センターが終わって、とりあえず筆記の方を拝ませていただいた。各予備校は「例年並み」か「やや難」という見方をしているがどうだろうか。3年を担当する年は、自分が教える生徒の顔が浮かんで、ついつい平均点の予想が低めになってしまうのだが、それを差し引いても、かなり厳しめの試験だったのではと感じている。
センター試験の問題作成者に知り合いはいない「はず」なので、言いたいことを言わせてもらいます。人間関係が壊れる心配はありませんので。
まず、第1問。ここの出題方法を毎年ころころ変えるくらいなら、リスニングの問題をもっと充実させようという発想にはならないのか。発音に関する明示的な知識を学ぶことにここまでの執着を見せる理由はなんなのでしょう?
加えて、問題に用いた語は本当に発音問題の中で聞くのに適切なものか? fragileとかsubtitleとか何%の受験生がその意味を知っているのか興味があるところ。また、absorb やcomfortなどorの問題はアクセントを揃えないと不細工なのでは?
続いて第2問。ごくごく基本的な語のちょっと変わった用法を聞くという手法は良くあるのだろうが、It runs in the family. はセンターの問題としてどうなのか? 弁別力は大丈夫?
第2問Bもリスニング導入後に消えるのではと噂された問題であるが、今年も健在であった。よく、ここの問題は単に定型会話表現の知識ではなく、ディスコース力がカギになると言われる。今年は I'll tell you what. や I couldn't agree more. のような定型表現の知識がポイントになっておりちょっと違う印象。いったい何がやりたいのか・・・。
第3問Cは英文のリードをしっかり読ませるための仕掛けが素敵だ。特に3番は、リードを読まずにI could have joined the party I had とやってしまった受験生が結構いることだろう。でも・・・これだけ語数を増やして、作文代わりの問題にまで読解力を要求したものでしょうかね。
第3問Aは例によって語意想像の問題で、a can of wormsとsporadicが出題された。何となく全体の語彙レベルが上がったので、この程度の言葉なら知っているという受験生もそこそこいたものと想像する。おそらく、あまりにも難しすぎる語はやめておこうという判断になったのだろう。B、Cは比較的簡単だったので、ここを後回しにして時間が足りなくなった受験生が気の毒です。
第4問のA、問2のThere is no hope~だとかThere are almost no tree~ などは不細工な錯乱肢の典型。あり得ないから。その一方で、問3は「雨林の保護が開発よりも経済的に大きな利益につながる」という必ずしも一般的なスキーマ通りではない選択肢が正答になっていて、ちぐはぐな印象。
Bの問診票などは、まさに試験のために作ったという風情。アメリカにいる日本人が病院へ行かなければならない状況を想像してみたらいい。発症から6日たった後、8度5分の熱と頭痛、咳くらいの症状でわざわざ外国で病院へ行きますか? 8度5分の熱がそんなに重要な情報なの? 建築家のパラフレーズ力と測定したいはずのスキャニング能力との関係は?
第5問はかなり難化した印象。ここをドル箱としてあてにしていた受験生はボロボロになったかも。そもそも、最近のセンターの傾向は「易しめの問題を大量に」という方向性だったはず。しかし、今回の5のA、Cを見ると、記述の中の細かな誤りを探し出し排除させるという趣旨の問題であるように感じる。スピードと大枠の理解が大切だというのがセンター試験からのメッセージではなかったのか。
第6問は、昨年の問題よりは読みやすかった。でも、それはおそらく私が英語教育に対して普通の人以上の興味があるからだろう。問題から透けて見えるのは、発信のためには英語は英語を通して身につけるべきだというお上からのメッセージである。
なんだか新学習指導要領擁護論を聞いているような印象だったが、こんな場面でそんなことをステートメントとして流すのも、やっぱりせこいんじゃないでしょうかね?