「志」の英語教育

英語教育実践について日々の雑感を語ります。

批判的思考法

2010-01-31 16:23:15 | 研修
昨日はとある勉強会に参加。今回は発表などはなく、聞き役のみ。2時間という時間が数本の実践報告であっという間に過ぎた。

報告の中で面白いと感じたのは、マザーテレサを扱った教材に関する、中学のあるベテランの先生による発表。マザーテレサを「凄い人」として伝えるだけでよいのかという趣旨。

いうまでもなくマザーテレサは偉人中の偉人であり、教科書でもそのようなものとして描かれている。ところが実際は、「聖人」扱いされるあらゆる偉人と同じく彼女にも批判はあるのだ。

「彼女には清貧のイメージに全くそぐわない資産があった」、「カトリックの教えに忠実に従うことが本当に人道的に正しかったか」など。

私は実像のマザーテレサに迫ることには大して興味がないのだが、この実践自体には大きな可能性を感じた。

最近はやりの指導では中心的な情報を的確につかむことや、誤解を生まない分かりやすい文をすっきりと書くことなどが強調される。その一方で、文学において重要なツイストや重層性は蔑ろにされることが多い。

しかしながら、そのような指導によってもたらされる「脆い」言語力は結局のところ実践的には役に立ちそうにないし、なんといっても学習者の知的要求に応えられるものにはなり得ない。深みがないのだから。

マザーテレサをその対象にすることの是非はさておき、一つのことに対し複眼的な視点を与えることは有益であるはずだ。いろいろな見方に触れることにより、自己の壁を意識できるようになる。結果、思考は深まり論理性に厚みが出てくるだろう。

いわゆるクリティカルシンキングの狙いはそこだ。自分の中でもこれを指導に活かせないかかなり前からあれこれ考えていたのだ。

情報を的確に把握するということと、それを丸ごと信じることは全くの別物である。本物のコミュニケーション能力は、得た情報を分析・評価したうえで自分なりの解釈を加えるという過程を含んでいるのではないだろうか。

(そういえば、今年のセンター第5問も1つの事象を別の立場から見たものでした。)

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告別

2010-01-17 11:40:18 | テスト
センターの感想、今回はリスニング。全体的には昨年よりはやや易しいが、それでも難しいと言っていいでしょう。

第1問は、かなり工夫された問題で感心する。問1、問3、問6は気合いを感じます。問5は「12人乗りのバン」に違和感を感じたら不安になると思う。

第2問も上手い。ここでかなり差がつくことだろう。第2問は「選択肢の速読・先読みが大切」とよくいうのだが、それだけでは対処できそうにない。特に問11と問12。

第3問Aは表現の言い換えがポイント。「テディーベア」が「ぬいぐるみ」、「有毒な素材を含む」が「危険」になっている。

第3問Bの表はちょっと見ただけでは何のことか分かり辛い。音声を聞くまでイメージが湧きづらいのはリスニングの問題としては好ましいことだと思う。データが嘘っぽいのが玉に瑕。本物だったらちょっとびっくりだ。

第4問Aは問20と問21の難易度が大きく違う。問21に自信を持って答えられる人は力があるでしょうね。愉快な話ですけど。

第4問Bは今回一番論議を呼びそうな問題。クラシック音楽に造詣の深い受験生が著しく有利ではないの?

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センターできたかな

2010-01-17 06:24:26 | テスト
センター試験一日目が終了。とりあえず筆記に目を通す。全体的にこぢんまりした印象。昨年と比べると明らかに易化。平均点は125~130?

第1問はとうとう普通の発音とアクセント問題だけに戻ってしまった。heartやwoolなどが出たのも全く予想通り。開き直りかな。

四択の小問はどうなんだろう。簡単だという見方が多いようだが、意外とここで半パニックになった受験生もいるのでは。少なくとも「こてこて」の文法問題はほとんどなし。中にはセンター試験らしからぬ味の文も。

If I hadn't broken up with Hannah last month, I would have been going out with her for two years.

会話文。太田さんねえ。ここだけの話ねえ。内輪受けとかじゃないよね。

並べ替え作文は平易だと思うが、
"Could you tell me what made you so upset with my email?"
これは問題の解決というよりは火に油、あるいは宣戦布告でしょうな。
で、1問だけ前振りがないのは不細工というか筋が通らないと感じます。

語意推測の問題はmakeshift とpenchant。中には推測する必要のなかった人もいることでしょう。

討論会は最初の問題が要約と言うより結束性に関わるものと捉えた方がよさそう。私的には「あり」。

グラフの問題にも今年独特の味が感じられる。項目を選ぶ問題も消去法だし。何となく全体的に若者に媚びたような内容が多いと感じるのは私だけ?

時刻表も発音と同じく予想的中。まあ、問題自体が分かるわけではないから。

第5問は今までの形式に無理があったと思うので、問題の切り替えは正しい判断でしょう。ただし、危うく交通事故というトピックには疑問が残ります。

第6問は本文が小難しいわりに設問は簡単なので、時間配分がうまくいった人は点が取れたのではないでしょうか。

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センター直前

2010-01-15 18:07:03 | テスト
今年もセンター試験前日となった。昨年がここ数年では難問だったためか、これまでの模試や演習問題もやや難しめだったような気がする。こんな年はなかなか自信を持って受けられないから不安な受験生は多いかもしれない。

今更ではあるが、今年センター対策としてアドバイスしてきたことをいくつか箇条書きにしてみる。基本的に小賢しいテクニックばかりですが。


筆記

第1問 発音は [or、b(黙字)、g] [(o ou)、ch、ea] [(ss c)、oa、(gh ph)]が過去に出ているので、au、oo、ear、ow、u、th、xあたりが出るかも。

第2問 四択の小問は文法問題ではない。語法や語彙、イディオムが大切。英検2級の小問で対策をするのが有効では? 

第3問 Bの議論は要約の問題。言い換え表現(特に、上位概念・下位概念)に注意。

第3問 Cは穴埋め問題、苦手な人は時間をかけすぎずに。後回しにするのも手。

第4問 Aの問題は先に図表をしっかり読むこと。分かりやすいからわざわざ図表にするのです。そこから取り組むほうが効率的なはず。また、ここの問題に特有の語彙に注意。(soar、decline、table、figure …など)

第4問 Bの広告などの問題は必要な情報を特定するいわゆるスキャニング力が必要。ここも時間をかけすぎないこと。計算は2回が基本です。(提示された数字から引き算をして2倍するなど)今年は時刻表なんかあるのでは?

第5問 絵と説明をマッチさせる問題。Aは比較的難しいかも。Bは前半だけ読んで早とちりしないこと。Cはパッセージの後半で分かる場合が多い。

第6問 時間を十分かけて満点を狙いましょう。設問の順はパラグラフの順と同じ。段落まとめは考えすぎないこと。


リスニング

終わった問題のことは振り返らずに今の問題に集中。

設問、選択肢はなるべく先読み。

表現の言い換えと情報の訂正に注意。

放送の中で使われた語がキーワードになる選択肢は落とし穴の可能性あり。

リスニング中は聴くことに集中。同時に読んだり計算したりしない。


その他

傾向の変化は必ずありますが、新傾向の問題は簡単です。慌てずに対処すること。

受験生の皆さん頑張ってくださいね。(^_^)v


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沈黙の間に

2010-01-14 13:02:39 | その他
あったことなどを徒然に。

年末に10万キロ近く走った車を車検に出そうとしたら、修理・部品交換の見積もりで40万円オーバーになることが判明。急遽、予定を変更して軽自動車を購入。痛い出費だが燃費は倍に。

恒例の海外研修者発表会に参加。教員の英語力は本当に上がっていると思う。流暢さよりも、いかに聴衆を惹きつけるかというコミュニケーションの本質的なところにしか目がいかなくなった。あえてパワーポイントを使わずに発表する人が増えてくるような気がする。

県の東端に居られる大先輩が2月に授業公開をされるとのこと。古い資料も見せて頂けるそうで楽しみだ。

正月明けに県の企画で、県内公立校の2年生進学希望者を対象に、リスニングに関する講座を持つ。昨年のセンターの第4問Bをいきなり解いてもらった後に、それを使って各種音読三昧。音読を通して聴き取れるようになるという感覚を体験してもらうつもりだったのだが、果たして目論見通りに感じてくれただろうか。

アルクさんのiPhoneアプリ「ボキャブラキング」なるものに結構嵌っている。SVL12000を使った単語ゲームで、単語力増強というよりも完全に遊びの感覚。下のレベルから一つずつ1000点クリアで潰している。単語力より面白いかも。

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立ち位置

2010-01-08 18:16:38 | その他
当たり前の話だが、戦前の教育と戦後の教育は全くの別物であり、その違いの元になっているのは政治である。そして、戦前戦後ほどのスケールではなくとも、政治が現場の教育を左右することは今でも実際に大いにあるのだ。

それは、例えば歴史教育のように非常に直接的なケースもあるし、そこまであからさまでない場合もある。やっかいなのは、政治的圧力が見えにくいほど、深刻な問題によりつながりがちだということだ。

ここのブログでは、なるべく政治的な話は抑えて、純粋に言語を教える・学ぶという姿勢を保ちたいと考えているが(もちろん100%は不可能)現実の世界ではそうはいかない。

実は、昨年末から政治的圧力に関わるある種の毒気にあてられてどうも気分が萎えがちだ。

もちろん、ここでストレートに思いをぶちまけることはできないし、するつもりもないのだけど。

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