徒はその問いの答えを日本語で小さな紙片に記述する。

香住丘のように、わざと与える文章の難易度をジグザグに揺らすことにより多様な生徒に対応できるように工夫する。今のところ生徒には好評。後は結果が伴うことを祈るのみです。さて、どうなることやら。

県高等学校教育研究会英語部会

2013-11-21 21:58:07 | 研修
今日は県の高等学校教育研究会英語部会、略して高英研に参加。交流人事で2年間留守をしていたので、多くの方々と久しぶりにお会いできた。実は、これまでこの会とはある程度の距離を置いていたのだが、今回は話が別。なんと来年度より理事長を引き受けることになったのです。と言っても、その経緯は全くの偶然で流れや力の働きなどは全然なし。自分でも不思議です。

午前中の公開授業参観の後、総会、事例発表、講演会。今年の講師は北九州市立大の漆原朗子先生。以前、北九州JALTでのご発表を拝聴したので、今回が2回目です。前回と被るところもありましたが、お話はグローバル人材の育成にまで及び大変参考になりました。財界のための人材育成であってはならないというご指摘には大いに納得しました。

公開授業、事例発表もよかったのですが、今回の一番の収穫は同志(と勝手に思っている)の先生方との情報交換。御陰様で徐々に浦島太郎状態から目を覚ましつつあります。これから2年+1年大変な日々になりそうですが、困難を楽しもうと思っています。






新たな挑戦

2013-11-20 22:13:32 | その他
この木曜日から新たな挑戦が始まります。自分にとってはこれまでにないほど大きな経験になります。ある意味では、自分の職業人生の集大成となるものだと思います。あまりにも重たいものなのでどれだけ大変なのか想像もつきません。

今、言えることがあるとすれば、これに関わることになる全ての方に、関わって良かったと言っていただけるようなものになるよう尽力したいということだけです。長い道のりになりますが、どうか、うまくいきますように。そして、どうぞ皆様よろしくお願いいたします。