沖縄タイムズより転載
社説[集団的自衛権]岐路に立つ「平和の党」
「限定的」が付こうが付くまいが、集団的自衛権の行使を容認することは、国是の「専守防衛」の一線を越える安全保障政策の大転換につながる。公明党にとっても、結党時からの精神を揺るがす危機である。自らの存在意義を否定されてもなお連立政権にとどまるのか、決然と連立を解消する道を選ぶのか、重大な岐路に立たされている。
自民党の高村正彦副総裁は13日に開かれた与党協議会で、自衛権発動を認める新たな3要件の「たたき台」を公明党に提示した。
これまでの政府見解は、自衛権発動の3要件として(1)わが国への急迫不正の侵害がある(2)排除するため他の手段がない(3)必要最小限の実力行使にとどまる-ことをすべて満たしたときに個別的自衛権の発動を認めてきた。
高村氏が提示したたたき台は(1)を「わが国または他国への武力攻撃が発生し、わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される恐れがある」を新たな要件とした。「他国への武力攻撃」が集団的自衛権の行使容認に当たり、憲法解釈に向けた閣議決定の「核心部分」である。「わが国の存立が脅かされ…」は1972年の政府見解で、結論は「集団的自衛権の行使は、憲法上許されない」だった。同じ見解から正反対の結論を導き出すのは理解できない。憲法改正手続きの要件を緩めようとした「96条改憲」は「裏口入学」といわれた。今回のたたき台はこれよりもっとひどいというほかない。
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公明党は1964年に結党。当初は日米安保条約、自衛隊の存在も認めていなかったが、81年の党大会で安保条約、自衛隊容認に転じた。
90年代は安全保障政策で後退を続け、99年に自民党と連立政権を組んでからはその傾向が鮮明になった。
公明党は綱領で「生命・生活・生存」を最大限に尊重する「人間主義」を掲げ、いかなる時代、いかなる社会にあっても、常に民衆の側に立つことをうたっている。
最近の世論調査では、集団的自衛権の行使容認は反対が賛成を上回り、容認する人でも6割以上が期限をつけずに慎重な議論を求めている。安倍政権の進め方は世論との乖離(かいり)が大きいのである。
公明党は「連立離脱は考えていない」と明言する。政府・自民党に足元をみすかされているのだ。与党協議の論議も生煮えのまま、結論を迫られる。これで民衆の側に立っているといえるのだろうか。
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自公路線は全国に先駆けて98年の県知事選で始まった。公明党県本部は昨年12月、仲井真弘多知事に、米軍普天間飛行場の県外移設を求めた。沖縄の目指すべき将来像「沖縄21世紀ビジョン」に基づき、「軍事拠点から平和交流拠点へ」と提言し、存在感を示したことは記憶に新しい。
くしくも公明党は11月に結党50周年の節目を迎える。連立政権から離れられないことを揶揄(やゆ)して「げたの雪」と呼ばれることがある。集団的自衛権を認めるなら、「平和」を党是とする党への支持・信頼を根本から失いかねない。