「志」の英語教育

英語教育実践について日々の雑感を語ります。

知識の活用

2009-04-26 15:32:00 | ライティング
Write it Rightという英作文のテキストを使っている。個人的にはなんとなく使いにくく感じ、あまり好みではないのだが、週12時間の授業しか持たない者としては、教材の選定に大きな発言権はないのでやむを得ない。

さて、この問題集の和文英訳問題に以下のようなものがあった。

「自動車は便利であると同時に危険でもある。1人1人の運転者は、交通規則を守って、事故を起こさぬよう常に注意しなければならない。」

解答例として示されたものがこれ。
Automobiles are convenient but dangerous. All drivers should obey the law and drive cautiously at all times.

もう一つ別解として示されたものがこれ。
Cars are both convenient and dangerous. Every driver should obey the traffic laws and be careful at all times.

「自動車は便利であると同時に危険でもある」はそこだけ単体で見るとかなり表現に幅を持たせてよいように思われる。しかし、続く文とのcoherenceを考えると、一つ目の解答例に分がありそうだ。

英文読解の指導で、あるいは現代文や小論文でもそうかもしれないが、否定語の後には筆者の本音=重要な情報が来るから注目せよという指導をすることはよくあるだろう。その知識を表現活動にも活かすといった視点が必要なのではないか。

英訳すべき日本語を吟味してみれば、筆者が指摘したいのは、自動車の便利な面ではなく、危険な面であることは明らかである。そうであれば、少なくとも外国人の使う英語としては、前者の方が聞き手に対して思いやりのある表現であるといえるだろう。

和文英訳問題の弱点の一つは、日本語の言い回しを尊重しすぎてしまうために、すっきりした英語らしい文が書けなくなってしまうことにありそうだ。これは単に日本語独特のイディオム表現を直訳してはならないというだけの話ではないようだ。


にほんブログ村 教育ブログ 英語科教育へ

It was fun!

2009-04-23 23:57:35 | 授業
例の子犬の教材を授業で扱った。
http://blog.goo.ne.jp/zenconundrum/e/e3093c35e397e110e54c810a3a18f043

いつものようにリスニング+黙読の内容理解を目的とした活動に続いて、面白いと感じる箇所とその理由の確認。生徒はこちらの意図を汲み取ってくれて、なかなかいい流れで授業は進んだ。

ひと通り笑うべきツボを辿った後で、新たな発問を思いついた。このタイミングでアイディアが浮かぶのは教材研究の甘さからなのか、それとも生の授業であるからこそ得られたインスピレーションなのかはとりあえず置いておくが、この発問が非常に「楽しい」ものになった。

「この文章の筆者と妻はどのような関係か」

夫婦の仲はうまくいっているのかいないのか、筆者は妻にどのような思いを抱いているのか、などについて周りの友達と意見交換。ひとしきり盛り上がった後で話し合いの内容をクラス全体でシェア。「亭主関白」などという意見も出て、さらに議論は深まった。

まとめとして、文字通りの意味が本物のメッセージとは限らないのがコミュニケーション、深いところにある意味を読みとるのが真の読解力という2点を強調しておいた。多くの生徒がそのあたりの面白さに納得してくれたのは、ちゃんと予習ができている証拠だろう。

授業後も内容についての議論があちこちで聞かれたり、感想を述べに来てくれる子がいたりして、とても嬉しい気持ちにさせてもらいました。


にほんブログ村 教育ブログ 英語科教育へ

iPod使用中

2009-04-22 22:30:48 | 授業
今年から音声教材はすべてiPodに移して授業をしている。iPod用のスピーカ http://www.princeton-direct.jp/shopdetail/030010000014/order/ はCDプレーヤーより軽く、教材の一括管理ができるので楽になるだろうと目論んでのことだ。リスニング用教材、テキストの音声、学校設定科目用のポッドキャストを愛用のiPod nanoに入れて常に持ち運んでいる。

これらを使用しての感想は予想外のメリットやデメリットがあり一長一短。しかしながら、教材一括管理のメリットは何物にも代え難いので問題が深刻化しない限りこのスタイルでいくことになると思う。とりあえず、今回は予想外だったことについてのレポート。まあ、お前の読みが浅かっただけと言われればそれまでのことなのだが。

一番の問題点は耐久性。教室でのスピーカ使用状況はiPodの抜き差しの多さやチョークの粉、素早くセッティングするための取り扱いの荒さなど結構過酷である。そのような使用に耐える頑丈さをしっかり見極める必要があった。

次にリモコンの機能。購入したスピーカ用のリモコンはmusicのみコントロールが可能。podcastの操作がリモコンではできないのが辛いところ。

そして、教材整理の煩雑さ。教材用のCDは音楽CDではないので、音声を移したあとデータを手入力しなければならない。これが面倒。おそらく、何らかの方法で作業が簡略化できるのだろうが、自分にはそのような力はない。

逆に、予想外によかったことは、iPodに音声CDを入れておくことで教材研究が楽になったこと。暇な時や寝る前にヘッドフォンで音声を聞いているだけで教材研究の下準備ができてしまう。これはまったく考えていなかった便利さだった。

それからスピーカの音質・音量がよいこと。音量については教室全体に音が届くか心配だったのだが全く問題なかった。むしろ、CDプレーヤーよりも大きくクリアな音が出る。

耐久性の面はできるだけ丁寧に扱うことでクリアできるはず。なるべく長持ちするように慎重に扱うつもりだが、教室向けのiPodスピーカをどこかが作ってくれないものかと期待している。


にほんブログ村 教育ブログ 英語科教育へ


長期研修

2009-04-19 17:41:08 | 研修
ゴールデンウィーク明けから、関東の某所で行われる1ヶ月弱の研修会に参加することになった。要項が届いたのが先週末で、それまでは何の研修かすら分かっていなかったのだが、どうやら英語教育ではないらしい。(進路指導でもない)

この手の研修会には参加したことがなかったが、「・・・プリズン」などと呼ぶ人もいてちょっと憂鬱な気分。残務処理や代替に来ていただく先生への引き継ぎも頭が痛い。

平日は非常に簡素な宿泊施設を利用し週末のみ外泊が許されるらしい。コンピュータは備え付けられているようだが、メールすら使えないということだ。それでも何年か前までは2人部屋だったという話も聞くので、個室であるだけましかもしれない。

この際、覚悟を決めて、この期間を最大限有効利用させて貰おうと考えている。いくつかの目標を定めそれを達成したい。もちろん、研修課題とは別次元の話です。

嬉しいニュースは、研修期間中にロッド・エリス先生が来日し東京でワークショップを行うこと。今回は福岡には来られないようなので、参加できたらラッキー。残念なのは同じ時期に木村先生の勉強会が関西で開かれ参加できないこと。

今のところ長期研修中のその他の研修会への参加予定は神大の英授研だけ。週末はできるだけ関東周辺の勉強会に参加したいので情報があればお教えいただけると幸いです。


にほんブログ村 教育ブログ 英語科教育へ


玉石混合

2009-04-19 17:00:45 | リーディング
すでに決められていた3学年用の教材として、山口書店のPERSPECTIVEという問題集を渡された。ページをパラパラめくって、ああここにあったかと思い出したのが、ある慶応の問題である。以前に使った記憶はあったが、どの問題集に載っていたのか思い出せずにいたのである。実は、その問題をある勉強会で素材に使おうと思ったのだが、見つからずに断念していたのだった。

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1111472096


妻が子犬を貰ってきたことに対してあまり快く思っていない筆者が、皮肉っぽく子犬の様子を描くというもので、ユーモアたっぷりのとても愉快な文章である。この文章の面白さが分かるためには、単に表面上のことばの意味を越える理解が必要なのだ。たとえば以下のような調子である。

Someone's dog had recently had puppies and my kind wife had volunteered to adopt one of them.
さらっと読むと何の変哲もない始まりである。しかし、冷静に考えてみると、自分の妻の話をするのに、いきなり文頭でkindなんて言うはずはない。kindは皮肉なのである。

説明:筆者に反抗的な様子の子犬を見て筆者は「武器」になるものを部屋の中に探す。

I noticed the chair. "That's funny," I thought. Chairs usually have four legs, don't they? This one only had two. I know, because I counted them twice. Now I know my wife has strange taste in furniture, but two-legged chairs are somewhat impractical, aren't they?
椅子を見つけたが椅子の脚が二本しかなかった。I counted them twice. とは、全く惚けた味を出している。somewhat impracticalなどはアンダーステートメントで笑いを誘う例だ。

説明:筆者は椅子の脚は子犬に「食べられた」のではないかと考える。椅子の脚を食べてしまう犬なら人間も食べかねない。そこで筆者は妻を捜す。

Where was my wife? I called her, but there was no answer. Another fearful thought entered my mind. What if she had been eaten by the dog? I'd have to make my own dinner, do my own laundry....
「妻が犬に食べられてしまったのならどうしよう」と言いつつ、自分の夕食や洗濯物のことを心配する。当然これも自分と妻の冷めた仲を皮肉った冗談である。ついでに言えば、人に読んで貰う目的の文章で「自分と妻の不仲を皮肉る」場合、実際にはそのような関係ではないと考えるのが正しいのだろう。なるほどコミュニケーションとは複雑だ。

・・・と、この調子で文章は続いていく。


実は、全くの偶然なのだが、昨年の中嶋洋一先生による関西大学のワークショップでもこの素材が使われた。見た瞬間に思わずあっと声を上げそうになった。そして予想通り、この素材を使って、どのような「考えさせる」質問ができるだろうかという課題が与えられたのだ。自分が勉強会でやろうとしていたことと全く同じだったのである

http://blog.goo.ne.jp/zenconundrum/e/d3efaef2c18a8ae77ba87e5a4a15892f

その場では文章がカットされていて分かりにくかったためか、参加者にこの文章の「可笑しさ」が十分に伝わっていなかったのが残念だった。「話の続きを考えさせる」といったアイディアが周りから聞こえたが、その定番の手法ではこの素材の良さが引き出せそうにない。これを使うなら、「どこが」、「なぜおかしいのか」をリストアップしてランク付けさせ、グループワークで人と比べてみるのがよいと思う。


さて、話は件の問題集に戻るが、上記のような、私の「お気に入り」の素材が入っている一方で、これはどうだろうかというものも散見される。たとえば一番最初の長文素材の冒頭部をあげてみる。

I hate the telephone. I rarely use it. Japanese people are always making telephone calls, and would never dream of not answering the telephone when it rings.

こんな失礼なことを言う人間もどうかと思うが、それを素材として採用した大学、出版社に違和感を感じる者はいなかったのだろうか。

また、以下のような文で始まる短文和訳課題もある。

Needless to say, it is impossible to predict with any precision the degree of success that we will have in dealing with the above challenges in the near future.

"above challenges"のことについて一切触れずに、ここから読めという課題である。「ことば」を学ぶための教材を作りながら、「ことば」に対する思いやりが全く感じられない。こんなことをすると、学習者は、重要なのは「訳すこと」であり、「メッセージ」など二の次だと思うようになるだろう。

というわけで、完全に納得できる問題集など、そう容易く見つかるものではないのである。


にほんブログ村 教育ブログ 英語科教育へ


和文英訳課題で誤答分析

2009-04-15 20:41:19 | 授業
英作文の授業手順を何とか改善しようとして、予め生徒の作文を集め、誤答分析を試みている。ものすごく大変な作業だが、生徒の間違えるツボが見えて、こちらの勉強として非常に有益であることが分かった。

例えば「何よりもはじめに」をat firstと書いてしまう間違いはある程度予想ができるが、中には意外にも思える間違いを多く見かけることもある。そのうちのいくつかを挙げてみたい。

「自動車は便利であると同時に危険でもある」
便利のconvenientがconvinientになる間違い。また、dangerousの代わりにdangerを書いてしまう間違い。

「運転者各々が・・・」
each of drivers とtheを抜かして書いてしまう間違い。

「注意しなさい」
Be carefull のようにlを重ねてしまう間違い。

CarefullはレストランのJoyfullの影響だろうかなどと思ってしまった。このレストランの出始めの頃は単なる綴り間違いだと思っていた人も結構いたようだ。

極めつけは「自動車」をBikesなどとする間違い。おそらく生徒にとっては、車を運転することは自分の日常生活とかけ離れていて、自分の生活の中で比重の重い自転車とつい読み違えてしまうのだろうと思う。

以前であれば、「つまらない間違い」で一蹴していたような誤りが、多くの生徒に共通してみられると、案外重要な指導のポイントであるという認識が深くできるのである。


にほんブログ村 教育ブログ 英語科教育へ



新年度始まる

2009-04-08 07:00:21 | その他
あっという間に春休みが終わって新年度である。もちろん、春休みとは言ってもこちらは入試状況のまとめ作業で通常以上に忙しい時期だが。

今年度は誤用分析を中心にしてライティングの指導を見直すことと、科学英語の指導を一から構築するのが教科指導上の大きな課題。当然、受験指導もしっかりやります。

しかしながら、英語に割けるエネルギーを年々減らさざるを得ないのが大きな不安の種だ。今の時点ですでに約1ヶ月穴を開けることが決まっているし、その他の雑務がいつ舞い込んでくるか分からない。

県による秋の研修に中嶋洋一先生が来られたり、JALTの例会に面白そうなテーマが並んでいたりするのだが、さてどのくらい参加できるのだろうか。


にほんブログ村 教育ブログ 英語科教育へ