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don quixote 2019




昨日は Don Quixote 公演が英国ロイヤル・バレエで始まり、昼間のリハーサルと夜のオープニング・ナイトの両方を見た。

今シーズンの『ドン・キホーテ』はこの後4回観覧する予定! 


ミンクスの優れた音楽と、基本のプティパの振り付け、特に筋があるわけでも、有意なわけでもないドタバタ劇だが、登場人物のポリフォニーがとにかく最高に楽しい。

舞台装置に描かれたスペインの真っ青な空のように、「人生はこうでなけりゃあ」という一種の達観がすがすがしく、公演が終了後は超ハッピーになれること請け合いの作品である。


まずはオープニング・ナイト...

頭がおかしくなったかと思うほどすばらしかった!

客席の周りの知らない人と手に手を取り合って歓喜の言葉を交わし合いたくなるほど。

優れた才能というのは、それを持つ人のためではなく、一種公共の、人類への贈り物なのであるとつくづく思った。


ヒロインのキトリ役Marianela Nunezは登場するなり舞台を支配し、最後まで輝く笑顔と完璧な舞踊でひっぱっていく。
彼女のダンスはひとつひとつの動作の息が考えられないくらい長く、ごまかしや、微修正や、有耶無耶さがない。ダンス技術も最高なら、音楽性も、運動神経も空間認知能力も完全無欠。

相手役のバジリオ役はVadim Muntagirovで、彼はこれからもまだまだ伸びるのかもしれないが、確かに昨夜は身体能力もアーティストとしても最高値にあると思った。毎回が最高値か。すごい褒め言葉。
マリアネラと同じように繊細にして大胆、いわば少女漫画の王子様のような雰囲気で(どちらかというと「床屋」のバジリオには見えない。王子様だ)あの細い鞭のような強靭さはすばらしい。

2人の第3幕目の結婚式のパ・ド・ドゥはこれ以上のものは見たことがない、と断言できるくらい神々しかった。
会場はどよめき、最後は会場総立ち、拍手鳴り止まず。
バレエ・ファンで昨夜を見逃したとしたらそれはもう大損! 
オープニング・ナイトは批評家や大ファンが集まるので、いまひとつなときは結構しらっとしているが、昨夜のような完成度だともう盛り上がる盛り上がる。


有名マタドール役の平野亮一さんも超ウケまくり(前回演じたときも、批評家が「Yakuza」な雰囲気がすばらしい、と書いていた)、彼の舞台上の存在感といったら、ほんとうに視線を流しただけで女性ファンを失神させる有名マタドールそのものだった。

ドン・キホーテの夢に出てくるドリアドの女王役、金子扶生さんもすばらしかったです。彼女はプリンシパルに昇進すると思う!



昼間のリハーサル中(第2幕が始まってすぐ)に、なんとまたエマージェンシーが発生。

ロイヤル・オペラ・ハウス内から全員が避難させられ、建物の外で30分ほど待たされ、結局続演までに小一時間ほどかかったか。
会場係に聞いたら、小さなボヤが発生し(ハウス内にはキッチンが無数にあるそう。一般向けのレストランも少なくないし)、報知器が鳴ったものの、火が小さくてなかなか見つけられなかったとか...

外で待機しているときにたまたま数台の救急車がオペラハウス付近で停車したため、それが原因だと思わされた。もしかしたら警報が鳴ったために大事をとって来たのかもしれない。

結局、夜に今シーズンの初演を控えているため、リハーサルは時間切れで一番盛り上げる第3幕がキャンセルになり、まあ何事もなくてよかったが、カーテンコールもなく、消化不良で帰途についた人も多かろう。

そういうアンチ・クライマックスのせいもあり、盛り上がりも何も...

キトリ役のYasmine Naghdiの柔軟性が目を見張るほどすばらしく(あの足首の柔らかさ!)、美しく、手足が長く、バレエ的に眼福。
もっと舞台上の存在感が大きくなり、彼女の登場で舞台の色が一瞬にして変わる(特に優れたダンサーは全員そういう「華」を持っている)ようになるのを期待している。


(写真は全シーズンのマリアネラでthe guardianから拝借。Tristram Kenton)
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