「志」の英語教育

英語教育実践について日々の雑感を語ります。

共通テスト、どうでしょう。

2021-01-20 22:04:45 | テスト
遅ればせながら、共通テストの感想などを。リーディングです。

個人的には、全体を読解中心でまとめたのは良いと思います。
ただ、受験者は、読むことに慣れてないと読み疲れしたはずです。

テスティングの観点で言えば、英語力の試験としての妥当性について、
危険な感触を受けました。

英語力よりも論理性や情報処理能力を試される試験のように感じました。
今後、予備校等受験産業が攻略法を広めれば、純粋な英語力測定との乖離は
増していくでしょうから、妥当性の低下が危惧されます。

細かいところでは、fact と opinion の問題に関して疑義があります。
多くの場合、主観と客観は二項対立ではなく、
その狭間にあると言わざるを得ない場合が多くあります。

強いや大きいだけでなく、例えば白いですら主観を多く含みます。

さらに、不利な情報の開示を伏せた統計は、
客観の皮を被った扇動でしかないことは言うまでもありません。

外国語でのコミュニケーションでは、その負荷のために、
そういったフィルターが働きにくいのですが、
その力を含めて測定しようとすると、
本来計りたかった英語力の妥当性が担保できなくなることが
ジレンマですね。




Twist in the Test

2011-01-25 17:46:46 | テスト
毎年、この時期になると入試問題を生徒と一緒に解いてみることになる。中にはつまらないものもあるものの、ちょっとした楽しい経験ができることもある。

見ていたのは昨年のK大学の問題。大問が4問の構成で、1問目は英文学における子どもの扱い、2問目は睡眠と記憶について、3問目はちょっと妙な物語。これに加えて最後は和文英訳である。

http://nyushi.yomiuri.co.jp/10/sokuho/kobe/zenki/eigo/images/mon.pdf

「おや」と思ったのは3問目。女性と女の子が食料品店で財布を見つけ、それを持ち主に届けに行く話である。二人は50ドル程度の「お礼」を期待するのだが、持ち主は渡さない。

ここだけ読んだのではよく分からないことが多すぎるので、オリジナルはないかとネットを捜したらありました。

http://www.fivechapters.com/2009/soleil/

内容的にそのままでは大学入試には使えないなとは思ったが、なかなか楽しめる。なんと言っても、女性の最後のセリフが良いのである。

"O, grow up."

読んだときには思いつかなかったのだが、授業中に第1問と呼応していることに気がついた。なるほど、そういうわけで設問が本文の内容に届いていないこの問題を採用したのかと。

まあ、高校生でこの仕掛けが見抜けるまで探求しようとする人は少ないでしょうけど。


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2011 年センター試験

2011-01-16 21:40:18 | テスト
センター試験終了。大雪の2日間、受験生の皆さん、ご苦労様。なんでも地元は観測史上最低気温を記録したんだとか。近隣のJR支線はどこも平常通り動いて有り難いことでした。

さて、今年の問題は、大きな傾向の変化もなくオーソドックスと言えそう。全体的には、色々な苦慮の末に落としどころに落とし込んだら、美味しいところまで落としてしまったのかなという感じ。サンマは目黒に限るのです。

平均点はややアップと思われますがどうでしょうか。明日の自己採点が楽しみです。

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告別

2010-01-17 11:40:18 | テスト
センターの感想、今回はリスニング。全体的には昨年よりはやや易しいが、それでも難しいと言っていいでしょう。

第1問は、かなり工夫された問題で感心する。問1、問3、問6は気合いを感じます。問5は「12人乗りのバン」に違和感を感じたら不安になると思う。

第2問も上手い。ここでかなり差がつくことだろう。第2問は「選択肢の速読・先読みが大切」とよくいうのだが、それだけでは対処できそうにない。特に問11と問12。

第3問Aは表現の言い換えがポイント。「テディーベア」が「ぬいぐるみ」、「有毒な素材を含む」が「危険」になっている。

第3問Bの表はちょっと見ただけでは何のことか分かり辛い。音声を聞くまでイメージが湧きづらいのはリスニングの問題としては好ましいことだと思う。データが嘘っぽいのが玉に瑕。本物だったらちょっとびっくりだ。

第4問Aは問20と問21の難易度が大きく違う。問21に自信を持って答えられる人は力があるでしょうね。愉快な話ですけど。

第4問Bは今回一番論議を呼びそうな問題。クラシック音楽に造詣の深い受験生が著しく有利ではないの?

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センターできたかな

2010-01-17 06:24:26 | テスト
センター試験一日目が終了。とりあえず筆記に目を通す。全体的にこぢんまりした印象。昨年と比べると明らかに易化。平均点は125~130?

第1問はとうとう普通の発音とアクセント問題だけに戻ってしまった。heartやwoolなどが出たのも全く予想通り。開き直りかな。

四択の小問はどうなんだろう。簡単だという見方が多いようだが、意外とここで半パニックになった受験生もいるのでは。少なくとも「こてこて」の文法問題はほとんどなし。中にはセンター試験らしからぬ味の文も。

If I hadn't broken up with Hannah last month, I would have been going out with her for two years.

会話文。太田さんねえ。ここだけの話ねえ。内輪受けとかじゃないよね。

並べ替え作文は平易だと思うが、
"Could you tell me what made you so upset with my email?"
これは問題の解決というよりは火に油、あるいは宣戦布告でしょうな。
で、1問だけ前振りがないのは不細工というか筋が通らないと感じます。

語意推測の問題はmakeshift とpenchant。中には推測する必要のなかった人もいることでしょう。

討論会は最初の問題が要約と言うより結束性に関わるものと捉えた方がよさそう。私的には「あり」。

グラフの問題にも今年独特の味が感じられる。項目を選ぶ問題も消去法だし。何となく全体的に若者に媚びたような内容が多いと感じるのは私だけ?

時刻表も発音と同じく予想的中。まあ、問題自体が分かるわけではないから。

第5問は今までの形式に無理があったと思うので、問題の切り替えは正しい判断でしょう。ただし、危うく交通事故というトピックには疑問が残ります。

第6問は本文が小難しいわりに設問は簡単なので、時間配分がうまくいった人は点が取れたのではないでしょうか。

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センター直前

2010-01-15 18:07:03 | テスト
今年もセンター試験前日となった。昨年がここ数年では難問だったためか、これまでの模試や演習問題もやや難しめだったような気がする。こんな年はなかなか自信を持って受けられないから不安な受験生は多いかもしれない。

今更ではあるが、今年センター対策としてアドバイスしてきたことをいくつか箇条書きにしてみる。基本的に小賢しいテクニックばかりですが。


筆記

第1問 発音は [or、b(黙字)、g] [(o ou)、ch、ea] [(ss c)、oa、(gh ph)]が過去に出ているので、au、oo、ear、ow、u、th、xあたりが出るかも。

第2問 四択の小問は文法問題ではない。語法や語彙、イディオムが大切。英検2級の小問で対策をするのが有効では? 

第3問 Bの議論は要約の問題。言い換え表現(特に、上位概念・下位概念)に注意。

第3問 Cは穴埋め問題、苦手な人は時間をかけすぎずに。後回しにするのも手。

第4問 Aの問題は先に図表をしっかり読むこと。分かりやすいからわざわざ図表にするのです。そこから取り組むほうが効率的なはず。また、ここの問題に特有の語彙に注意。(soar、decline、table、figure …など)

第4問 Bの広告などの問題は必要な情報を特定するいわゆるスキャニング力が必要。ここも時間をかけすぎないこと。計算は2回が基本です。(提示された数字から引き算をして2倍するなど)今年は時刻表なんかあるのでは?

第5問 絵と説明をマッチさせる問題。Aは比較的難しいかも。Bは前半だけ読んで早とちりしないこと。Cはパッセージの後半で分かる場合が多い。

第6問 時間を十分かけて満点を狙いましょう。設問の順はパラグラフの順と同じ。段落まとめは考えすぎないこと。


リスニング

終わった問題のことは振り返らずに今の問題に集中。

設問、選択肢はなるべく先読み。

表現の言い換えと情報の訂正に注意。

放送の中で使われた語がキーワードになる選択肢は落とし穴の可能性あり。

リスニング中は聴くことに集中。同時に読んだり計算したりしない。


その他

傾向の変化は必ずありますが、新傾向の問題は簡単です。慌てずに対処すること。

受験生の皆さん頑張ってくださいね。(^_^)v


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定期考査の試験範囲

2009-11-03 15:44:48 | テスト
新任のころ、ある先輩の同僚は、生徒に試験範囲を聞かれたら「生まれたときから最後の授業で扱った内容までの全範囲」と答えていた。もちろん、半分は冗談でそれなりの情報はきちんと与えていたものの、この考え方には大賛成だ。

例えば、授業で準動詞を扱ったとすれば、準動詞の使い方がどのくらい定着したかを測るのが本来の定期考査の姿であろう。そのためには、それまでに経験していない文の中で当該の文法知識を使わせるのがよいはずだ。そうすれば、当然のことながら、それ以前に学んだ知識も必要になるだろう。

ところが、実際には授業で説明に用いられた英文や、その定着のための問題で既知となった英文がそっくりそのまま定期テストに使われるケースが多い。その結果、根本的な仕組みの理解でなく表面的な暗記力がテストのできを左右するのだ。

リーディングに関する科目もしかりである。既習の英文を使った問題だけなら教材となる英文の音読や筆写(さらには暗写)を通してをつめておくだけで対処できる。しかしそれでは本当の意味での「読む力」は測れない。リーディングの目的が読む力を育むことであれば、そのような定期考査は妥当ではないはずだ。

定期考査の成績と実力テストの成績が相関関係を示していないというケースは意外とよくある。そんなときに、私たちは定期考査を頑張り続ければ徐々に実力テストの成績が向上し相関関係が高まってくるはずだという説明をする。

しかしながら、自分たちの作る定期テストがどんな力を測っているかを誠実に検証することがなければ、定期考査ではよい点を取り続けるものの、実力テストは相変わらず振るわないという生徒がでてくるのも当然だ。一番の被害を受けているのは、実はそのような生徒なのではないだろうか。

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発音問題とフォニックス(筆記による発音問題は受験生の発音改善につながるか)

2009-08-13 17:22:58 | テスト
ご存知の通り、「語」の発音問題は平成19年に久々に復活し今春まで続いている。その年の問題の中でこの(程度の)問題の正解率が1割に満たなかったのである。

1) abroad 2) approach 3) coast 4) throat

oa の発音(とその例外)は発音とつづりの規則の中でも最も重要で覚えやすいものの一つだ。今年の受験生であればおそらく半分以上は正解できたはずだ。平成19年にこの問題の正解率が低かったのは、受験生が全く発音問題の対策をしていなかったからだ。

これ以降、発音問題は「出る」のが前提になり、全国の高校では再びつづりと発音の関係についてしっかり対策がされるようになり、発音(問題)に対する受験生の意識も上がったのだ。

めでたし、めでたし。  ・・・という結論で本当によいのだろうかという話である。

ここで見落とされがちなのは、「特別な対策を施さなければ、abroadのoaと他のoaの音の違いに日本人学習者が気づくことはない」という事実だ。

受験生の中で、「正しく発音された」abroadを一度も聞いたことがない者はほとんどいないだろう。しかも、それを聞いた際にabroadはabroadとして認識されたはずなのである。それでもなお、abroadのoaが長母音であることに「気づくことができない」のだ。

つまり、abroadとcoastのoaの発音が違うのだという知識があることと、それぞれの語の正しい発音が分かること(聞き分けられること、さらに自分で正しく発音し分けること)とは全く別なのである。

この種の問題で行っているのは、はっきりと明示的に示されない限り区別が容易でない「音の差」を、「知識」によって擬似的に区別させているにすぎない。それが今のペーパーによる発音問題の正体であり、そこから音声指導に関するいくつかの重要なことが透けて見えてくるような気がするのである。

まずはもちろん、つづりと発音の規則の知識について指導するだけでは直接的に発音の改善につながるとは考えにくいこと。

それから、ある言語を母語とする話者が、ある外国語で使われる音を判別する際に、その難易度は「音」によって差があり一様ではないこと。(abroadのような例は実はかなり難しいのではないか? そもそも、abroadやbroadのoaのような例外をきちんと発音し分けることがコミュニケーション力の向上にどれだけ寄与するのか)

そして、単純につづりと音の規則を演繹的に教えることには問題がありそうなこと。(例えば、今回の問題を使うなら、abroad、approach、coast、throatを含む自然な文を聞かせて、その中でoaの発音がどう違うかに注意を向けさせるような指導でなければ、実用的な音声指導にはならないのではないか)

約10年前にテキサスで、韓国人の大学院生による研究発表を聞いたことがある。非常に流暢な英語であったが、observeの発音が明らかにobjerveになっていた。しかし、彼女の発表を理解するのに全く不都合はなかったし、ましてやその事実によって発表の内容が低く評価されてしまうことはありそうにない。

それでも毒まんじゅうを食わされるようなはめになってしまうなら、発音以前の問題を疑ってみる方がコミュニケーション能力のあり方からすれば正しいのではないだろうか。


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It's not that simple.

2009-06-24 10:37:12 | テスト
もう数年前の話になるが、定期考査問題の検討会で以下のような問題が提示された。読解とはなにかという観点から、非常に面白いと思った記憶があるので紹介したい。

U.S. English insists that a national English-language law would apply only to government business, and that in unofficial, private, or religious contexts people could use any language they liked. Yet it was U.S. English that tried to take an American phone company to court for inserting Spanish advertisements in the Los Angeles Yellow Pages. That would hardly seem to be government business.

Question: Why did the U.S.English try to take an American phone company to court?

U.S.Englishとはアメリカで英語を公用語にしようとする圧力団体である。ますます数を増やすヒスパニック系移民に押され、スペイン語が米国で英語と同等(以上)の市民権を得ることを防ごうとしているのである。

同時に提示された模範解答例はこうである。
Because the American phone company inserted Spanish advertisements in the Los Angeles Yellow Pages.

確かに、for以下が「原因・理由」を表すという文法分析的解釈からは正しいのかもしれないが、どうもそれだけでは済まされないようだ。

英語の公用語としての地位を確立したいU.S.Englishは、英語公用語化論を広めるというプラス方向の努力をする一方で、他言語の抑圧というマイナスの圧力もかけているということ。

しかし、正面から他言語に対する攻撃をしたのでは、自分たちへの支持が得にくくなる。そこで、表向きには、公用語として英語を用いることを要求する場面は行政的な活動に限ると表明している。ところが、実態は私企業に対してもスペイン語の広告を加えたことを咎めているということ。

このような説明・流れの後で、「U.S.Englishはなぜある電話会社を訴えたのか」という質問に対する答えが、「その会社がスペイン語の広告を電話帳に加えたから」で十分と言えるだろうか。

恐らく望ましい筋の答えは以下のようになるのではないか。
Because U.S.English is hypocritical, and it actually wants English to be used not only in government business but in other contexts as well.

専ら構造分析によって英文を理解しようとする手法の限界をはっきりと示す例であるとは言えないだろうか。


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後期試験に悪問苦闘

2009-03-05 22:51:18 | テスト
卒業式も終わり今日から本格的に前期試験の合格発表。結果は当然悲喜こもごもであるが、運がなかった人たちも後期に向けて努力を続けて欲しい。こちらの方も今週いっぱいは後期の指導で添削三昧が続きそう。

さて、そんな中で地元大学医学部の後期試験対策の指導をしているが、問題のクオリティの低さに困っている。問題文はともかく、設問の詰めが甘いので何を求められているのか悩んでしまう。さらに、この問題を出すなら聞き所はここじゃないでしょうという突っ込みを入れたくなるケースもちらほら。

極めつけは(注)の入れ方。それなりのお考えがあってのことだとは思うが、英語の試験としてはまったく不的確。たとえば・・・、

homeopathy :ホメオパシー、同種療法

いったいこの注に、注としてどのような価値があるのか? カタカナや漢字に置き換えたところで、ほとんどの受験生には気休めにもならない。ひょっとして医学部を受けようとする人間ならばこの程度の専門用語は知っておけと言うことだろうか。

(ちなみに、ホメオパシーについての詳しい情報はこちら

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%A1%E3%82%AA%E3%83%91%E3%82%B7%E3%83%BC )

さらに、

resveratrol : 5-[(1E)-2-(4-hydroxyphenyl)ethenyl]-1,3-benzenediol. C14H12O3 (Figure 1). Phytoalexin, used by plants in a defensive response to attacks by fungi and insects, found in a variety of plants; active ingredient of Asian folk medicine "Kojo-Kon" which is the powdered root of the Japanese Knotweed. This compound is produced as stress metabolite in response to fungal infection or injury. This compound has anti-platelet aggregating activity.

metabolite : a substance formed in or necessary for metabolism, the chemical activities in a living thing by which it gains energy.

platelet : small flat thin circular objects in blood stream used for formation of a blood clot.

aggregate : to combine into one mass.

これ、本当に注と言えるのか。ちなみにmetabolite以下の3つの注は、注中の語の注である。

英語教育の専門家が作ったものではないからという言い訳は通用しない。もう少し多くの目で見て問題を検討し適切な出題をして欲しい。これは、もはや「不細工」ですむものではない。


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